« 2016年12月 | トップページ | 2017年2月 »

2017年1月

2017年1月30日 (月)

スティーヴン・ウィルソン

 今年は、日本でのプログレッシヴ・ロック生誕47周年記念ということで、これから大いに盛り上がっていくと思っている。(あくまでも個人的希望です)

 それで今回は、スティーヴン・ウィルソンの昨年のアルバムについて簡単に記してみたい。ちょっと古い話で恐縮だけど、寒い冬にはプログレッシヴ・ロックがよく似合うということで、お許し願いたいと思う。

 さて、21世紀におけるプログレ界の“ハタラキ蜂”、ワーカホリック三人衆といえば、スェーデンのロイネ・ストルト、イタリアはホストソナテンのファビオ・ズファンティ、そしてイギリスからのスティーヴン・ウィルソンだろう。Introcrop400100120080
 このスティーヴン・ウィルソン、以前にもたびたびこのブログにも登場してきているが、とにかく自分のバンドのポーキュパイン・ツリーから他のミュージシャンとコラボしたプロジェクトのブラックフィールドやノー・マン、ストーム・コロージョン、実験的な音楽を追及したインクレディブル・エクスパンディング・マインドファック、同じく実験的で前衛的なベース・コミュニオンなど紹介するだけで終わってしまいそうだ。

 それに他のバンドのプロデュースやキング・クリムゾンやイエス、ジェスロ・タル、キャラヴァン、ジェントル・ジャイアントなどの古いカタログのリマスターもあるし、一体いつ休むのだろうかと思うほどだ。

 また、ソロ・アルバムも当然のことながら発表している。そんな彼にとっては、勤勉さというのは至極当たり前のことなのだろう。

 彼は、カバー・アルバムを含めて2008年から6枚のスタジオ・アルバムを発表している。また、昨年はそれらの中から数曲をピックアップしてまとめられたベスト・アルバム「トランシェンス」が発表された。71k37p41vsl__sl1200_
 実はこのアルバム、2015年にアナログ盤で限定販売されていて、今回はそれらにボーナス・トラックとして"Happiness Ⅲ"を加え、CD化されたものである。

 またこのアルバムの曲は、発表順には収められていなくて、それぞれのソロ・アルバムから1曲から3曲ほど選ばれたものが順不同で並んでいた。

 これはスティーヴン・ウィルソンの曲作りに関する首尾一貫した姿勢を訴えているのだろうか。昔から、といっても約8年くらいだけど、それだけ自信のある証拠なのだろう。

 1曲目は2015年のアルバム「ハンド.キャンノット.イレイス」からの"Transience"。ここではシングル・バージョンになっている。シングルで発表されたのだろうか。
 タイトルの英語は、“はかなさ、一時性”という意味で、確かに儚さを感じさせるようなアコースティック・バージョンになっている。

 続く2曲目"Harmony Korine"は、2008年のファースト・ソロ・アルバム「インサージェンツ」からで、スティーヴン・ウィルソン自身によってリマスターされている。
 ピンク・フロイドがややメタル寄りになったような雰囲気を携えていて、奥行きのある音響空間からハードに畳みかける後半の変化が素晴らしい。

 ピアノをバックに歌う"Postcard"は、2011年の「グレイス・フォー・ドラウニング」から。非常にセンチメンタルで感動的な名バラードだ。ストリングス・アレンジメントは元エッグのデイヴ・ステュワートが手掛けている。

 "Significant Other"と"Insurgentes"は、2008年のソロ・アルバムからで、これまた夢幻的で浮遊感溢れる桃源郷的な感覚に満ちている曲だ。自身のバンドのポーキュパイン・ツリーとも共通性のあることが分かると思う。

 6曲目の"The Pin Drop"は2013年のソロ・アルバム「レイヴンは歌わない」からの曲で、前半はバンド・メンバーのテオ・トラヴィスのサックスが、後半はガスリー・ゴーヴァンのギターがフィーチャーされている。

 "Happy Returns"はピンク・フロイドの"Hey You"を少しだけ明るくしたような曲で、2015年のアルバム「ハンド.キャンノット.イレイス」の実質的な意味で最後を飾っていた曲。ここでは編集されたものが収録されている。

 8曲目の"Deform to Form a Star"もまた珠玉のバラードで、テオ・トラヴィスのクラリネットとメロトロンの絡みが、初期のキング・クリムゾンを髣髴させてくれる。「グレイス・フォー・ドラウニング」からの選曲。

 次の"Happiness Ⅲ"は昨年のソロ・アルバム「4/1/2」からの曲で、メロディラインだけを聞けば、かなりポップな要素を持っている。スティーヴン・ウィルソンは意外とメロディ・メイカーだということがわかるだろう。

 ちなみにこの「4/1/2」アルバムは2015年のアルバム「ハンド.キャンノット.イレイス」と次に発表するアルバムの“つなぎ”として重要な意味を持つアルバムのようで、過去の曲の再録や今までのセッションの未発表曲が収められていた。"Happiness Ⅲ"自体は、元々2003年に作られていたようだ。

61xeuokjstl__sl1001_
 "Thank You"はカナダのシンガー・ソングライターのアラニス・モリセットの曲で、彼女の1998年のサード・アルバム「サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー」からシングル・カットされたもの。
 スティーヴン・ウィルソンは、2014年にカバー曲を集めたアルバム「カバー・ヴァージョン」を発表しているが、その中に収められていたものだ。

 11曲目の"Index"は彼の実験的な側面が発揮された曲で、プログラミングされた曲と深遠なストリングスが対照的な効果を生み出している。

 "Hand Cannot Erase"は、もちろん2015年の同名アルバムからの曲で、この曲もメロディラインが明瞭でわかりやすい。ソロ・ベスト・アルバムの中に選ばれた理由も、彼の多面的な才能が発揮されていることを示そうとしたのではないだろうか。

 "Lazarus"は、“2015レコーディング”と書かれていることからも分かるように、ポーキュパイン・ツリーの2005年のアルバム「デッドウイング」からの曲を再録したもの。バッキング・トラックを2015年3月のツアー時に録音して、オーヴァーダビングとミキシングをスタジオで加えたようだ。

 ずっと聞いていると、何となく普通の美メロ・ロック・バンドの曲のような気がしてならない。また、この曲は日本語盤の「4/1/2」にはボーナス・トラックとして収められている。

 最後の曲は"Drive Home"で、これは2013年の「レイヴンは歌わない」から選ばれている。スローな曲で、タイトルが示すような哀愁味と叙情性が抑え気味に歌われている。

 これまたバックのストリングスが美しく、アレンジの素晴らしさと後半のエフェクティヴなギター・ソロが終焉に向かっていく様は、まさに感動ものである。81y6ggymral__sl1200_
 とにかく、このアルバムは、ベスト・アルバムと侮ることなかれ、である。ただ単に良い曲を並べたのではなく、彼の才能のレンジの広さや、昔から培ってきたプログレ知識の集積がよくわかるように配慮されているようだ。

 音楽に対して求道的でストイックな姿勢を貫くスティーヴン・ウィルソンである。2015年には“キング・オブ・プロッグ・ロック”の名称を与えられている。
 そんな彼のことだから、今年の終わりまでには「4/1/2」に続くソロ・アルバムを発表するだろう。今後も彼の活動から目を離せないのである。

| コメント (2) | トラックバック (1)

2017年1月23日 (月)

師匠と弟子が語る「アンダーソン/ストルト」

弟子:あけましておめでとうございます、師匠。今回で3回目ですね。ついにメジャーになりましたね。

師匠:誰がメジャー・デビューじゃ。たまには趣を変えようというだけじゃろ。それに今までは年末じゃったが、今回は年の初めになっただけじゃ。しかももう年始の挨拶をする時期でもあるまい。最近の若い者は何も知らんな。

弟子:そんなことより、早く本題に行きましょうよ。今回はあのジョン・アンダーソンとプログレッシヴ・ロック界の異才ロイネ・ストルトのコラボですよ。これは凄い出来事ですよね。Andersonstoit
師匠:ジョンも盟友クリス・スクワイヤが亡くなって、自暴自棄になったのかもしれんな。一昨年はジャン・リュック=ポンティとアンダーソン・ポンティ・バンドを結成するわ、昨年はロイネ・ストルトとアルバムを発表するわで、もう収拾がつかんな。

弟子:何を言っているんですか、師匠。ジョンは72歳ですよ。それでもこれだけ創作意欲が溢れているのですから、精神的にはロイネと同じかもしれませんね。

師匠:お前は何も知らんな。ロイネがいくつだと思っとるんじゃ。もう60じゃぞ。昔でいえば還暦じゃ。わずか一回りしか違わんのじゃ。大して変わらんじゃろ。

弟子:ロックの歴史の中で12歳違いは、かなりのものですよ。ロイネが中学生の時は、ジョンはもう「イエス・アルバム」や「こわれもの」を発表していたんですからね。

師匠:だから何じゃい。中学生の時はそうかもしれんが、今は年齢的にも経験値でもそんなに変わらんと言いたいだけじゃ。それより、早くアルバムを紹介せんかい。

弟子:師匠がくだらないことを言うから遅くなったじゃないですか。この「インヴェンション・オヴ・ナレッジ」というアルバムは、久しぶりのジョンの力作ですよ。この高揚感、この浮遊感、圧倒的な肯定的サウンド、まさに元イエスのボーカリストという感じがしましたね。81smwfhatfl_sl1200_
師匠:わしも聞いたが、割合的にはジョンが8割、ロイネが2割といった感じじゃな。ロイネがバックに徹していて、それはそれで好感が持てるが、何もそこまで隠れんでもいいじゃろと思ったな。

弟子:いえいえ、それはどうかと思いますが…このアルバムのギターはロイネが弾いているんですよ。ノーマルな6弦&12弦ギターからラップ・スティール・ギターに、ドブロ・ギター、ポルトガル・ギターというよくわからないギターまで。
 しかも、ギターだけでなく、このアルバムのベーシック・トラックもすべてロイネが手掛けています。自宅のスタジオにあるコンピューターを使って、ベースやキーボード、ドラムを含むリズム・セクションまで作ってジョンに送ったそうです。

師匠:要するに、小難しいことは人に任せて、自分はのほほんと歌っただけじゃろ。まるで“プログレッシヴ・ロック界のラッパー”のように歌いまくっておるな。よっぽど溜まったものがあったんじゃろ。ストレス発散には良かったかもしれん。

弟子:それは違いますよ、師匠。歌詞は確かにジョンが書いていますが、それはストルトが送ってきたデモを自分のコンピューターに取り入れてアレンジを加えながら書いたわけで、ふたりとも“ロジック・プロ”というデジタル・ソフトを使っていたから互換性があったんですよ。

師匠:それにしても曲が長すぎるわ。今どき1曲目から22分を超える曲なんかありえんな。1曲目が3部形式の"Invention of Knowledge"に、2曲目が18分近い2部形式の"Knowing"、3曲目がこれまた3部形式の"Everybody Heals"で、これが13分9秒、やっと最後の曲が11分13秒の"Know..."。21世紀の現在で、こういうアナクロニズムの権化のようなソロ・アルバムに近いものを作れるのはジョンだけじゃろ。71ureuzcs4l_sl1200_

弟子:いえいえ、ジョンは最初から意図的に、こういう長い組曲形式のアルバムを作ろうとしています。本人は、リスナーを音楽的な“長い旅路”に導こうとしたと言っていますよ。それを今度はロイネが懐古趣味にならないように現代的に甦らしたんですよ。やっぱりロイネも凄いですね。

師匠:いやいや、それはジョンの病気の発露じゃな。相変わらず誇大妄想というか、自己肥大化というか、理想と現実の区分がつかんのじゃろう。ただ、それを1枚のアルバムにまとめるには手に余りすぎるので、外部の有能なミュージシャンを活用したんじゃ。
 思えば、ジョンの夢の実現のために、イエスのメンバーやヴァンゲリス、喜多郎、ジャン・リュック=ポンティなど、多くの優秀なミュージシャンが協力してきたわけじゃよ。

弟子:そこがジョンのジョンたる所以でしょうね。そうやってシンフォニックで壮大な楽曲を提供してきたわけで、それがプログレッシヴ・ロックの歴史を築いてきたんです。偉大なるプログレの伝道師と呼ばれるわけです。

師匠:誰がそう呼んどるのか知らんが、このアルバムは長いだけで、途中で眠くなってしまったわい。テンポも速くないし、「危機」や「究極」のような緊張感がもう少しほしいな。やはりジョンも年には勝てんのじゃろう。

弟子:それでもメロディー的には聞きやすく、2曲目のパート2"Chase and Harmony"なんかはもう感涙ものですよ。"Soon"の再演といってもいいかもしれませんね。

師匠:それはないじゃろ。今までのジョンのリサイクル的作品じゃ。良くいえば、ヴァンゲリスとのコラボにロック的装飾音を付け加えたようなもんじゃな。予定調和的であり、良い意味で裏切られるような展開は見られんな。ジョンのファンなら安心して聞けようが、もう少し新しい展開がほしかったな。これでは“進歩的なロック”とは言えんじゃろう。

弟子:相変わらずシビアですね。ジョンのように、もう少しポジティヴにとらえたらどうですか。ジョンは、このアルバムのテーマを“相互理解”としていて、今の世界を変えるためにはお互いに理解する手段を見つけようと呼びかけているんですよ。だから“Know”という単語が数多く使われているんです。

師匠:そこがジョンのいつもの思考回路じゃな。考えただけでは変わらんわい。まあ、呼びかけるのは結構なことじゃが、それをわかりやすく伝えんとメッセージは伝わらんぞ。今回のアルバムでは、メッセージ性は高くとも、わかりやすさという点では失格じゃな。音楽的な面では、Yes時代の方がまだわかりやすかったな。

弟子:何を言うんですか。このアルバムは久しぶりにチャートにも登場しています。英国では58位、スイスでは26位、ドイツでは18位というまずまずの結果ですね。ヨーロッパでは相変わらず人気は高いですよ。Roineanderson1
師匠:ネーム・ヴァリューだけで売れるんじゃろ。それまでの蓄積があるからな。いずれにしても21世紀の現代で、こういうダラダラとした長尺の音楽を作れるのは、いい意味でも悪い意味でも、ジョン・アンダーソンくらいかな。ロイネのトランスアトランティックの方がバンドとしてまとまっていて、構築美があるわい。

弟子:そうですかね。作ろうと思えば作れる人は、まだまだいっぱいいるとは思うのですが。でも最初に戻りますけど、72歳にして、まだ挑戦する意欲があるというのは素晴らしいと思いますけどね。ある意味、“21世紀のスキッツォイド・マン”といえるのではないでしょうか。

師匠:それはわしの言葉じゃ。お前がそれを言ってどうするんかい。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月16日 (月)

アラバマ・シェイクスのデビュー・アルバム

 昨年の話だけれど、アラバマ・シェイクスのライヴを見に行った。夜の8時開始だったので、余裕で間に合うだろうと思っていたのだが、年末のせいか、予想以上に道路事情が悪くて、途中から渋滞にあってしまった。Cnrtftiukaaqpuk

 普通は2時間も走れば到着するところを、その倍以上時間がかかってしまい、ライヴ会場に着いた時にはもうすでに始まっていたのだ。やはり日頃の行いが悪い人は、いざという大事な時にその報いが来るのだろう。“因果応報”とはよくいったものである。

 オールスタンディングのライブだったが、とにかく満員でよく見ようと思っても前にも行けないし、しかも、でかい外国の人がいっぱいいて、ステージもよく見えなかった。ドリンクバーにも行けないのだから、金返せと言いたいくらいだった。

 でも、そんな会場の熱気にこちらも感化されて、たとえ姿かたちが見えなくても、サウンドだけで十分に元が取れるステージだった。やはり本物は違うとつくづく思ったものである。

 それにしても、キャパ1000人程度のライヴハウスに、こんな大物がよく来たなあと感心してしまった。ドーム会場ではちょっと厳しいとは思うけれど、もう少し大きな市民会館やサンパレスでも十分いけたと思ったのだが、どうだろうか。

 12月の寒い時期だったが、会場内は熱気で暑苦しく、思わずコートを脱いでしまったし、時間があっという間に過ぎて行った気がした。

 今回は2度目の来日公演だったが、次回は、もう少し大きな会場でお願いしたいと思っている。Suguta01
 それで今回のライヴを見て思ったことは、彼らの音楽の根底には、ゴスペルが存在しているのではないかということだった。

 もともとアメリカ南部のアラバマ州で結成されたバンドである。リーダー?のブリタニー・ハワードは黒人だ。誰がどう見ても(どう聞いても)、ソウルフルなロック・バンドということが分かると思う。

 でも、そのソウル・ミュージックの中でも、ライヴでのお客さんとのコール&レスポンスやブリタニーのボーカルを聞いていくと、ゴスペル・ミュージックの影響が強いと考えたのである。同時に、ステージのライティングも時々観客を照らしていたし、ステージとフロアの一体感を演出するかのようだった。

 自分的には、“黒いジャニス・ジョプリン”もしくは“ロックするアレサ・フランクリン”といった感じだった。これらの言葉に、彼らの音楽が集約されているのではないだろうか。

 わずか90分程度の短いステージだったけれども、彼らの2枚のアルバムからの代表曲はほとんど演奏していたし、当然、参加したファンの反応も素晴らしくて、イントロが流れただけで大いに盛り上がっていた。

 ライヴについてはこの程度で話を締めるとして、その会場までの道中に聞いたのが、彼らのデビュー・アルバムの「ボーイズ&ガールズ」だった。

 このアルバムは2012年に発表されたもので、全米6位、全英3位を記録し、両国でゴールド・ディスクになっている。また、その年のグラミー賞の最優秀新人賞にもノミネートされた。51rzoyo9iql
 全11曲で、時間的にはわずか38分程度だ。80分近いCDのフルレンジの中で、わずか38分少々というのは、まるで60、70年代のレコードを聞いているかのようだった。意図的に狙ったものではなくて、彼らの基準以上の曲を集めたらこういう結果になっただけなのだろう。逆に、それを新鮮に感じた若者もいたのではないだろうか。

 自分はセカンド・アルバムの「サウンド&カラー」の方を先に聞いて、このブログにアップしたのだが、セカンドの方がよりソウルフルでディープな音空間だったような気がした。
 
 それに比べて、こちらのアルバムの方は、シンプルで、ポップでソウルなテイストを含んだロック・ミュージックのように感じられた。

 とにかく、このアルバムには良い曲がいっぱい詰まっている。冒頭の"Hold On"のサビの部分は、ライヴでも観衆も一体になって歌っていたし、バラードから一気に盛り上げてくれる"You Ain't Alone"、C.C.R.の曲に似ている"Hang Loose"なども素晴らしい。

 そして、特に後半の曲はどれも佳曲だろう。ギターのアルペジオが効果的なスロー・バラードのアルバム・タイトル曲"Boys&Girls"は実にソウルフルだし、続く"Be Mine"もライヴで歌われた曲だった。

 さらに続く"I Ain't the Same"も彼らのデビュー当時からライヴで歌われ続けられたものだ。この曲は骨太のロックで、サザン・ロックの影響が感じられた。途中のギター・ソロと最後のボーカルのシャウトが感動的だった。

 最後の曲"On Your Way"のテイストは、続くセカンド・アルバムに受け継がれている。以前聞いたことがあるような、それでいて斬新な感覚を備えている曲形式には、とても新人とは思えないセンスが散りばめられている。

 とにかくこのバンドは、もっともっとビッグになるだろうし、この次の来日公演時にはライヴハウスでは、入りきれないほどファンが詰めかけるだろう。

 でもやはりこのバンドには、ブリタニーのダイナミックでパワフルなボーカルと、ロックなバックの演奏が不可欠だろう。この路線を続ける限り、ますます世界中にファンは増え続けるに違いない。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月 9日 (月)

SWストーリー:ローグ・ワン

 最近見た映画は、「スター・ウォーズ・シリーズ:ローグ・ワン」というスピン・オフ的な映画だった。

 これは前宣伝が有名なので、多くの人は知っていると思うけれど、スター・ウォーズの「エピソード3」と「エピソード4」をつなぐ「エピソード3.5」的な作品だった。Lr101
 要するに、帝国軍が最終兵器であるデス・スターの開発に成功し、それを使って銀河系を征服しようとするのだが、そのデス・スターの弱点が記された設計図がどういう経緯で作られ、それを反乱軍がどのようにして入手することができたのかが描かれていたのだ。

 確かに面白かったのだが、今までのSWシリーズと違っている点がいくつかあった。例えば、ジョン・ウィリアムスによって作曲されたあの有名なテーマ曲は、映画本編では使用されていなかった。

 同様に、映画の冒頭シーンで登場していた英字のオープニング・ロールも、今回は使用されていなかった。やはり、シリーズものとは違いますよと区別しているようで、ある意味、強いメッセージを発しているかのようだった。

 また、戦闘シーンが非常にリアルだった。後半に主人公のグループが相手の基地に侵入し、ゲリラ戦を展開していくあたりは、何となく現在の中東の紛争を想起させるものがあった。Rogueonecast640x427
 映画を見ながら、現在でもシリアやイラクでは、様々な勢力がお互いに戦闘をし合っているのだろうと思ったし、映画のような戦術で相手と戦っているのだろうとも考えてしまった。

 戦時中の自己犠牲は、太平洋戦争中の日本軍の代名詞だとばかり思っていたが、実際には、味方を助けるために自分を犠牲にすることは、戦争時では当たり前のことだったのかもしれない。
 アメリカ映画では、例えば「エイリアン」シリーズでも見かけたし、実話に基づいた戦争映画なら(例えば「大脱走」とか「プライベート・ライアン」とか)よく挿入されているエピソードだった。

 この「ローグ・ワン」でもそういうシーンがあったが、自分がその立場になったときには、果たしてそういう行為が取れるかどうか、よくわからない。ただ、現実的にそういう状況にはならないように、考えて行動しなければならないと思っている。

 また映画では、基本的にはブラスター銃?を使った戦闘シーンが多いし、ストームトルーパーが手榴弾みたいなものを使用したときは、白いストームトルーパーがまさにアメリカ軍に見えてしまった。

 それに、デス・スターから攻撃された惑星のシーンも非常にリアルだった。確かにCGで作成されているとはいえ、実際に核攻撃をされたり、彗星が地球にぶつかったときには、こういう様子が展開されていくのだろう。Af38123f341247e0b1947a114f59527a
 ところでこの映画には黒いストームトルーパーも登場していたのだが、あれは何だったのだろうか。20297_main01
 SWシリーズの「エピソード4」では、R2-D2にインストールされたデス・スターの設計図が描写されているが、その作成のいきさつが分かるという点では面白かった。

 最後に、「エピソード4」に出てきたレイア姫役のキャリー・フィッシャーとターキン提督の
ピーター・カッシングが出演していたことには、とてもビックリしてしまった。

 でもよく考えたら、ピーターは1994年に81歳で、キャリーの方は昨年の12月27日に60歳で亡くなっていたから、ピーターの方は絶対に出演は不可能だし、キャリーの方もいくら若作りをしたとはいえ、かなり難があったはずだ。Img_1
 あとでよく調べたら、両方ともよく似た俳優を探し出して出演させ、それに多少のCGを合成させていたらしい。だからよく似ていたのだろう。これはこれでいいと思うのだが、これからは、こういう手法がポピュラーになるのかもしれない。20160704232804_2
 いずれにしても、スピン・オフとはいえそれなりの力作になっていることは間違いない。そして、ルーク・スカイウォーカーやハン・ソロなどのメジャーなキャラクターだけに光が当てられるのではなく、革命のような大業を遂行するためには、こういう名もなき人々の行動が必要なのだということを訴えているようだった。

 最後に、こういう戦争や戦闘シーンは、映画や小説などの仮想空間の中だけで、起きてほしいと切に願っているのである。

| コメント (0) | トラックバック (0)

2017年1月 2日 (月)

今年は酉年

 あけましておめでとうございます。2017年の今年の3月で、この「ろくろくロック夜話」も10年目に入ります。10年目を迎えたこの「ろくろくロック夜話」を、今年もよろしくお願いいたします。Detail_image

 というわけで、今年は「酉年」である。この場合の“酉”というのは、ニワトリのことを指すようで、空飛ぶ鳥のすべてを指すというわけではないようだ。(もちろん空を飛ばない鳥もその中に含まれることはいうまでもない)

 それはともかくとして、今年も例年通りに“酉”にちなんだアルバム・ジャケットを集めようと思ったのだが、額面通りに受け止めれば、ニワトリのアルバム・ジャケットということになる。

 ところがである。“鳥”のアルバム・ジャケットは数多くあるのだが、“酉”のアルバム・ジャケットとなると、なかなか見つけるのが困難なのであった。

 例えば“鳥”ならば、ヴァン・モリソンの「アヴァロン・サンセット」の白鳥やフリートウッド・マックの「聖なる鳥」のアホウドリ、ストラングラーズの「レイヴン」の中のカラス、プロコル・ハルムの後期の傑作アルバム「異国の鳥と果物(幻想)」のオウムなど枚挙に暇がない。51x43cdybll
 そういえば、「アヴァロン・サンセット」で思い出したけど、ロキシー・ミュージックの「アヴロン」にも鳥が写っていたし、フリートウッド・マックはアメリカに活動の場を移した後も、アルバム・ジャケットにペンギンや鳥を使用していた。716dnb6fozl__sl1050_
 今のはブリティッシュ・ロックだったが、アメリカン・ロックではバンド名からしてイーグルスの数枚のアルバムや、バッファロー・スプリングフィールドのセカンド・アルバム、ニール・ヤングの「ズマ」、スティーヴィー・ニックスの「ベラ・ドンナ」、AORの代表選手だったクリストファー・クロスのアルバムなど、これまた数限りない。

 クリストファー・クロスなどは、デビュー・アルバムやセカンド・アルバムにはフラミンゴのイラストが使われていて、本人の姿が見られなかったので、どんな顔かたちをしているのか興味津々だった。51k5gpuipol
 ハード・ロックの分野では、カナダのバンド、ラッシュのセカンド・アルバム「夜間飛行」、イギリスのバッジーの「イン・フォー・ザ・キル」、ジューダス・プリーストの「復讐の叫び」など、いくつかあるようだ。ちなみに、バッジーは“セキセインコ”という意味で、彼らのアルバムには必ずセキセインコ(のようなもの)が描かれている。614dvwg0rkl
 また、ジューダス・プリーストの「復讐の叫び」のジャケットでは、動物の鳥ではなくて、金属製のロボット的な鳥が描かれていた。まさに、メタル・ゴッドの乗り物に相応しいイラストであろう。91vdbajzv2l__sl1500_
 プログレッシヴ・ロックの分野では、イエスの1980年のライヴ・アルバム「イエス・ショウズ」、E,L&Pの1970年のデビュー・アルバム、第2のフォーカスと言われたオランダのトレースの1975年のセカンド・アルバム「鳥人王国」、同年のキャメルの「白雁(スノー・グース)」、エイジアの1983年のセカンド・アルバム「アルファ」、ジェスロ・タルのリーダーであるイアン・アンダーソンが2000年に発表したソロ・アルバム「ザ・シークレット・ラングエッジ・オブ・バーズ」、新しいところではデヴィッド・ギルモアの2006年のソロ・アルバム「オン・アン・アイランド」、2015年の「ラトル・ザット・ロック」など、これまた数えきれないほどだ。61ftjlznsul
 面白いところでは、ジェネシスの1977年のアルバム「静寂の嵐」の裏ジャケットの鳥が飛び立っているもので、表ジャケットに描かれていた大きな木に見えたのは、実は枯れ木に鳥が止まっているというものだった。「静寂の嵐」によって、飛び去って行ったのだろう。Cb243b8fc0a945d1bf6a2440203eba3c_2
 というわけで、“鳥”のジャケットはいっぱいあっても、“酉”のアルバム・ジャケットを見つけるのは難しかった。

 それで最後は、何とかかろうじて見つけたリトル・フィートの再結成後のアルバム「ルースター・ラグ」を紹介しようと思う。81ra0qfjq3l__sl1077_
 このアルバムは2012年に発表されていて、今のところ彼らの最新アルバムである。ローウェル・ジョージやリッチー・ヘイワードは亡くなったけれど、キーボード・プレイヤーのビル・ペインやギタリストのポール・バレアを中心に、今も活動を続けている。

 あとは番外編として、エッグのアルバムや日本のものではフライド・エッグの「ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン」などが挙げられるだろう。

 エッグのアルバムは1970年に発表されたもので、彼らのファースト・アルバムだった。もともとはスティーヴ・ヒレッジをギタリストに、デイヴ・スチュワートをキーボード・プレイヤーとして活動していたバンド、ユリエルを母体としていたが、スティーヴ・ヒレッジが大学進学のために脱退したため、キーボードを中心とした3人組ユニットとして活動を始めたようだ。61kkegouxtl__sl1500_
 彼らは、1972年に一旦解散したが、74年には再結成してサード・アルバムを発表している。

 日本を代表するスーパー・バンドだったフライド・エッグの1972年のアルバム「ドクター・シーゲルのフライド・エッグ・マシーン」について一言いうと、彼らは、ギター、ベース、ドラムスのスリー・ピース・バンドだった。1971年に結成され、73年には惜しくも解散してしまった。

 ギターは成毛滋、ベースには高中正義、ドラムスは角田ヒロだった。当時は四人囃子と並び称されるくらいの日本人離れしたテクニカルでプログレッシヴなバンドだったが、残念ながら商業的には成功しなかった。

 今でこそ、高中正義はギタリストとして成功しているし、角田ヒロは“つのだ☆ひろ”として活躍している。彼は、一時ドゥービー・ブラザーズに誘われたほどの優れたドラマーだった。個人的には日本のジョン・ボーナムだと思っている。

 成毛滋は、ブリジストン株式会社の創業者の孫にあたり、鳩山威一郎の甥で鳩山由紀夫・邦夫兄弟とは従兄弟という毛並みの良さだった。
 高校生の頃から音楽活動を始め、元々素質があったのだろう、左手でギター、右手でキーボードを演奏するなど、天才的な才能を持っていたようだ。

 彼はまた、ピンク・フロイド来日時の箱根アフロディーテのライヴにも前座として出演していたが、そのときに高中正義を臨時ベーシストとしてバンドメンバーにして演奏した。それがフライド・エッグの結成につながったという。51bdrnlns0l
 成毛は、日本のロック黎明期を支えた偉大なる天才ミュージシャンだったが、惜しいことに2007年に大腸がんで亡くなってしまった。まだ60歳という若さだった。もっと評価されてもおかしくないミュージシャン(バンド)だったと思っている。

 “酉”には、“とりこむ”という意味があり、商売繁盛のシンボルにもなっているし、土佐の尾長鳥は長寿の象徴とも言われ、落ちた長い尾を縁起物として大切にするという習慣があるようだ。

 毎年思うことだけど、今年も景気が良くなり、ロックを楽しめるような争いごとのない平和な世の中になってほしいと願っている。

| コメント (4) | トラックバック (0)

« 2016年12月 | トップページ | 2017年2月 »