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2012年8月26日 (日)

ザ・ミュージック

 前回のブログで、ゼップの持つグルーヴ感が世代を経て、90年代にもみられたことを述べたのだが、これは何もゼップの持つ音楽性だけの問題ではなく、ロック本来の特質みたいなものだと思っている。

 50年代に生まれたロックン・ロールのリズムは、その時代における音楽的ブームや各国、各地域の音楽と融合しながら、大きく変化していった。80年代におけるエスニックな流行は音楽界にも影響を与え、ポール・サイモンやピーター・ガブリエルなどのビッグ・ミュージシャンまでもが、その影響を受けた音楽を展開していった。

 イギリスにおいても状況は同じようなもので、めまぐるしく変わる音楽シーンにおいて、ロックのリズムに様々なヴァリエーションが生まれてきた。ケルティックな音楽は元々イギリスに存在していたし、大西洋を越えてブルーズやレゲエ、スカなどもやってきた。ロック・ミュージックはそれらを飲み込んでいったのである。

 ロック・ミュージックの持つ雑食性は、それらを取り込みながら、また新たな動きを生み出してきたのであるが、その中でレッド・ゼッペリンの存在意義というのは大きいと考えている。
 ゼップはそのデビュー・アルバムからして、ブルーズやフォーク、ロックン・ロールなどの音楽性を有しており、その幅広さは、彼らを単なるハード・ロック・バンドと限定するものではなく、むしろロックの持つ可能性を広げていく原動力としても機能していった。

 そしてそれは2000年代のイギリスにおいても、そういうロックの可能性を孕んだバンドが活躍することを意味していた。2002年にデビュー・アルバムを発表したザ・ミュージックというバンドである。
 彼らが2004年に発表したセカンド・アルバム「ウェルカム・トゥ・ザ・ノース」にはセンスのあるメロディと轟音リフ、重量感溢れるグルーヴが詰め込まれていて、そこにはロックの可能性とともにゼップの遺伝子をはっきりと伺うことができる。 

 このバンドも新しい世代のバンドにふさわしく、エレクトロニックなダンス・ミュージックをベースに、ハード・エッジなギター・サウンドが合わさったサウンドで、ボーカルのロバート・ハーヴェイのメタリックなボーカルはロバート・プラントを髣髴させるし、アダム・ナッターのギターはリードのない、リフ中心のジミー・ペイジといったものである。

 特筆すべきはベースのスチュワート・コールマン、ドラムスのフィル・ジョーダンの2人が織り成すヘヴィなグルーヴで、これだけでも彼らの音楽を聞く価値はあると思っている。特にこの2枚目のアルバムは彼らの最高傑作ではないだろうか。Photo
 プロデューサーはアメリカ人のブレンダン・オブライアン。パール・ジャムやレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンなどのグランジ系からAC/DCのような正統的ハード・ロックまで幅広くプロデュースしてきた人で、この人選は大正解。ザ・ミュージックの持つロックの部分を見事に引き出すことに成功している。
 
 冒頭のアルバム・タイトル曲からロバート・ハーヴェイの高音ボーカルとアダムのギター・リフが宙を舞い、スチュワートとフィルのリズム隊が重量感溢れるグルーヴを生み出している。珍しいのはアダムのリード・ギターを少しだけ聞くことができる点だろう。
 シングル・カットされた"Freedom Fighters"を聞いて、体が動かない人はいないだろう。それだけ強力な、岩をも動かすようなグルーヴなのである。まさにロックン・ロールとはよく言ったものだ。

 一転してエレクトリック・ギターのアルペジオで静かに入る"Bleed From Within"ではあるが、すぐにヘヴィなリズムと轟音ギター・リフが絡み合う。この曲は音響的な広がりと途中に入る彼らにしては静かなリズムの響きが印象的だ。ボーカルもスキャット風で、ハードな音だけで勝負するバンドとは違うとでもいいたげである。

 意外にメロディが美しい"Breakin'"や疾走感溢れる"Cessation"など、聞き所の多いアルバムに仕上げられているし、"Fight the Feeling"は美しいバラードで力強いハーヴェイのボーカルを味わうことができる。アルバムが単調にならないように工夫されているようで、バラエティに富んでいるのに驚いた。

 後半はブレイクビーツ音で始まる"Guide"で幕開けするのだが、彼らの音楽の特長としてはメロディがしっかりしているところだろう。またイントロの電子音が21世紀のグルーヴを表しているようだ。この曲や次の"Into the Night"もメタリックな装飾音を取り除けば、基本はメロディアスである。

 U2をさらにスピーディにさせたような"I Need You"、ゼップの"Kashmir"のようなリズムの"One Way In, One Way Out"を経て、最後はアコースティックで、彼らにとってはやや軽めの"Open Your Mind"で幕を閉じる。

 自分は個人的に気に入っていたバンドだったのだが、残念ながら2011年に彼らは解散してしまった。気合いを入れて制作したセカンド・アルバムがアメリカではこけてしまったからで、それがメンバー間、特にボーカルのハーディのモチベーションの低下につながってしまったようだ。
 そして所属レコード会社を変えて2008年に発表したサード・アルバムは、悲しいかなセカンドよりも売れなかった。これが決定的な原因になったようである。

 才能も技術も豊かな彼らだったが、公式には4枚のアルバムを残して解散したバンドだった。解散後はそれぞれのメンバーは各自に活動しているようだが、あのうねるようなグルーヴを再現するのは難しいだろう。やはりザ・ミュージックの4人がそろって初めて生まれるマジックのようなものであり、彼らでないと表現できない音なのである。

 ただロック・ミュージックの特長の1つとしては、先に述べたような雑食性が挙げられる。この流れは、今後も確実にその幅を広げながら受け継がれていくだろう。第2、第3のザ・ミュージックが登場することは間違いのないことであり、その一刻も早い出現を心から願っているのだ。


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コメント

ご無沙汰しております。
The Musicは、特別な思い入れのあるバンドなので、興味深く拝見させていただきました。
彼らは、2000年代のガレージロック・リヴァイヴァルとでも言うような流れの中から、突然現れたような印象でした。
ポップなロックが溢れる中、彼らのグルーヴは衝撃的でした。
2ndでは、そのグルーヴが少しなりを潜めた感はありましたが、メロディアスでドラマチックになり、個人的にはお気に入りの作品でした。
最後のツアーも(大阪)見に行きましたが、解散するにはあまりにも惜しいバンドでした。
長文すみません。

投稿: なおき | 2012年8月28日 (火) 11時25分

コメントありがとうございました。The Musicは必ずブレイクすると思っていたのですが、解散してしまいました。
 自分はもっとビッグになってジャパン・ドーム・ツアーぐらいするのではないかと勝手に思い込んでいて、そのときまでライヴは取っておこうと思っていました。ライヴを見たなおき様がうらやましい限りです。できればオリジナル・メンバーで一刻も早く再結成してほしいのですが…

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2012年8月28日 (火) 22時29分

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