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2015年1月 8日 (木)

ザ・ブリーズ~J.J.ケイルに捧ぐ

 さて新年あけましての第2弾は、昨年夏に発表されたJ.J.ケイルへの追悼盤「ザ・ブリーズ~J.J.ケイルに捧ぐ」を紹介しようと思う。

 とにかくこのアルバムは、良かった。素晴らしい作品だと思う。はっきり言って、歌よし、曲よし、演奏よしだった。

 ご存じのように、アメリカン・ロックの至宝ともいえるJ.J.ケイルは、一昨年の7月に74歳で亡くなった。心臓発作だった。
 彼の渋いギター演奏やつぶやくようなボーカル・スタイルは特長的で、70年代から2000年代までマイペースで活躍してきた。

 とくに有名なのは、エリック・クラプトンとの交流だろう。クラプトンがケイルの曲"After Midnight"や"Cocaine"を取り上げたおかげで、それまで単なるシンガー・ソングライターに過ぎなかったケイルがワールドワイドに評価されるようになった。Photo_3
 実際、ケイルはもう音楽業界から足を洗おうと思っていたが、これがきっかけになって思いとどまり、再び音楽活動に勤しむようになったのである。人生何がきっかけでどう変わるか分かったものではない。

 その後も二人の交流は続いていて、2006年にはクラプトンとともに「ザ・ロード・トゥ・エスコンディード」を発表している。このアルバムについては、このブログでも取り上げたので今回は省略するが、全体的にはすばらしいアルバムだった。

 70年代のエリック・クラプトンは、クリーム時代のインプロヴィゼーション主体のギタリストから、いわゆるレイド・バックした音数の少ないギタリストに変化したが、その影響はケイルからも少なからず受けていると思う。

 それでアルバムに話を戻すと、クラプトンが音頭をとってケイルの16曲を様々なミュージシャンとのコラボや単独演奏で収めている。
 自分が所有しているのは輸入盤なので、残念ながら詳細はよくわからない。知りたい人は国内盤を購入した方がいいと思う。Photo_2
 基本的には、クラプトンはすべての楽曲でギターを弾いている。1曲目の"Call Me the Breeze"のギター・ソロには有名セッション・ギタリストのアルバート・リーも参加していて、クラプトンの向こうを張っている。ボーカルはクラプトンである。

 2曲目の"Rock and Roll Records"のボーカルはクラプトンとトム・ペティ。3曲目は未発表曲の"Someday"で、ボーカルとメインのギターはマーク・ノップラーだ。
 彼はダイヤー・ストレイツ解散後、ブルーグラスやカントリー系のアルバムを発表していたが、この曲では一粒一粒の音のトーンが際立った彼特有のギター・サウンドと、呟くようなボーカルを聞かせてくれた。彼もまたJ.J.ケイルに影響を受けていたのだろう。

 4曲目の"Lies"はクラプトンとジョン・メイヤーが歌っていて、もちろんジョンはギターも演奏している。ジョンのギターは幾分抑え気味で、それがJ.J.ケイルの雰囲気によくマッチしている。

 5曲目は"Sensitive Kind"。この曲はサンタナも取り上げていた。ボーカルとギターはドン・ホワイトという人が担当している。この人はJ.J.ケイルのバックバンドのメンバーのようだ。ブルーズっぽい曲調を持った曲でもある。

 6曲目はランディ・クロフォードやネヴィル・ブラザーズも歌った"Cajun Moon"で、ここではクラプトンがギターとボーカルを担当している。2分少々しかなくてアッという間に終わってしまうのが難点か。

 7曲目は有名なあの"Magnolia"で、この曲を聞くと、まるで自分自身が南部にいて籐の椅子に座ってまどろんでいるような気がしてくる。まさに彼を代表する1曲だろう。ボーカルとギターはクラプトンとジョン・メイヤーである。

 次はレーナード・スキナードも歌った"I Got the Same Old Blues"で、クラプトンとトム・ペティが歌っている。その次の"Songbird"もレーナード・スキナードの歌った曲かと思ったら全然違っていた。
 歌っているのは、ウィリー・ネルソンとクラプトンで、デヴィッド・リンドレーとウィリー・ネルソンはギターも弾いている。彼はもう今年で82歳になる。彼とB.B.キングは、アメリカン・ミュージック界のまさに“生けるレジェンド”だろう。

 10曲目の"Since You said Goodbye"と次の"I'll Be There(If You Ever Want Me)"は、それぞれクラプトンや彼とドン・ホワイトが歌っている。ちなみにこれらの曲では、ドイル・ブラムホールⅡ世やアルバート・リーも客演している。個人的には軽快な"I'll Be There"が気に入った。この曲でクラプトンは、ドブロ・ギターも披露している。

 "The Old Man And Me"のボーカルはトム・ペティ。バックのスティール・ギターがいい味を出している。13曲目の"Train to Nowhere"ではクラプトンとマーク・ノップラー、ドン・ホワイトの3人が歌っていて、それぞれのパートで持ち味を発揮しているようだ。このアルバムでは珍しく4分以上もある曲に仕上げられている。

 14曲目の"Starbound"では、再びウィリー・ネルソンが登場してきて、いかにも彼だと認識できる歌声を披露してくれる。ギターはウィリー・ネルソンが弾いているが、彼だけでは心配だと思われたのか?、デレク・トラックスも一緒に演奏している。"Magnolia"の回転数を少しだけ上げたような曲でもある。

 15曲目にはジョン・メイヤーが参加して、クラプトンとボーカルを分け合っている。"Don't Wait"という曲だが、幾分ハードでロックっぽい雰囲気だ。2000年代以降のケイルの雰囲気に合っていると思う。

 "Crying Eyes"が最後の曲で、メインのギターにはデレク・トラックスとデヴィッド・リンドレーがクレジットされていた。ボーカルはクラプトンとクリスティーン・レイクランドで、後者の女性はJ.J.ケイルの奥方だ。彼女自身もソロ・アルバムを数枚発表しているミュージシャンでもある。

 というわけでザクッと書かせてもらったが、要するに70年代の雰囲気を失わずに、今を生きる一流ミュージシャンが見事にそれを再現し、1枚のCDに収録したアルバムである。
 また、決して懐古主義に堕することなく、瑞々しい息吹を与えられて提示された16曲だった。クラプトン・ファンだけでなく、アメリカン・ロックが好きなら人なら間違いなく受け入れられるだろう。

 しかし、問題はエリック・クラプトンである。このアルバムの中でのクラプトンは、近年の彼のアルバム群には見られないほど、レイド・バックしているし、スィングしている。
 またギター・ソロもツボを得ていて、抜群のタイミングときらりと光るセンスが、半世紀近くを生きてきたクラプトンの精神的、技術的な成熟さを物語っていた。

 2005年の「バック・ホーム」や2010年の「クラプトン」には失望していたから、こういう昔風の作品に憧れてしまうし、単なる郷愁ではない職人肌としてのクラプトンに期待もしてしまうのである。

 要するに、やればできるじゃん、クラプトンという感じだ。クラプトンには今後もこういう感じのアルバムを発表してほしいし、そう願っているファンは、決して自分一人ではないと思っている。

 とにかく次作以降のエリック・クラプトンのアルバムには、あの「スロー・ハンド」のようなアルバムを期待している。それが本当の意味でのJ.J.ケイルの追悼と精神の継承になると思うからである。


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