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2013年9月10日 (火)

ロッド・スチュワート(2)

 今年の夏は初盆があったり、痛風発作に苦しめられたりと、いろいろと大変だった。さらには全国的にも熱中症で倒れる人が相次いでいて、中には亡くなられた人もいたが、自分はそこまでいかなくても、日中にエアコンをつけずいると、頭がボーとしてきて、もともと思考力がないのに、さらに何も考えられなくなるようになってしまった。

 そんな中で、とりあえず何も考えられなくても印象に残るようなアルバムを聞こうと思ったのだが、そういえば少し前にロッドがアルバムを出したなあと思って、久しぶりに購入して聞いてみた。

 ひとつはBSの「ベスト・ヒット・U.S.A.」で小林克也氏が推奨していたのを思い出したからで、そこでのメロディが印象に残っていた。
 アルバムでも冒頭に収められている"She Makes Me Happy"という曲だったが、これがシンプルなメロディに、シンプルなリズム、おまけにタイトル通りのサビの部分が非常に覚えやすく、聞いているだけで口ずさめるようになってしまった。

 またこの曲だけではなくて、ほかの曲にもマンドリンが効果的に使用されていて、昔の"Maggie May"を思い出してしまった。オールド・ファンにはうれしい限りである。

 70年代後半にアメリカに渡って以降、ロッドというと“成り上がったセレブ”、“ハリウッドに毒された金満家”、“ロック・スピリットを忘れた単なるエンターテイナー”という印象が私の中では強かったのだが、今回のこのアルバムは今までの印象とは逆に、彼が“原点回帰”を図った久しぶりの好アルバムといった感がある。1986年に「ロッド・スチュワート」という自分の名前を冠したアルバムを発表しているが、それ以来の素晴らしいアルバムではないだろうか。Photo
 ご存知のように、ロッドは2000年に甲状腺癌の手術をして以降、思うようにシャウトできず、もう曲をかく自信もなくなったとまで周囲の人に漏らしていたらしい。そのせいか昔のスタンダード・ナンバーを中心に歌うようになってしまった。
 ところが彼には運命の女神がついていたのだろう。それが逆に功を奏し、アルバムはバカ売れ状態、全世界的にまたまた売れてしまったのである。“人間万事塞翁が馬”とはこのことを指すのだろう。

 そんな彼に、昔の盟友であるジム・クリーガンが一緒にアルバムを作らないかとなかば強引に説得して、多くのゲスト陣とともに作り上げたのが「タイム」だった。

 もともと彼の声は、しゃがれていたから年をとってもあまり変化がない(ように聞こえる)。確かにここは昔ならシャウトするだろうなあと思ってしまうところもあるのだが、全体を通して聞けば、そんなに違和感はなかった。

 またソングライティングについても、12曲中11曲にクレジットがあったから何らかの形で関わっていたのだろう。昔からひとりで曲を書くタイプではなかったし、これについてもそんなにこだわらなくてもいいと思う。

 それにかなりいい曲が多い。"Can't Stop Me Now"ではバグパイプが聞こえてきて、彼のルーツであるスコティッシュの香りが漂っているし、続く"It's Over"はストリングス付きのオリジナルのバラードで、バラードを歌わせたら天下一品のロッドだけに、コクのあるウィスキーを飲んでいるように、体中に浸みわたってしまった。

 "Brighton Beach"は先ほどのジム・クリーガンと一緒に作った曲で、これまたお涙頂戴のアコースティック・バラードになっている。
 また"Beautiful Morning"は、リフレインの部分が覚えやすく、キャッチーな曲になっていて、サックスもフィーチャーされ、ロッド自身もノリノリで歌っている。昔のフェイセズを思わず連想してしまう。

 "Live the ife"にはハーモニカやフィドルが、"Finest Woman"ではブラスが使用されていて、本当に40年前にタイム・スリップしたかのようだ。
 アルバム・タイトル曲の"Time"では"Time waits for no one, That's why I can't wait for you"、“歳月人を待たず、だから君のことも待てないんだ”とシンプルに歌っていて、次のトム・ウェイツのバラード曲"Picture In A Frame"に続く。この辺は1977年の「明日へのキックオフ」の後半部分を髣髴させてくれた。

 80年代のエレクトロニック部分を思い出させるのは"Sexual Religion"だろう。バックのシンセ・サウンドが懐かしい。また、この曲といい次の"Make Love to Me Tonight"といい、曲のモチーフは相変わらず昔のままだ。さすが20世紀のセックス・シンボルといわれたロッドだけあって、67歳の今でも考えることは中高生並みなのだろう。

 最後の曲"Pure love"もまた感涙のバラードで、1986年のアルバム「ロッド・スチュワート」に収められていた"In My Life"のようだった。

 ちなみに国内盤には3曲のボーナス・トラックが付属していて、1965年にヴァン・モリソンが歌った"Here Comes the Night"、トム・ウェイツの"Cold Water"、エルモア・ジェイムズの1961年の"Shake Your Money Maker"をきっちり歌っている。もう喉は良くなったんじゃないのと思わせてくれるほどだ。

 このアルバムは英国では堂々の1位、米国では7位を記録している。本人はフェイセズの再結成も視野に入れているようだが、ほかの人はどう思っているのだろうか。たぶん反対するだろうな、彼のバック・バンドになってしまうから。ただいずれにせよこのアルバムは、ロッド久々の傑作なのは間違いないだろう。まだまだ現役続行中のロッド・スチュワートなのである。


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