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2012年9月30日 (日)

レッド・クロス

 ロック・ミュージックには、パワー・ポップという流れがあって脈々と現代にも受け継がれている。基本的にはポップなメロディとギター中心のハードな演奏が売りであり、ポップ・ミュージック+ロック・ミュージックみたいなものだ。

 パワー・ポップの源流は、やはり何といってもザ・ビートルズだろう。爽やかなメロディと美しいコーラス、シャープな演奏はいつ聞いても素晴らしい。エヴァグリーンとはまさにこういう音楽をさすと思う。

 そこからイギリスではバッド・フィンガーやベイ・シティ・ローラーズなどが生まれ、アメリカではザ・ラズベリーズやチープ・トリックなどが羽ばたいていった。ただ70年代ではパワー・ポップというような言い方はしていなかったと思う。80年代以降になってからそういう細分化がはっきりし始めたように認識している。

 それで今回からは80年代以降のアメリカン・パワー・ポップ3大バンドについて述べてみたい。3大パワー・ポップ・バンドといっても、あくまでも自分にとって影響が大きかったと言う意味であって、このバンドたちが人気、実力、商業的成功をおさめているという意味ではない。

 本当は3大バンドではなくて四天王なのだが、その四天王とは、レッド・クロス、ポウジジーズ、ファウンティン・オブ・ウェイン、ジェリーフィッシュのことをさす。ただジェリーフィッシュについては以前のこのブログで述べているので、今回は省略して3大アメリカン・パワー・ポップ・バンドなのだ。

 自分がレッド・クロスを初めて聞いたのは90年代に入ってからだった。ラジオから流れているのを聞いて初めて知ったのであるが、どちらかというとややハードで、ポップな要素はあまり見受けられなかった。たぶんグランジ興隆時期だったので、時流にあわせていたのかもしれない。

 そのとき初めて聞いたアルバムが「フェイズシフター」だった。メロディとコーラスの付け方は典型的なポップ・バンドという感じだったが、リバースやファズなどのアタッチメントの効果が強すぎて、そんなに気に入った覚えはなかった。ギター前に出すぎでしょ!という雰囲気なのである。41ml1yakabl
 それでも"Lady in the Front Row"や"Monolith"には彼らのポップネスの片鱗が伺われていて面白かった。ギターはグランジ系でもメロディや歌い方はポップなので、逆に言えばそういうアンバランスで目立っていたバンドだった。

 そんな彼らの魅力がギュウギュウ詰まっているアルバムが通算6枚目のアルバム「ショウ・ワールド」だ。前作の「フェイズシフター」から約3年、1996年に発表されたこのアルバムはまさにポップの万華鏡といってもおかしくないほどメロディアスで、前作はギターが目立ちすぎていたのだが、このアルバムでは適度に目立つ程度でバンドとしての一体感が醸し出されている。Photo
 このアルバムにはチープ・トリックやザ・ナックを連想させるような佳曲が多い。たとえば"Stoned"、"Mess Around"などはサビのところがキャッチーで覚えやすく、ためて一気にコーラスが爆発するようなところはパワー・ポップ・ファンならたまらないところだろう。
 パワー・ポップで曲の出来が悪いとどうしようもないのだが、このアルバムに限ってはそういう心配は要らないだろう。どの曲も一定水準以上のレベルには達しているからだ。

 ところがそれ以降、彼らはなかなか新作を出さなかった。待てど暮らせど音沙汰がないので、仕方なく1990年に発表されていた彼らのメジャー・レーベル移籍第1弾の「サード・アイ」を買って聞いた。
 ところがこれがまた聞きやすいアルバムで、彼らの原点ともいえるサウンドが鳴り響いている。余計な装飾が抑えられているので、メロディが際立っているし、適度の疾走感もあり、車を運転しながら聞いていると、どこまでも走り去ってしまいそうな気がしてくる。

 また"I Don't Know How to Be Your Friend"のようなミディアム・バラード系もあるし、ハードな"Shonen Knife"、正にタイトル通りの"Bubblegum Factory"も収められていて、バラエティに富んでいる。また"1976"という曲は当時のアイドルだったデヴィッド・キャシディ主演の映画にも使用されてシングル・ヒットした。
 ここから彼らがメジャーになって行ったということがよく理解できるアルバムでもあった。個人的には「ショウ・ワールド」以上に、一番気に入っているアルバムになってしまった。2
 もともとレッド・クロスはジェフリーとスティーヴンのマクドナルド兄弟が中心となって結成されたバンドだ。兄のジェフリーがベース・ギターを、弟のスティーヴンがギターを担当していて、それ以外のメンバーは流動的である。一時女性キーボーディストも加入していた時期もあったが、現在は男性4人組である。

 またかつては“Red Cross”と表記していたのだが、国際赤十字より紛らわしいと訴えられそうになったために“Redd Kross”と表すようになったという。さすが表音文字である。

 そして何とまあ今年の夏に15年ぶりの新作「リサーチング・ザ・ブルーズ」を発表した彼らは、いまアメリカをツアー中だという。15年もの間どうやって生活の糧を得ていたのか不思議なのだが、とにかく活動を再開させてくれたのはうれしい限りだ。これからもどんどん新作を発表して、パワー・ポップをメインストリームにまで広げてほしいものである。

 ところで前回のブログで紹介したFun.のアルバムのプロデューサーは、マクドナルド兄弟の弟スティーヴン・マクドナルドが行っている。彼のポップ・ミュージックのノウハウを使ってアルバムが制作されたのだろう。あのアルバムが大ヒットしたのも彼のおかげかもしれない。


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