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2012年5月13日 (日)

レイ・デイヴィス

 なぜか自分のCDラックにはレイ・デイヴィスのソロ・アルバムが1枚だけある。これは当時の雑誌のアルバム・レヴューを読んで、よさそうに書かれていたので購入したからだ。2006年に発表された「アザー・ピープルズ・ライヴズ」というタイトルのアルバムだった。

 アルバムの帯には“キンクスのレイ・デイヴィス、初のソロ・アルバム”とあったのだが、レイは、1998年に「ストーリーテラー」というアルバムを発表している。あれはソロ・アルバムではなかったのだろうか。それともセルフ・カヴァーでライヴ作品だったからソロ・アルバムとはカウントしなかったのだろうか。

 レイは、当時は(そしておそらく今も)ロンドンとアメリカのニューオーリンズに住んでいて、本人談では“マスウェル・ヒルを出てから自分の居場所にしっくり来たのは初めて”というまさに理想郷ともいえる場所で、制作されたアルバムでもあった。

 ニューオーリンズというからには、さぞかしジャズやブルーズの影響を受けているのではないかと思ったりしたのだが、一聴した限りは全くそんな事はなく、キンクスのときよりもしっかりとしたボーカル・スタイルを楽しむことができるし、一曲一曲がよく練られているようで、タイトな音作りになっている。Photo

 日本盤ボーナス・トラックを入れて全13曲、キンクスのようなトータル・アルバムではなくて独立した曲群で占められている。このアルバム制作時のレイは62歳。全然年齢を感じさせない声と巧みな曲作りは健在で、聞いていくとついつい引き込まれてしまう。

 特に2曲目の"After the Fall"や6曲目の"Run Away From Time"にはレイの迫力あるボーカルを味わうことができる。とても60を過ぎた人とは思えない力強さである。また聞きようによっては、ストーンズのキース・リチャーズのような声質をしている。素面のときのしっかりしたキースのようだ。
 また11曲目の"Stand Up Comic"は英米流のコメディアンになったかのように、早口でまくしたてていて、まるでラッパーのように歌っている。

「俺は本当にひどく落ち込んでいた
そして今回は以前より立ち上がるのが
難しかった
俺は天国や目の前に見える光景に
向って叫んだ“助けてくれ”
すると“いや無理だ”という返事が
返ってきた

落ち込みが終わったあとは
おまえは自分の道を歩むだろう
奴らはこの戦場のような場所では
片付けるべき難破船だ
奴らには償うべき時間が多い
だけど暗くなったら
ここから身を隠した方がいい

厳しい冬の間は
おまえは恐れを感じている
だけど霧が晴れたら
太陽は再び輝きだすだろう」
("After the Fall" 訳;プロフェッサー・ケイ)

 疾走感のあるノリノリのロックン・ロールはさすがに演じていないのだが、それを上回るほどのソングライティングとボーカルなのである。キンクスのアルバム発表の予定はないけれど、今年で68歳になるとはいえ、この調子ならまだまだあと数枚はいけると思うのだが、どうだろうか。

 ある評論家が、レイはポール・マッカートニー並みの作曲能力を持っていると言っていたが、それはどうかなと思うものの、確かにポールと比較の対象になってもおかしくはない能力はあると思う。キンクスのほとんどの曲は彼の手によるものだし、アルバム・プロデュースも自分で行っている。
 確かイギリス王室から勲章ももらったと思うのだが、それくらいイギリスの文化や経済に貢献したということだろう。

 偏屈で変人ともいわれているレイであるが、ニューオーリンズのどこかで、ファンを驚かすような企画を考えているのかもしれない。


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