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2014年10月23日 (木)

スレッショルド

 さてさて、“プログレのようなハード・ロック/ヘヴィ・メタルのような”ロック・バンド・シリーズの第7弾である。今回も伝統あるブリティッシュ・ロック・バンドの中から1つ選んでみようと思う。

 前回はムーディー・ブルースも所属していた(というか自分たちで立ち上げたレーベル)スレッショルド・レーベルのバンド、トラピーズだったが、今回もスレッショルドつながりということで、その名前通りのバンドのことを、思いつくままに書いてみたい。

 このバンドは、ムーディー・ブルースの1969年のアルバム「夢幻」のオリジナル・タイトルにあった"Threshold"という言葉の響きに惹かれて、自分たちのバンド名にしたようだ。3
 スレッショルドは、1988年イギリス南部のサリー州で結成された。中心人物はギタリストのカール・グルームという人で、以前このブログの中で紹介されたシャドウランドというバンドのギタリストでもあった。

 シャドウランドは1996年から2009年までの間は、ほとんど活動休止状態だったから、このあいだのカールは、スレッショルドで活動をしていたのだろう。

 シャドウランドについてもう少しだけ触れておくと、もともとこのバンドは、ペンドラゴンのキーボーディストのクライヴ・ノーランのバンドだったから、彼の音頭取りがなければ、活動はしていなかった。

 また、カールは他のプログレッシヴ・ロック・バンドのアルバムに参加したり、アルバムのエンジニアやプロデュースも行っている。クライヴ・ノーランとまでいかなくても、カールもまたワーカホリックな人で、彼が関わったアルバムはイエスやペンドラゴン、ストレンジャーズ・オン・ア・トレイン、クライヴ・ノーランのソロ・アルバム等々、枚挙にいとまがない。

 それでスレッショルドに話を戻すと、オリジナルのボーカリストだったジョン・ジアリーという人は、1991年にダミアン・ウィルソンが加入した時に、彼にリード・ボーカルの地位を譲ってベース・ギターに専念している。

 このダミアン・ウィルソンという人も、クライヴ・ノーランつながりでこのブログに登場していた。彼はスレッショルドに参加する前は、ランドマークというバンドで歌っていた。このバンドもクライヴ・ノーランと関わりが深くて、クライヴはプロデュースなどを担っていた。

 ただスレッショルド在籍中のダミアンは、1993年のデビュー・アルバム「ウーンディッド・ランド」発表後、音楽的な意見の衝突から脱退してしまうのだが、1996年に再加入した。そして制作されたアルバムが3枚目の「イクスティンクト・インスティンクト」だった。1
 基本的にスレッショルドはドリーム・シアター系のバンドだ。ある意味“ドリムシ・クローン”と言ってもいいだろう。テクニカルなリズムと宙を舞うギター・サウンド、それらを覆う重厚なキーボードなど、本家のサウンドによく似ている。

 ただ異なるのは、伸びのあるダミアンのボーカルだろう。基本的にシャウト型ではなくて、しっかりと歌いこむ方だ。だからハードな曲から抒情的なバラードまで器用に歌いこなすことができる。

 このアルバムでも4曲目の"Forever"ではしっとりと歌いあげているし、8曲目の"Clear"ではアコースティック・ギター1本をバックにして、リスナーひとり一人に届くように、力強く歌いかけている。器用なボーカリストのようで、ハードからソフトな曲まで、彼なら無難に歌うことができるだろう。

 またもう一つの違いは、6人編成ということだ。専任ボーカリストとリズム・セクション、キーボーディストにギタリストが2人いる。普通ならここでツイン・リードなど、演奏力に幅を出そうとするのだろうが、そういう場面は少なく、残念ながら2人も存在する意味が見いだせないような気がする。

 このアルバムでも、8分以上もある"Part of the Chaos"では、確かにツイン・リード・ギターらしきものが聞こえてくるのだが、他の曲ではあまりパッとしない。もっと印象に残るフレーズやソロを発揮するなどして、バンドの特長を高めていってもらいたいものだ。2
 ところでダミアンは、何を思ったかこの1997年の3枚目のアルバム発表後に、再びバンドを脱退してしまった。理由はよくわからないのだが、ソロ・キャリアを追及したくなったのだろう。
 その後は、オランダのミュージシャン、アルイエン・アンソニー・ルカッセンのプロジェクトやリック・ウェイクマンのバンドで活躍しているようだ。

 しかしさらによくわからないのは、このダミアンは、三たびスレッショルドに返り咲いて、アルバムに参加していた点だろう。

 おまえはジョン・アンダーソンかと言いたくなるのだが、自分はリード・ボーカリストはバンドの顔だと思っているので、こう何度も変わられると、アルバム制作に支障が出てきてもおかしくないと思うのだが、どうだろうか。

 とにかくダミアンは、2007年にバンドに復帰して、それ以降の2枚のアルバムに参加している。公式上は現在でもバンドのメンバーである。

 結局、オリジナル・メンバーはギタリストのカール・グルーム一人だけになってしまった。彼がこのバンドのリーダーであり、クライヴ・ノーランから声がかかれば、シャドウランドでもギターを弾くのだろう。

 アイアン・メイデンやジューダス・プリーストなどのメタル・バンドは、プログレのような長い曲や組曲形式のものをやっているが、あくまでも彼らはヘヴィ・メタル・バンドとして活動している。

 その点、スレッショルドはイギリスでは珍しくプログレッシヴ・ロックとヘヴィ・メタルの境界線上にあるバンドだ。しかも1988年から25年以上も活動を継続していることを考えれば、根強いファン層が存在しているのだろう。 

 日本ではマイナーな存在だが、イギリスのバンドとして、アメリカのドリーム・シアターと比肩できるように頑張ってほしいものである。


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