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2013年12月19日 (木)

サーガ

 今年もあと1週間あまりになり、街も新しい年を迎えようとする準備でますます慌ただしさを増しているようだ。そんな時季に登場するのは、久しぶりにカナダからのバンドである。 

 

 カナダといえば、世界的に有名なバンドのラッシュの名前を思い出す人も多いだろう。この3人組はレッド・ゼッペリンの硬質性と、イエスのような構築美を有する音楽性を備えているが、カナダには、この手の音楽性を持つバンドが多いようだ。これも“ラッシュ効果”なのかもしれない。 

 

それでこのバンドも多少のプログレの要素は持ちつつも、それ以上にハード・ロックの部分が大きく占めているようだ。このバンドというのは、5人組のサーガである。(Sagaと表記されることもある)

  

彼らはもうベテラン・バンドと呼ばれてもおかしくないほど活動歴が長い。結成は1977年のトロントで、ベーシストのジム・クリフトンとドラマーのスティーヴ・ニーガス、キーボーディストのピーター・ラフォンが結成したポケッツというバンドが母体になっている。

その後、ボーカリストにマイケル・アドラーが、ギタリストにジムと兄弟のイアン・クリフトンが加入し、キーボーディストがピーターからジム・ギルモアに交代して、ここに不動のラインナップが完成した。 

 

 彼らは1978年に「サーガ」というバンド名と同名のアルバムを発表したが、これが早くも大ヒットを記録した。地元カナダはもちろんだが、なぜかドイツでも好評で、数か月余りで3万枚以上売り上げたという。 

 

 当時はボストンやジャーニーが人気だったが、彼らの音楽性もそれらによく似ていた。要するにクリアでメロディアスなギター・ソロとスペイシーなキーボード・プレイ、それに絡む力強いボーカルである。

カナダという国はアメリカと陸続きのせいか、そこからの影響を強く受けると同時に、一歩退いた形で、アメリカの音楽を客観的に対象化できるようだ。

 

 だからサーガの音楽性もアメリカのバンドの影響を強く受けながらも、徐々に自分たちのオリジナリティを出すようになった。まず同郷のラッシュとの差別化を図るためにポップ化の道を歩み始めた。(ラッシュものちに同じような道のりを歩むようになったが…)だから必然的に楽器ソロはコンパクトにまとめられ、ボーカルが強調されるようになった。

またジムの才能を生かして、少しプログレッシヴなテイストも演出するようになった。簡単に言えば、ボストンからエイジアに軌道修正したということだろう。 

 

そのせいか1982年に発表されたアルバム「ワールズ・アパート」は全米29位を記録し、そこからのシングル“On the Loose”はビルボードのシングル・チャートで26位まで上昇した。

さらにライヴ盤を挟んでの5枚目のスタジオ・アルバム「ヘッズ・オア・テイルズ」は、その俗悪なアルバム・ジャケットにもかかわらず、世界的に流通し、これまたヒットしている。

 

 これで順風漫歩、向うところ敵なしのサーガだったが、1987年のアルバム「ワイルデスト・ドリ-ムズ」発表後、ジムとスティーヴが脱退してしまった。理由は自分の家庭を大事にしたいということとソロ・キャリアの追求だった。成功して自分たちの求める音楽性に違いが生じたのだろう。よくある話ではある。 

 

そして残されたメンバーで活動を続けたサーガだったが、これまた主力メンバーを失った野球チームのようで、さっぱり売れなくなってしまった。これもよくある話である。 

 

ただサーガの人気は北米だけでなく欧州、特に北欧で人気が高く、それまでの活動をまとめた2枚組のベスト・アルバム「ザ・ワークス」の売り上げもよかった。2
 このベスト盤は1991年に発表されたのだが、ソロ・キャリアを追及していたメンバーもこれをきっかけに元のバンドに戻ろうと思い始め、結局、1993年にオリジナル・メンバーで再活動を始めた。この辺もプログレ・バンドなどでは、よくある話である。

 

 彼らは2012年までに22枚の公式スタジオ・アルバムを発表している。そのあいだオリジナル・ドラマーが交代したり、ジョン・アンダーソンのように、ボーカリストのマイケル・アドラーの一時的離脱もあったが、現時点ではドラマー以外は全盛期のメンバーで活動しているようだ。 

 

自分は彼らのベスト盤「ザ・ワークス」と1999年の15枚目のアルバム「フル・サークル」を持っているが、前者はシングル・ヒット中心でポップな彼らの面を知ることができたし、後者のアルバムでは円熟したエイジアのようなプログレ的な要素をもつ彼らの魅力を知ることができた。 

 

特に「フル・サークル」では、ややダークで濃密な音空間を味わうことができて、個人的には気に入っている。
 1曲ごとの演奏時間は決して長くはなく、だいたい5分程度なのだが、それぞれギターやキーボードのソロや少年少女の合唱団を使った曲もあり、時間以上の長さを味わうことができた。さすが全世界で800万枚以上のアルバム売上げを誇るバンドである。どうしたら魅力的なアルバムになるかのノウハウには長けているのだろう。Photo

 ちなみにベスト盤にはピーター・ガブリエルの“Solsbury Hill”が収められている。またギタリストのイアンは実際にエイジアと共演をしているから、エイジアの影響も受けていたのだろう。

またキーボーディストのジムはイエスのアルバム「ユニオン」のレコーディングにも参加していた。場合によってはトニー・ケイやリック・ウェイクマンの後継者として、イエスに参加する可能性もあったわけで、そう考えれば彼の演奏技術もかなりのレベルに達していると思われる。 

 

最後に上記以外で彼らの特徴はというと、アルバムのジャケットに変な生物が描かれていることと、楽曲に“Chapter”シリーズがあるということだろう。

 

この変な生物は何という名前なのかわからないが、彼らの分身か、あるいはマスコット的存在なのだろう。しかも最初はバッタとトンボが合体したような昆虫だったが、最近では徐々に進化?しているところが興味深い。

 

 それと“Chapter”シリーズという楽曲が彼らのアルバムに順不同で挿入されていて、まずデビュー・アルバムには“Chapter4”、“Chapter6”が、セカンド・アルバムの「イメージズ・アット・トゥワイライト」には“Chapter1”と“Chapter3”が収められていた。

「フル・サークル」では“9”、“10”、“13”が収録されていたが、最終的に“16”まであるようで、2005年にはこの16曲を順番通りに収めた「チャプターズ・ライヴ」という2枚組ライヴCDが発表されている。

曲については特に統一した内容はないのだが、当時の冷戦に対するレジスタンスやアインシュタインの保存されていた脳みそ、先端科学技術による死者の再生などのSFなどがテーマとして扱われている。 

 

日本ではそんなにメジャーではないのだが、北米やヨーロッパではかなり人気の高いサーガである。純粋なプログレッシヴ・ロック・バンドではないのだが、ライトなドリーム・シアターと考えれば、日本でももっと人気が出てくるかもしれない。ただ配給会社の応援がないと厳しいだろうし、それは期待する方が無理というものだろう。


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コメント

自分はプログレに興味があり2ndアルバム「Images at Twilight」から7th「Behaviour」まで海外から注文して聞いてました。緊張感ある曲やアダルトオリエンタルな部分などもあり非常に気に入っていましたが、あるサイトでSagaが解散するという記事があり去年から聞き始めた自分にとっては複雑や気持ちです。知名度も低く日本の洋楽やプログレファンであまり取り上げられないと思いますが個人的に名バンドだと思っているので是非試聴してほしいと思います。コメントが一つもないのとSagaの件で残念なニュースも伝えたかった為コメントしました。記事のリンクを貼っておきます。

http://amass.jp/83675/

投稿: どっかの名無し | 2017年12月13日 (水) 00時11分

 どっかの名無しさんへ。コメントありがとうございました。Sagaのファンがいてうれしいです。
 確かに、彼らは解散するようですね。来年の「クルーズ・トゥ・ジ・エッジ」で1回限りのライヴをやって終わりになるようです。

 このことについては、来年の1月中旬に、このブログで触れてみたいと思っています。貴重な情報をありがとうございました。

 でも、残念なニュースです。マイケル・サドラーはまだ63歳のはず。まだまだいけると思うのですが…

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2017年12月17日 (日) 21時33分

「解散のニュースのその後」

お久しぶりです。SAGA解散のその後の話ですが、7月にオンタリオでライブを行うらしいです。(公式サイトのリンクを載せます。)

http://sagaontour.moonfruit.com/

しばらくは不定期でライブイベントなどに出ると思いますが、季節が夏になるので体調に気を付けて楽しい演奏をしてもらいたいと願っています。自分もまだ買っていないライブアルバム「Live at the Montreal Forum」を頼もうかと考えています。

投稿: どっかの名無し | 2019年5月28日 (火) 23時06分

お久しぶりです。コメントありがとうございました。SAGAについては、もっとメジャー扱いされてもいいのではないかと思っています。特にここ日本では。
 今回もまた貴重な情報をありがとうございました。今後は不定期な活動になりそうですね。棺桶に入るまで、一度はこの目で見てみたいと思っています。これからもよろしくお願い致します。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2019年6月 3日 (月) 22時46分

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