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2014年9月 8日 (月)

ワイルドハーツ

 最近のロック・ミュージックでは、ギター・バンドの地位は極めて低い。というか、最初からギター・バンドを目指すミュージシャンは、ほとんどいない。そんなことで苦労しなくても、美しいメロディや、キレのあるライムなどに力を注いだ方が、売れるからだ。

 だから、いわゆるギター小僧などは、昔のロック・ミュージックを楽しむか、現代に生きるヘヴィ・メタルやプログレッシヴ・ロックのバンドを探すことになる。
 それでも最近のその手のジャンルのバンドも、印象に残るような長いフレーズを奏でることは少ない。ギターは前に出ることはほとんどなく、完全にバックの演奏に徹していることの方が多いようだ。

 理由の1つは、ギターよりもキーボード類の工学的な進歩の方が目覚ましく、ほぼコンピューター化していて、簡単に操作できる(演奏ではなくあくまでも操作である)ようになったことが挙げられる。
 また、ギター小僧が憧れるような、新時代のギター・ヒーローが現れていないということも言えるだろう。いずれにしてもギター・バンド受難の時代である。

 それで今回の“残暑を乗り切るためのB級ブリティッシュ・ハード・ロック・バンド”では、ワイルドハーツを紹介することにした。

 このバンドは、リーダーでギタリスト&ボーカルのジンジャーのソロ・プロジェクトといっていいほど、バンド形式は保ってはいるものの、数回にわたってメンバー・チェンジを繰り返している。Wildhearts
 ジンジャーは1964年生まれなので、今年中に50歳になる。まだまだ若いといってもいいくらいのミュージシャンだ。
 1987年から3年間、クワイアボーイズのギタリストとして活動したあと、このワイルドハーツを結成した。

 自分は残念ながら、寡聞にしてクワイアボーイズを知らない。80年代から90年代にかけて一世風靡したブリティッシュ・ハード・ロック・バンドのようで、アメリカのバンドのポイズンに対するブリティッシュ・ロックからの回答と言われていたそうだ。
 要するに派手で陽気なロック野郎たちだったのだろう。解散、再結成を繰り返しながら、彼らは今も現役である。

 それでワイルドハーツだが、彼らの音楽性は“The Beatles meets Metallica”といわれていて、パンキッシュでハードなサウンドながらも、そのメロディはどこか懐かしく、ポップな要素を湛えていた。曲はほとんどジンジャーが手がけていたから、これはひとえに彼の才能のなせる技だろう。

 彼らは1992年に4曲入りのEPを発表し、翌年「アースVS.ザ・ワイルドハーツ」でデビューを飾った。このアルバムは、デビュー・アルバムにしてすでに完成されていると評され、ファンの中では、このアルバムを最高傑作に推す人もいるようだ。ただ全英チャートでは、最高位46位、シングル"Caffeine Bomb"は31位と、そんなに上がらなかった。

 ただこのアルバムには、デヴィッド・ボウイと一緒に活躍したあのミック・ロンソンがゲスト参加していて、ギターを弾いている。ただミックは、この後すぐにこの世を去っているので、このアルバムはミック・ロンソンに捧げられている。

 彼らは1997年に一度解散し、また活動を再開したのだが、最初の解散までの約7年間で4枚のアルバムしか発表していない。

 その中で自分が一番だと推薦するのは、セカンド・アルバムだった1995年の「p.h.u.q.」だろう。全英チャートでは堂々の6位を記録し、シングル"I Wanna Go Where The People Go"は16位まで上昇している。(ちなみにこのアルバムを読むときは、h.の次にa.を入れて“ファ×ク”と読むそうだ)Photo
 彼らのルックスは、いかにもバッド・ボーイズ風なのだが、やっている音楽は至極真っ当で、小気味よい。ハード・ロックというよりは、ハードなロックン・ロールという感じがした。

 1曲目の"I Wanna Go Where The People Go"は、今聞くとまるでグリーン・デイの「アメリカン・イディオット」の中の曲のようだ。それほどメロディアスで、ノリがよいということだろう。

 それにまた彼らのコーラスも聞きやすく、時に爽やかだ。そういうところがビートルズに似てくるのだろう。"V-Day"、"Just in Lust"などの曲もそんな感じがした。

 特に後者はシングル・チャートで28位まで上昇している。彼らはアルバム・オリエンティッドなバンドではなくて、シングル曲も大事にしていた。これは多分ジンジャーの志向だろう。

 さらにザ・ビートルズの"I'm Only Sleeping"の回転数を上げたような"Nita Nitro"、逆に、まさにメタリカっぽい"Cold Patootie Tango"、"Noah Shit, You Got Through"など聞き所は多い。

 それに意外に美しいバラード、"In Lily's Garden"も収められていて、90年代半ばのイギリスにこういうバンドが存在していたことを知って驚いたものだ。日本にはたびたび来日しているようだから、知らなかったのは自分の不明さのせいだろう。

 とにかくこのアルバムを通して、自分にとってワイルドハーツは、ハードなグリーン・デイ、メタリックなチープ・トリックという印象が強いバンドなのである。

 彼らは、というかジンジャーは、その後も数回、ワイルドハーツの解散、再結成を繰り返しながら、今も活動を続けている。

 彼はまたソロ活動にも熱心で、2010年にはフィンランドのバンド、ハノイ・ロックスのボーカリストだったマイケル・モンローとともにバンドを結成し、ライヴ・アルバムを発表している。

 もちろんソロ・アルバムも5枚ほど出していて、日本ではほとんど彼の動向が伝わらないけれども、非常にエネルギッシュに活動しているようだ。

 彼もまた、現代に生きるブリティッシュ・ハード・ロック界を代表するミュージシャンの1人なのである。


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