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2012年9月22日 (土)

ロスト・シンボル

 読書の秋ということで、本を読んだ。ダン・ブラウンの「ロスト・シンボル」である。彼の“ロバート・ラングドン”シリーズは、これが3作目。1作目の「天使と悪魔」、2作目の「ダ・ヴィンチ・コード」はいずれもトム・ハンクス主演で映画化されている。

 特に2003年の「ダ・ヴィンチ・コード」は世界的に大ベストセラーを記録し、44の言語に翻訳され7000万部以上の売り上げがあったと言われている。またその謎を読み解く解説本などの関連書籍や映像作品、ビデオ・ゲームも売れている。日本でも角川書店によると、1000万部を突破しているようだ。

 この「ダ・ヴィンチ・コード」が有名になったおかげで、2000年に発表された「天使と悪魔」も2009年に映画化された。「ダ・ヴィンチ・コード」が2006年に映画化されているので、作品の発表順と映画化の順番が逆転している。ダン・ブラウンや関係者にとってはうれしい誤算だったろう。

 この「ロスト・シンボル」は2010年に単行本で出版されたが、貧乏な自分は文庫本が出版されるまで待とうと思っていた。しかし2年以上も待たされるとは思わなかった。それだけ時間を空けないと単行本の売れ行きに影響が出るのだろう。Photo

 この“ロバート・ラングドン”シリーズにはいくつかの共通点が見られる。
①必ず秘密結社や宗教団体が出てくる
②残忍な暗殺者や殺人者が登場する
③知的で魅力的な女性が存在する
④歴史的な事実と結び付けられる
⑤科学的な知識で脚色されている
⑥必ず数時間のうちに解決される
⑦主人公に生活感が漂っていない
⑧物事の展開が急である
⑨殺人方法がグロテスクである
⑩結局フィクションが主体である

 以上の点が考えられるが、第3作目の「ロスト・シンボル」も同様である。今回の秘密結社はフリーメイソンである。その究極の秘密を探ろうとして殺人者が暗躍するのだが、手首を切り落としたり、女性をホルマリン漬けして殺したりする。ちなみに「天使と悪魔」では法王候補を火責めや水責めで殺している。
 また約一晩で事件が発生し、展開し、収束していく点がスリリングであると同時に、現実離れしている。まさに小説の中でしかありえないことだ。

 ちなみに今回のフリーメイソンについては、都市伝説のようなものから何らかの経験者でないと書けないような内容まで触れられている。アメリカ建国の父であるジョージ・ワシントンやトマス・ジェファーソンはフリーメイソンの会員で有名だし、日本でも鳩山一郎や岸信介なども会員だったと噂されている。
 欧米ではロスチャイルド家やモルガン家など金融・財政を牛耳っている一族もいて、そこからフリーメイソン世界陰謀説なども生まれたのであろう。

 科学的な面では「天使と悪魔」では反物質の爆発物が登場したが、今作では純粋知性科学という分野が登場する。これは「人間が死んだらどうなるのか」、「死後の世界とは」、「思考は質量を持つのか」、「人間の思考が物質にどう影響を与えるのか」、「あるいは物質が人間の思考にどう影響するのか」等々、科学と宗教・哲学を止揚するようなアプローチを取っている。2

 スイス生まれの精神科医のキューブラー・ロス女史は、死後の世界を想定した考えを披露している。また日本の電子工学の研究者で文化勲章受章者でもある岡部金治郎は1971年に「人間は死んだらどうなるか」、1979年にはその続編ともいえる「人間は死んだらこうなるだろう」という本を著して、生命エネルギーという観点から死後の世界を科学的に考察している。

 この「ロスト・シンボル」では今までの前2作とは少しニュアンスが異なっていて、科学的な理論よりは信じるか信じないかという宗教的な信念の方に力点が置かれているようで、読み進むにつれて少し息苦しいところもあった。
 ところが、ここがダン・ブラウンの筆使いの素晴らしいところで、各章のページ数が少なくて読みやすいのだ。短くて4ページ、長くても10ページ程度ですぐに次の章に移り、物事が展開していく。そのスピード感があるので、多少内容が堅苦しくてもどんどんページが先に進んでいくのである。その辺の筆致が見事であった。

 アインシュタインは“宗教なき科学は欠陥であり、科学なき宗教は盲目である”と述べたが、科学的裏付けのある高度な宗教や普遍的な価値観のある高レベルの科学はお互いに歩み寄っていくのだろう。狂信的なカルトや恣意的な科学は人類の進歩には不要であるということか。

 いずれにしてもこのシリーズでは、たとえばフランスやバチカン市国、ワシントンDCと、作中の舞台となった場所に見学に行って実際に確かめたくなってくるから不思議である。そういう副次的な効用があるというのも作者ダン・ブラウンの技量なのかもしれない。3


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