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2014年7月30日 (水)

カヴァーディル・ペイジ

 “真夏のB級ブリティシュ・ロック編”の第4弾は、前回のザ・ファームの続きのようなお話なので、お許し願いたい。

 つまり今回もジミー・ペイジが登場するからだが、このジミー・ペイジという人は、今から考えれば、当時最もその動向が注目されていた一人であり、その影響力も少なからず持っていたミュージシャンの一人だった。

 何しろゼップ解散後は、ほとんど隠居状態だった人だ。たまにニュースが流れれば、映画のサウンドトラックを作ったとか、他人のライブに飛び入りで参加したとか、そういう単発的な内容ばかりで、熱心なファンは、きっとやきもきしていたに違いない。

 だから彼が1985年にポール・ロジャーズとザ・ファームを結成したときは、多くのファンはこれで恒常的にバンド活動を行うことができると思って、その内容はともかく、熱烈歓迎、欣喜雀躍したのである。

 ところがその活動も2年余りで終焉を迎えた。今から考えれば、ジミーはそれほど乗り気ではなかったようだ。何しろ曲の半分はポールの単独曲だったし、ジミーのギターからは印象的なリフが、飛び出してはこなかったからだ。

 その後、ジミーはソロ・アルバムを1枚出した後、しばらく隠棲してしまうのだが、なぜか90年代に入ってからビッグなニュースが飛び込んできた。それが元ディープ・パープルやホワイトスネイクのボーカリストだったデヴィッド・カヴァーディルと一緒にバンド活動を始めるというものだった。Photo
 どういう経緯で2人が一緒に活動するようになったのかわからない。一説によれば、当時2人が所属していたレコード会社の陰謀があったといわれているが、確かに話題性も生まれるだろうし、それに伴ってアルバムも売れれば、会社としては笑いが止まらなかっただろう。

 この辺は、わりとザ・ファーム結成に似ている。ザ・ファームも、ジミーとポールが同じレーベルメイトだったから生まれたのだった。

 それで1993年にアルバム「カヴァーディル・ペイジ」が発表された。全11曲すべてジミーとデヴィッドの共作だった。多くが4分~5分程度の曲で、中には8曲目の"Don't Leave Me This Way"のように、8分近いものもあった。

 これだけでも、このアルバムに対するジミーの気合の入れ方がわかると思う。しかも1曲目からギンギンのメタリックなサウンドで、リスナーに迫ってくる。またデヴィッド・カヴァーディルのスィンギング・スタイルも、高音はまるでロバート・プラントのようで、びっくりしてしまった。

 もしこれをロバート本人が歌ったなら、これはこれで激似のゼップになっていただろう。ひょっとしたら再結成につながったかもしれない。それくらいゼップ本家と比べても、遜色のないアルバム制作だったと思っている。

 また、アルバムの1曲目"Shake My Tree"から最後の曲"Whisper a Prayer for the Dying"まで、エッジが立っていて統一感がある。申し訳ないが、ザ・ファームのアルバムよりは、数倍いや数十倍メタル・サウンドになっていた。これで売れないわけがないだろう。

 実際、アルバムは全英4位、カナダやアメリカでは5位を記録して、プラチナ・ディスクに認定された。日本でも15万枚以上売れているし、来日公演も行われた。

 メタリックなアコースティック・ギターからのアルペジオから導かれる"Shake My Tree"はシングルカットされた曲でもあり、低音では枯れたデヴィッドのボーカルが、高音になると急にロバート・プラントのようにメタリックになるところが可笑しかった。ちょっと無理があるように思えたからだ。

 "Take Me for a Little While"は、ジミーのアコースティック・ギターも目立つバラード系の曲で、中盤のジミーのギター・ソロも爆発的でなかなかのものだ。デヴィッドのボーカルより記憶に残るだろう。

 "Pride and Joy"もアコースティックとエレクトリックが絶妙に交じり合っていて、まるでゼップの曲を聞いているようだった。「フィジカル・グラフィティ」のアウトテイク集の1つと言われても納得してしまうような曲。ダルシマーとエレクトリック・ハーモニカはジミー・ペイジが担当している。

 "Over Now"も中期ゼッペリンを想起させる音だ。"Kashmir"の回転を速くしたような曲で、ギターの重ね方やストリングス・キーボードの用い方、デヴィッドの歌い方まで本家にそっくりである。デヴィッドは、かなり無理してるんじゃないのと思わせるほどだった。

 "Feeling Hot"は、アップ・テンポのロックン・ロールで、超カッコいい。残念なのは、この曲が二度と公の場で歌われないことだ。いい曲なのに勿体ない。誰かカバー曲を出してくれないだろうか。ライヴでは間違いなく盛り上がることだろう。

 "Easy Does It"も6&12弦のアコースティック・ギターとストリングス・キーボードが用いられていて、"Over Now"のような感じだ。この曲と最後の曲"Whisper a Prayer for the Dying"では、元ベイビーズや元バッド・イングリッシュのベーシストだったリッキー・フィリップスが参加している。

 ジミーとデヴィッド以外のメンバーは、基本的にはベースがジョージ・カーサス、ドラムスがデニー・カーマッシー、キーボードにはレスター・メンデスが担当している。
 この中で有名なのは、ハートやモントローズで活躍したデニーぐらいだろうか。結構固い音を出していて、ボンゾの雰囲気に近いものがあった。

 このアルバムの中で一番ポップな曲が"Take a Look at Yourself"だ。基本的にはアメリカン・メロディアス・ハードだが、それをうまい具合にジミーがハードな味付けをして料理している。

 ゼップの"Since I've Been Loving You"のカヴァーディル・ペイジ・ヴァージョンが"Don't Leave Me This Way"だろう。時間的にも8分近いし、バックのキーボードとともに徐々に盛りあがるところが似ている。デヴィッドもかなり無理しながら、シャウトしているが、やはりこうでもして歌わないと、ジミーからOKが出なかったのだろう。ちょっと可哀そうな気もした。

 "Absolution Blues"は、名前には“ブルーズ”がついているが、まったくとんでもない。アグレッシヴなヘヴィ・メタルだ。イントロから歌いだしまで2分以上ある曲で、そういえば"The Song Remains The Same"のようだ。90年代のそれだろう。

 この曲もライヴでは映えるに違いない。曲のリフもなかなかいいものがある。何度も言うけれども、もう二度とライヴでは聞くことができないと思うと残念でならない。とにかくカッコいいので、未聴の人はぜひ1回は聞いてほしいと思う。

 最後の曲"Whisper a Prayer for the Dying"は、このタイトルが示すように最初は静かなエレジーであり、セカンド・ヴァース以降、急に盛り上がるといういつもの常套手段で作られている。急にメタリックに叫ぶデヴィッドのボーカルにも注目だ。Photo_2 
 

 とにかく個人的には、大好きなアルバムだった。もう少し長く活動すると思ったのだが、日本での来日公演だけで終わってしまった。日本の招聘元もデヴィッド自身も、もう少し長続きすると思って、公演にはビデオ・カメラを入れてなかったから、彼ら唯一の公での姿は永遠に記録されずに終わってしまった。

 このアルバムで自信をつけたジミーは、やっぱりプラントの方が自分のサウンドにマッチすると確認できたようだった。片やロバート・プラントは、このアルバムから刺激を受けて、結局、2人はこの翌年の1994年に活動を開始してアルバムを発表した。いわゆる“ペイジ&プラント”の誕生である。
 一体、デヴィッドはどういう役回りだったのだろうか。単なる当て馬だったのか、よくわからない。

 デヴィッド42歳、ジミー49歳の時のバンドだった。結果的にはアルバム1枚で終わったプロジェクトだったし、そこに収められている曲ももう二度と再演されることはないだろう。

 これもゼップの、なかんずくジミー・ペイジの完璧主義、あるいは金儲け主義のせいかもしれない。
 やはりレッド・ゼッペリンの存在は、現役で活動していた時も、解散した以降も、解散から30年以上たった今でも、計り知れなく大きい。それを一番理解していたのも、ジミー・ペイジに違いないのだ。


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