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2013年3月29日 (金)

ロックパイル

 ニック・ロウとデイヴ・エドモンズについて述べてきたが、今回はその補遺というか補足というか、つまりおまけである。ということで彼ら2人が、ロックパイルとして発表した唯一のアルバム「セカンズ・オブ・プレジャー」を聞いてみた。これはその感想だ。

 もともとロックパイルというのは、1972年に発表されたデイヴ・エドモンズの1stソロ・アルバムのタイトルだった。

 このアルバムもセカンドと同様、ほとんどの楽器をデイヴ一人で演奏しているが、一部、エーメン・コーナーのメンバーでかつてエリック・クラプトン・バンドでギターを担当していたアンディ・フェアウェザー・ロウやデイヴのマイナー時代のバンドメイトで後にダイヤー・ストレイツのドラマーになったテリー・ウィリアムス、同じくマイナー時代のバンドメイトでベーシストのジョン・ウィリアムスなどが手伝っている。

 人によってはこの時のバンドを第1期ロックパイルという人もいるが、正確にはデイヴ・エドモンズ&ロックパイルと呼ぶべきもので、あくまでもデイヴのバックバンドにしか過ぎなかった。だからデイヴのワンマン・バンドみたいなもので、そのせいかごく短命に終わってしまった。

 デイヴはその後、スタジオ・ワークに戻り、ニック・ロウのいたブリンズリー・シュワルツのアルバム・プロデュースを手伝う中で、ニックと意気投合をして、新生ロックパイルを結成していく。

 そのときニック・ロウは、当時の新興レーベルだったスティッフ・レコードに所属していて、レーベル会社の共同経営者だったジャック・リヴィエラからデイヴも誘われたのだが、デイヴとジャックの関係が思わしくなくて、結局、デイヴはレッド・ゼッペリンのいたスワン・ソングと契約してしまった。だからデイヴとニックは契約上、同じレーベルからアルバムを発表できなかったのである。

 1977年のデイヴのソロ・アルバム「ゲット・イット」に参加したメンバー、デイヴ・エドモンズ、ニック・ロウ、ドラマーのテリー・ウィリアムスを中心にロックパイルが結成され、やがてルルやニール・イネスのバンドにいたギター担当のビリー・ブレムナーも加入し、4人組バンドとして活動を始めた。

 彼らはデイヴやニックのソロ・アルバムには参加していたし、ときにはバッド・カンパニーの前座としてライヴ活動も行っていたという。
 だから1977年から79年にかけてのデイヴとニックのソロ・アルバムは、実質的にロックパイルのアルバムと見なされているということは前回も述べた。

 そして1979年にジャック・リヴィエラがコステロやニック・ロウたちを引き連れて、新しいレコード会社に移籍すると、デイヴもスワン・ソングとの契約を見直し、やがて解消してしまった。この時期のロックパイルの姿は、某国営放送でテレビ放映もされた「カンボジア難民救済コンサート」で見ることができた。(2013年3月現在、この映像ソフトのオフィシャル版は存在せず、コレクターDVDでしか見ることができない。残念な限りである)

 彼ら名義のアルバムは、1980年の秋にやっと陽の目を見た。「セカンズ・オブ・プレジャー」である。
 オリジナルは全12曲だったが、レコードには付録としてエヴァリー・ブラザーズのカバー4曲のEPが追加されていて、計16曲になっていた。

 オリジナルの12曲中半分の6曲はニック・ロウのペンによるもので、全体的にニック色が強いようだ。ハード・エッジなサウンドではなくて、ポップ・ロック、後に言われるようなパワー・ポップ傾向が強い。Photo
 1曲目の"Teacher, Teacher"はクリエイションという1960年代のイギリスのビート・バンドにいたケニー・ピケットとエディ・フィリップスの曲。デイヴの曲は、アメリカのビルボードでは51位まで上昇した。ノリのよいポップ・ロック・ソングだ。

 2曲目の"If Sugar was As Sweet As You"はアメリカはテキサス生まれのR&Bシンガー、ジョー・テックスの曲で、これまたノリのよいロックン・ロールである。
 続く"Heart"はニック・ロウの曲だが、ビリーが歌っている。後にニックは自分のソロ・アルバムにも取り上げた。それだけ思い入れがあったのだろう。

 "Now And Always"は60年代のオールディーズっぽい雰囲気の曲で、郷愁感を誘う。また"Knife And Fork"もアメリカ人のR&Bシンガー、キップ・アンダーソンの1967年のヒット曲。この曲を取り上げたのはデイヴの意向だろう。

 "Play That Fast Thing"はロックン・ロールというよりロカビリー色の強い曲。50年代はこんな曲でみんな踊っていたのだろう。間奏のギター・ソロがカッコいい。"Wrong Way"はスクイーズのクリス・ディフォードとグレン・ティルブロックの曲で、スクイーズのようなロックとポップスが絶妙にブレンドされた佳曲である。

 ニック・ロウの曲"Pet You And Hold You"は黒っぽいR&Bテイスト含んでいて、チャック・ベリーの"Oh What A Thrill"はデイヴが歌っている。この辺の選曲はデイヴが主導権をとったのだろうか。

 "When I Write the Book"もニックの曲だが、以前のニックのところでも述べたように、エルヴィス・コステロの曲"Every Day I Write the Book"はこの曲に対するもの。また、ニック自身もこの曲を気に入っていて、のちに自分のアルバムに取り上げている。
 "Fool Too Long"もニックの曲ながら、ニックとデイヴが気持ちよさそうに歌っている。このアルバムの中ではややハードな雰囲気をもっている。個人的にはこういう曲をもっとやってほしかった。

 オリジナルの最後もアメリカ人のR&Bシンガー、シドニー・セミアンとプロデューサーだったフロイド・ソイリューの曲"Fine Fine Fine"で“You Ain't Nothing But...”と始まるので、思わずプレスリーの有名な曲を思い出してしまった。この曲もチャック・ベリー系のロックン・ロール王道路線である。

 追加の4曲はコーラス・グループ、エヴァリー・ブラザーズのカバーなので、ニックとデイヴの美しいハーモニーを聞くことができる。彼らはこういう曲も録音していたのかと少々驚いてしまった。ロックン・ロールとは真反対に位置するような雰囲気をもった曲だからである。いずれもアコースティックで、2分程度と非常に短い。

 話によると、この時期のデイヴとニックは仲が悪くなっていて、険悪な雰囲気だったという。だからロックパイル名義のアルバムはこの1枚で終わってしまった。おそらく今後も発表されることはないだろう。

 やはりバンドの主導権争いなのか、デイヴにしてみれば自分が中心になって結成したし、バンドの名義も元々は自分のバックバンドの名前だったという気持ちもあっただろう。ニックにしてみれば、自作曲を多く提供してきてバンドに貢献してきたという自負もあっただろう。

 また音楽観についても、デイヴはオリジナルにこだわらず、カバー曲を広く取り上げていたし、ニックは逆にオリジナルで勝負していた。そういう音楽路線の対立みたいなものもあったのだろう。

 もう二度とリユニオンはありえないだろうが、“ニュー・ウェーヴ時代のレノン&マッカートニー”だったデイヴとニックである。
 ただ本家のような後世に残る曲が少ないのは、やはり活動期間の短さによるものか、はたまたデイヴとニックの間に生じるケミストリーが少なかったせいなのか。もう2,3枚はアルバムを発表して、世間を驚かせてほしかった。残念でならない。


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