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2012年8月 6日 (月)

ダイヤモンド・ヘッド

 多くの人は2012ロンドン・オリンピックをテレビなどで観戦していたと思うけれど、自分のようにあまり関心のないロック・オタクでもやはり4年に1回とくれば気になるものである。

 イギリスのロンドン開催ということで、事前の噂ではポールとリンゴとあと2人の息子を加えたビートルズが1回限りの演奏を行うとか言われていたが、やはり噂のままだった。その代わりに、噂通りポールが"Hey Jude"を歌った。
 ロック的にはアークティック・モンキーズが演奏していたが、ちょっと若すぎたのではないかと思っている。しかも"Come together"は持ち歌じゃないし、あとに本物が控えていたのだから、何か他の曲を歌えばよかったのにと思ったりもした。

 できれば60年代から2010年代までの代表的なバンドやミュージシャンをそれぞれ選んで出演させてもよかったのではないだろうか。でも誰が出るか選ぶのは難しいだろうなあ。いっそのこと、ポールを入れたクィーン+ザ・フーというスペシャル・ラインナップやゼップ+クィーンのような夢のバンドを作ってもよかったのではないだろうか。どうせ1回限りなのだから。

 それで前回の北京オリンピックの閉会式ではジミー・ペイジが演奏して2012年のロンドン大会をアピールしていたが、今回そのジミーには何も話が来なかったため、かなりへそを曲げていたという話を聞いた。そんな彼にはこのブログを呼んで、溜飲を下げてほしいものだ。日本語が理解できればの話だけれど…

 それで今まではゼップやロバート・プラントに似たバンドやミュージシャンを取り上げてきたのだが、すべてアメリカン・ロックという範疇でのことだった。今回からはオリンピックにちなみ場所をイギリスに移して、似たようなバンドやミュージシャンを探していこうと思う。

 それでブリティッシュ・ロック編の第1弾は、80年代にちょっとだけ有名だったダイヤモンド・ヘッドである。

 アメリカでは80年代にL.A.メタルなどが流行したのだが、それより少し前にイギリスではニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(以下略してNWOBHM)というムーヴメントが興り、それまでのパンク/ニュー・ウェイヴ路線から一転して新しい時代のハード&ヘヴィ・ロックが人気の的になっていた。

 それまでのもろにブルーズに影響を受けた音楽性よりも、パンクの洗礼を受けたせいか、リズムにキレがありテンポも速く、伝統を受け継ぎつつもそれを発展させようとする新しい形のハード・ロックだったと(個人的に)思っている。

 たとえばこのブログでも紹介したアイアン・メイデンなどはその最たる例であるが、それらのバンド群の中で、ヒットには恵まれなかったものの、その影響力は後世まで及ぼしたというバンドがあった。それがダイヤモンド・ヘッドだった。

 たとえばアメリカン・バンドであるメタリカは、このダイヤモンド・ヘッドの曲をカバーして、彼らにリスペクトを示した。そのおかげで90年代にダイヤモンド・ヘッドの再評価が起こり、彼らは再結成するのであるが、その前に簡単に彼らの略歴を見ていきたい。

 中心メンバーは3人で、ボーカルのシーン・ハリス、ギターのブライアン・タトラー、ドラマーのダンカン・スコットだった。彼らは幼馴染だったらしい。
 結成は1976年で、翌年ベース担当のコリン・キンバリーが加入して、オリジナル・メンバー4人がそろったのである。

 名前の由来は、ロキシー・ミュージックのギタリストであるフィル・マンザネラのソロ・アルバムのタイトルからとられたという話があるが、真偽のほどはよく分からない。

 彼らは折からのNWOBHMのブームに乗り、1979年にレコード・デビューした。ただ彼らが他のヘヴィメタ・バンドと違っていたところは、他のバンドが回転の速い、時に性急ともいえる歌や演奏を披露していたのに対して、ダイヤモンド・ヘッドは70年代のようなブルーズ的な解釈を含めた音楽的構成力を全面に出していたところだった。

 ボーカルのシーン・ハリスはこう述べている。『レッド・ゼッペリンが70年代に体現していたことを、僕らは80年代に持ち込んでいきたいんだ。僕らはgood bandにはなりたくない。great bandになりたいんだ』

この発言からも分かるように、彼らは当時の他のバンドとは一線を画していて、最初は本国イギリスよりもドイツのハンブルグで地元の新興レーベルとアルバム契約を行い、逆輸入という形でイギリスでアルバム発表を行った。そして何とアルバムの通信販売という形でファン層の拡大を図りながら、地道にライヴを続けていったのである。

 そして1982年に当時の大手だったMCAと契約を結び、晴れてメジャー・デビューすることができた。また、その年のレディング・フェスティバルではデビュー・アルバム発表前にもかかわらず、満員の観衆から大歓声を持って迎えられ、その年のヘヴィメタ専門誌の新人部門のファン投票で、あのエイジアに次ぐ第2位に選出されている。(しかしエイジアがヘヴィメタとは思えないのだが…)

 そんな彼らが1982年に発表したメジャー・アルバム第1弾が「偽りの時」だった。全7曲しか入っていないのだが、シーンのいうように、様式美を追求した他のバンドとは違い、ゼップのようにずっしりとしたリズムと、ブルージーかつハードなギター、高音のボーカルと確かに新しい時代のゼップを髣髴させるような曲で占められている。Photo
 1曲目の"In the Heat of the Night"はミディアム・テンポのブルージーな曲で、シーンのロバート・プラントのようなボーカルが強調されている。続く"To Heaven from Hell"も最初はそんなに速くない。疾走感はないのでつまらなく思っていると、途中からアップテンポになり、そこから一気に聞かせてくれる。ある意味、アイアン・メイデンのような曲展開に似ていると思う。

 3曲目の"Call Me"はこのアルバムではポップなテイストを持っている曲で、アメリカ西海岸のハード・ロック・バンドのようだ。間奏のギターも売れ戦狙いに聞こえてしまう。時間も4分に満たない。シングル向きの曲である。
 "Lightning to the Nations"はライヴの1曲目に聞きたいような、ノリのよい曲。ドイツ時代にシングルとして発売していて、昔から人気があった曲のようだ。曲の構成もよくて、彼らの代表曲のひとつだろう。

 次のアルバム・タイトル曲"Borrowed Time"はブンブンというベース音にギターとボーカルが絡み合うところから始まり、ハードかつメタリックな質感を伴って進行していく。ギタリストのブライアン・タトラーという人はけっこう上手で、緩急自在に操るところは本家ゼップを意識しているのだろうか。7分30秒少々と時間的には長いが、それを感じさせない。

 "Don't You Ever Leave Me"は彼ら流のバラードだろう。説得力のあるボーカルが印象的だし、後半のギター・ソロにもゼップの幻影が漂っている。これも8分近い曲。
 そして最後の7曲目"Am I Evil?"はボレロ調で始まり、ギター・ソロから徐々に盛り上がっていくところは定番であるが、確かにカッコいい。この曲を始め、彼らの数曲をメタリカがカバーしたことから、彼らは再評価されるのだが、このアルバムには前半よりも後半に聞かせる曲が多いようだ。

 彼らは1985年に解散してしまうのだが、1991年に再結成した。やはりアルバムが売れなくなったからだろう。しかし何度も言うようだが、メタリカのドラマーであるラーズ・ウルリッヒがシーンと親交があったからだそうだが、それだけでなくやはりミュージシャンから見ても気になる存在だったのだろう。

 現在でもダイヤモンド・ヘッドは活動を続けているが、オリジナル・メンバーはギタリストのブライアンだけのようである。現在のボーカルは果たしてロバート・プラントのような声質をもっているのだろうか。定かではない。


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コメント

残暑お見舞い申し上げます

 プロフェッサー・ケイさんのブログのArticleの充実ぶりに圧倒されています。
 ところで、英国はやっぱりロック大国ですね。オリンピックで改めて世界へのロック発信国であったことを思い知らされた感じです。
 しかし、聖火上昇時のPINK FLOYD”ECLIPSE”を聴いたという人がいないのが・・・・寂しいというか?、むしろ解らなかった連中が可愛そうにと思ったりして自己満悦にニンマリしているというか?・・・私はいやらしい人間になっています。
 しかし、あのRoger Watersの詞は、やっぱり英国では評価があるのだと言うことを知らしめられました。

投稿: 風呂井戸 | 2012年8月15日 (水) 21時31分

風呂井戸さまへ
 開会式と閉会式の両方で流された音楽はピンク・フロイドだけではなかったでしょうか。閉会式ではジョンのイマジンは流されましたが、ビートルズの曲は流れなかったように思っています。
 やはりイギリスを代表するバンドの一つとして、ピンク・フロイドの存在意義は深いものがあります。自分はあの選曲を担当した人に金メダルを贈りたいですし、事前の宣伝やもう少し詳しい説明を加えなかった某国営放送に対しては、ブーイングを浴びせたいですね。それにしても風呂井戸氏のジャズの造詣の深さには恐れ入ります。プログレだけではなかったのですね。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2012年8月16日 (木) 18時51分

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