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2012年10月10日 (水)

ファウンティンズ・オブ・ウェイン

 自分の中でのパワー・ポップ3大バンドを紹介するシリーズの最後を飾るのは、アメリカの東海岸出身の4人組、ファウンティンズ・オブ・ウェインである。(長い名前なので、以下FOWと略す)

 このバンドの中心も2人のミュージシャンで、ボーカル&ギターのクリス・コリングウッドとギター&ベース&キーボード担当のアダム・シュレシンジャーである。曲のほとんどはこの2人によって書かれていて、夢見るようなポップ・テイストとキャッチーなメロディに溢れた曲を聞かせてくれる。

 2人は学生時代からの知り合いで、当時から曲を書いていた。バンドの結成は1996年と90年代に入ってからだが、アダムの方は一足先に活動を始めていて、1994年にはアイヴィーという3人組でもデビューしている。またトム・ハンクス主演の映画「すべてをあなたに」での劇中曲も提供している。
 デビュー・アルバムは2人で制作したとクレジットされていて、その直後にギタリストとドラマーを加えてバンド活動を行うようになった。以後、同じメンバーで活動を続けている。

 自分は音楽雑誌で彼らのことを知り、どんなものか聞いてみたのだが、これがまたまさにポップ・ミュージックの玉手箱のようなアルバムで、一発で彼らのことが好きになってしまった。
 そのアルバムが1999年に発表された「ユートピア・パークウェイ」である。雑誌のアルバム評にあったように、まさにファンタジックなアルバムで、無駄な曲が少ない素晴らしいものだった。Fow
 まあ確かに曲によっては出来不出来というのもあるのだが、とにかく安心して聞くことができる。20世紀の終りになって、こういうポップなアルバムを聞くことができるとは思わなかった。80年代のパワー・ポップ・バンドは西海岸出身が多かったのだが、東海岸出身でここまでポップなテイストのアルバムを作り上げるバンドがあるとは思わなかった。偏見とは恐ろしいものだ。

 ちなみにアルバム・タイトルの「ユートピア・パークウェイ」とは、ニュー・ヨークのクィーンズ州に実在する通りの名前で、郊外の生活を描いたアルバム・コンセプトに基づいて名づけられている。
 ただメンバーに言わせると、彼らのレーベル会社であるアトランティック・レコードはこのアルバムをあまりプッシュしなかったらしく、売り上げの方はさっぱりでチャート・アクションも悪かった。結局のところ、FOWはこのアルバムを最後にアトランティックからドロップ・アウトしてしまう。

 したがって次のアルバム「ウェルカム・インターステイト・マネージャーズ」まで4年の歳月を待たなければならなかった。(日本ではEMI傘下のヴァージン・ジャパンから発売されるようになった)
 自分は当時流行ったコピーコントロールCDとして購入したので、自分自身では楽しめたものの、他の人にはこの良さを味あわせることができずに残念な思いをしたことを覚えている。なぜならこのサード・アルバムは、個人的には彼らの代表作だと思っているからだ。Fow2
 実際にバラードの"All Kinds of Time"はアメリカンフットボールのクォーターバックのことを歌っていて(ユーミンの“ノー・サイド”のようだ)、2004年シーズンのNFLのプロモーション・ビデオに使用されたし、小曲"Hey Julie"はTVのコメディ・ドラマ“スクラッブス”の中で使われた。またアコースティックな佳曲の"Valley Winter Song"はL.L.ビーンの2008年のCMの中で流されている。

 こういうアルバムを聞いていると、日常の出来事に起因する疲れや悩みなどが解消されたような気になってしまうから不思議だ。ポップ・ミュージックは確かに軽い音楽のように思えるけれども、その影響力は決して侮れないものがあると思っている。だから次から次へと新しいポップ・ソングが生まれてくるのだろう。それは流行という側面もあるのだろうが、いつの時代でもリスナー自らも求めているからだろう。

 ところでこのアルバムはゴールド・ディスクに認定され、バンドも2003年のグラミー賞ベスト・ニュー・アーティストと2人以上でのベスト・ボーカル・パフォーマンス賞を受賞した。

 この勢いをかって、FOWはシングルB-サイドや未発表曲を集めた2枚組アルバムを発表し話題を集めた。その間にも彼らは次のアルバムについて企画・制作を行っていたようで、2007年には4枚目「トラフィック・アンド・ウェザー」を出している。Fow3
 あくまでも個人的な感想なのだが、FOWは2000年代のジェリーフィッシュだと思っている。ただジェリーフィッシュは4人とも能力のあるミュージシャンだったが、FOWは基本的に2人である。それでも作り出される楽曲はジェリーフィッシュと比べても遜色のないものになっていると思う。
 このアルバムでも全14曲、どれをとっても個性的で独創的、なおかつポップで誰が聞いても心地よいだろう。

 曲によっては多少のバラつきはあるものの、日本の車を題材にした"'92 Subaru"や高速道路95号線をひとりでドライヴする"I-95"など、メロディだけでなく歌の内容にも工夫されていて面白い。
 音楽雑誌ローリング・ストーンでは、"I-95"が2007年のベスト100曲の中で54位に位置している。しっとりとした名曲だ。またタイトル曲はフィラデルフィアの交通・天気情報局にちなんで名づけられたもので、FOW流のロック・ミュージックとなっている。

 そして今のところ彼らの最新アルバムが、昨年発表された5枚目の「スカイ・フル・オブ・ホールズ」で、前作がビルボードの97位だったのに対して、このアルバムは37位と大きくジャンプアップした。もちろん今までの中で最大のヒット作で、商業的にも成功している。Fow4
 パワー・ポップというマイナーなジャンルであっても、良いものであれば認められる。もちろんそこに至るまでの彼らの努力は並大抵のものではなかっただろうが、リズム重視、ヒップ・ホップ系が占める今のチャートの中で、この結果は個人的には喜ばしいものだ。メロディの復権、ポップ・ロックの再評価のためにも、FOWにはこの調子で素晴らしいアルバムを発表し続けてほしいと願っている。

 3回にわたって自分の好きなアメリカン・パワー・ポップ・バンドを紹介したのだが、要するにグランジの影響を強く受けていたのがポウジーズで、ややアコースティック色を備えているのがレッド・クロス、そしてどちらかというとポップ・ミュージックの方に両足を踏み入れているのがファウンティンズ・オブ・ウェインということになるだろう。いずれも自分にとっては忘れられないバンドなのである。


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