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2014年7月 5日 (土)

スローン

 さてジメジメとした梅雨を吹き飛ばすカナディアン・ロック特集もいよいよ最後になった。シンガー・ソングライターから始まり、ハード・ロックやプログレッシヴ・ロックなど、幅広く浅く見てきたつもりだが、最後となった今回は、ポップ・バンドを紹介したいと思う。

 そのポップ・バンドは、スローンという。4人組で、結成は1991年とかなり古く、20年以上カナディアン・ロック・シーンの第一戦で活躍しているバンドでもある。

 彼らの出身は、カナダ東部ノヴァスコシア州ハリファックスで、ギター&ボーカルのジェイ・ファーガソンとベース&ボーカルのクリス・マーフィーが結成したパンク・バンドが母体になっている。
 この2人にもう一人のギタリスト、パトリック・ペントランドとドラマーのアンドリュー・スコットが加わってスローンが誕生した。結成以降、一度もメンバー・チェンジをしていない不動の4人組だ。

 彼らはいきなりメジャー・レーベルのゲフィンと契約をするのだが、当初はパンク・バンド出身の彼らだけあって、かなりとんがった音楽をやっていたらしい。
 時代が時代だけに、グランジ・ロック・バンド、“第二のニルヴァーナ”を探そうと、アメリカのレコード会社もカナダにまで手を広げてきたのであろう。

 その目にかなったのがスローンだった。彼らは1992年にアルバム「スミアード」を発表したが、これがいきなり大ヒットし、大手音楽業界誌のローリング・ストーンも絶賛するという結果になったのである。

 こうなればレコード会社は、柳の下の二匹目のどじょうを狙おうとして、次作も売れるアルバムを目指して、外部のプロデューサーを招いて1994年に2枚目のアルバムを作らせた。
 ところがこのアルバム、カナダでは好評だったものの、隣国アメリカでは“1994年に最も聴かれなかったアルバム・ベスト10”に選ばれてしまうという不本意な結果を残してしまった。

 彼らの求めていた音楽とプロデューサーの志向するものが微妙に違っていたのであろう。
 その後彼らは、しばらくアルバム作りから離れ、メンバーはそれぞれの個人活動を行っていった。このままレコード会社の意向に従ったアルバム作りを進めていけば、自分たちの音楽が作れないと判断したのであろう。

 約2年間のブランクを経て、彼らは3枚目のアルバム「ワン・コード・トゥ・アナザー」を発表した。このアルバムは、カナダやアメリカではゲフィン・レコード以外から発表されていて、自分たちで主導権を握った音作りを行ったようだ。Photo
 その証拠に、今まで以上にポップで、なおかつトランペットやマラカスなども使用されていて、音楽的な発展?が伺われるからだ。

 全12曲で、1曲を除いて2分から3分程度の曲でまとめられている。(日本盤では14曲入りになっている)個人的な意見としては、正統派ポップ・ミュージックというイメージよりは、グランジとパンクがクロスオーヴァーしたポップ・ソング集といった感じだった。

 ライヴの臨場感あふれるSEで始まる1曲目の"The Good in Everyone"はノリノリのロックン・ロールで、続くメロディアスな"Nothing Left to Make me Want to Stay"へと続いている。

 アコースティック感覚が映える"Autobiography"やエレキ・ギターのカッティングが60年代を想起させる"Junior Panthers"など正統的なポップ・ソングもあるが、一方で疾走感のある"G Turns to D"やテープの逆回転を使用した"Anyone Who's Anyone"という実験的な曲も収められている。

 だから曲によっては、聞きやすいものもあれば、ちょっと取っつきにくい感じのする曲もあった。1996年当時の音楽と考えれば、これはこれで“時代の音”だったのだろう。

 ちなみにこのアルバムからは、カナダのシングル・チャートで9位になった"The Good in Everyone"や6位を獲得した"Everything You've Done Wrong"など、4枚のシングルが生まれ、アルバム自体もカナダではゴールド・ディスクを獲得している。

 彼らはその後、9枚のスタジオ・アルバムを発表し、最新作は今年発売される予定の「コモンウェルス」である。

 彼らが途中一度もメンバー・チェンジせずに、今まで第1戦で活躍できているのも、この1996年のアルバム「ワン・コード・トゥ・アナザー」の成功のおかげだともいえるだろう。

 決してエヴァグリーンなポップ・ソング集とは言えないアルバムだが、彼らがグランジ系から大きく一歩を踏み出して、ポップ・バンドのフィールドで活動しようと決意させたのも、このアルバムで自信をつけたからだろう。

 本国カナダや隣国アメリカでは、それなりに知名度のあるバンドであるが、ここ日本では残念ながら、そこまで有名ではない。このアルバムについても、いい曲はあるが、自分は何回も聞いてみたいとは思わない。

 ただ間違いなく言えることは、カナダを代表するポップ・バンドだということだ。やはり最初からポップ・バンドを目指したのではなく、紆余曲折を経てたどり着いたのが、ポップ・ミュージックのフィールドだったから、音楽的下地や経験がそれだけ豊富なのだろう。Sloanfollowtheleader
 まがった枝ほど風雨に強いといわれるが、彼らの音楽が受け入れられているのも、そのせいかもしれない。


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