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2012年9月 5日 (水)

クロックワーク・エンジェルズ

 「クロックワーク・エンジェルズ」というのは、カナダの3人組ロック・バンド、ラッシュの通算20作目のスタジオ・アルバムのタイトルである。日本では今年の初夏に発売されたアルバムだが、自分にとってはなかなかの大作で、何度聞いても飽きが来ない。

 ラッシュというバンドは、デビューして40年以上にもなるのだが、いまだに第一線で活躍している数少ないバンドでもある。
 たびたびこのブログでも取り上げているのだが、3人組というロック・ミュージックをおこなう上での最少人数にもかかわらず、とても3人でやっているとは思えないほど緻密でエネルギーに満ちた楽曲を演じることで有名だ。2

 ボーカル&ベース・ギター担当のゲッディ・リーはジョン・アンダーソンばりのハイ・トーン・ボーカルとライヴではダブル・ネックのベース・ギター、ベース・ペダル、キーボードと、ひとり4役も5役もこなす才能豊かなミュージシャンであり、ドラマーのニール・パートはアルバムの作詞を担当し、ラッシュのアルバムを文学作品まで高めることに貢献している。

 日本国内でも海外でもラッシュの文学観や世界観を研究する人たちや団体が存在していて、ニールの書いた作品について侃々諤々の論陣を張っているといわれている。確かに難解かつ深遠な彼の詩については研究に値するだろう。しかしそうなると、もはや芸術の域に達しているようだ。

 また彼の演奏プレイについてもテクニカルかつパワフルで、まるで戦闘機のコックピットに乗っているようにドラムセットに囲まれてプレイをする。セットの一部を移動させないと椅子に座ることができないと言われているほどだ。

 ギター担当のアレックス・ライフソンもテクニカルなギタリストである。ただ自分は彼の良さというのがイマイチ理解できていない。それは彼のプレイ・スタイルがコード・ストロークもしくはアルペジオ主体で、印象に残るようなリード・パートが少ないからである。
 だからもう少しメロディアスなフレーズを弾いてほしいと思っている。彼にはその才能は充分あると思っているのだが、なかなかその機会に恵まれていない。

 また彼もアルバムでの楽曲を、そっくりそのままライヴで再現することを志向していて、実際に今までも実践してきている。そういう意味ではギミックに頼らないミュージシャンでもある。

 それで全米2位まで上昇した彼らの最新作「クロックワーク・エンジェルズ」も前作から5年のインターバルを経て発表され、渾身の努力を傾注して作られたもののようだ。
 今回は久しぶりのコンセプト・アルバムということで、自分のような軽薄な人間にはよく理解できていない。ただアルバム・ジャケットを見てもらえばわかるように、全体的に“時”を表していて、過去・現在・未来の流れにあるSF的な世界観を表現していると思われる。Photo
 また全12曲は時計の12時間分を表しているようだ。これもまたニールのコンセプトによるものだろう。
 詳細な曲ごとの感想は省略するが、相変わらずのラッシュ節で満ち満ちている。また8曲目"The Wreckers"のように、意外にポップな曲もあるのは自分にとってはうれしいことだった。

 ただ彼らも60歳間近である。ゲッディの声を聞く限りでは、もうかつてのようなハイ・トーンのみを聞くことはできない。高いことは高いのだが、シャウトではなく歌いこむように変化してきている。

 アレックスのギター表現の多彩さは相変わらずで、このアルバムでもアコースティックからエレクトリックまで幅広いのだが、惜しむらくは先にも述べたように印象的なフレーズに乏しいことである。その分、ゲッディの歌唱やニールの世界観が伝わるようにアルバムを通して工夫しているのかもしれない。

 彼らがデビューした当時は、カナダ版レッド・ゼッペリンのコピー・バンドと言われていたが、それが現在ではドリーム・シアターのような音を構築している。最少の人数であの分厚い音を鳴らし、さらには同様の音質をライヴでも保障している。それだけでも彼らとこのアルバムの素晴らしさが分かるのではないだろうか。


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コメント

 プロフェッサー・ケイさん、今晩わ。
 RUSHですか・・・・と、何か懐かしんでいる私です。昔結構お熱を入れていたんですが・・・、さてさてどこらあたりで、ちょっと離れてしまったんだろうか?と、今思い起こしているんですが・・・多分アルバム「Vapor trails」あたりが最後だったのかも・・・??。ケイさんのお話しで、ちょっと興味が湧いてきました。
 このアルバムのジャケの時計の数字の部分のマークが、一つ一つ意味があるとすれば、こりゃ難解ですね。

投稿: 風呂井戸 | 2012年9月 9日 (日) 21時43分

 親愛なる風呂井戸さま、お久しぶりでございます。貴殿の精力的なブログ(特に北欧や東欧のジャズなど)を励みにしながら、小生も奮闘しつつあります。
 さてさてラッシュももう長いですね。小生は「フェアウェル・トゥ・キングス」からの付き合いですが、常に水準以上のアルバムを発表していますし、ライヴ映像でのゲッディ・リーは一人3役くらいこなしています。ぜひぜひ風呂井戸氏のブログでも取り上げてみてください。
 ところでジョス・ストーンの映像については興味津々です。小生も是非観賞してみようと思いました。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2012年9月10日 (月) 21時10分

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