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2017年2月27日 (月)

サーカ(2)

 Yosoというバンドは長続きしなかったが、それでも3年間近く活動し、1枚だけアルバムを残している。「エレメンツ」という名前のアルバムで、これは今でもアマゾン等で手に入れることができる。

 基本的にYosoは、2009年当時のサーカにボビー・キンボールが参加したもので、専任のボーカリストが入ったおかげで、ビリーは演奏に集中できるようになり、バンドとしてもまとまっていった。Yoso_band

 当時の彼らのライヴでは、TOTOの"Rosanna"や"Hold the Line"、イエスの"Owner of A Lonely Heart"や"Roundabout"、メドレー形式での"Yours is No Disgrace"や"Heart of the Sunrise"などもYosoのオリジナル曲と一緒に演奏されていて、それらはライヴ・アルバムとしても発表されていたようだ。自分は聞いていないので、近いうちに購入しようと思っている。

 ボビーのドラッグ癖や酒癖の悪さは昔から定評があったようで、だいたいあんなに売れていたTOTOを辞めたのも、辞めたというよりは首になったといった方が正しかった。

 結局、2011年にはサーカの再活動を始めたのだが、その時はギタリストとドラマーが不在だったので、ビリーがキーボードを除くすべての楽器を演奏した。そうしてつくりあげたのがバンドとして3枚目の「アンド・ソウ・オン」だった。

 このアルバムのジャケットには写真が掲載されていたが、それにはビリー・シャーウッドとトニー・ケイしか写っていなかった。要するに、バンドというよりは、2人のプロジェクトになっていったようだ。

 アルバムは全9曲で、1曲目のアルバム・タイトル曲からイエスっぽい雰囲気を漂わせている。61a62um7tl
 こうやってイエスの二番煎じ的なバンドの曲を聞いていると、逆に本家のイエスがどういう音楽性を持っているのかがよくわかるというものだ。

 結局、イエスの特徴は
①緩急つけた複雑でドラマティックな曲展開
②プログレにはおよそ似つかわしくないハーモニー・コーラス
③聞かせどころを押さえたそれぞれの楽器のソロ・プレイ
④アタックの効いたハードなベース音と硬質なドラム・サウンド
⑤効果的なアコースティック&スティール・ギターの使用
⑥多種多彩なキーボードの使用
⑦複雑な曲の中にも分かりやすいメロディー・ラインを含む
 等だろう。
 
 このアルバムでもビリーの演奏するベース・ギターはクリス・スクワイヤの演奏にそっくりだし、1曲目は9分弱、7曲目のややスローなイントロから徐々に盛り上がっていく曲"True Progress"も7分弱もある。途中でアコースティック・パートを挿入するあたりも本家イエスを踏襲しているようだ。

 3曲目の"'Til We Get There"では、アコースティック・ギターが導入されて牧歌的なイントロからやがてアップテンポになり、モダンな雰囲気に変わっている。こういう曲をイエス・ファンは待っているのではないだろうか。曲時間も6分35秒あった。

 4曲目の"Notorious"も素朴で分かりやすいメロディーラインを持っていて、清涼剤的な役割を持っている。こういう曲が収められている点でも、サーカは1st、2ndアルバムよりは進化してきたといえるだろう。

 サーカ的ミディアム・ハード・ロックが"Half Way Home"だ。ここではビリーの弾くエレクトリック・ギターが炸裂している。ただところどころにコーラスがついている点が、純粋な意味でのハード・ロックとは異なってくる。この辺がイエス・ファミリーのいいところではないだろうか。

 "In My Sky"はアコースティック・ギター弾き語りのバラードで、ジョン・アンダーソンが歌ったらもっと印象的になるだろうと思ってしまった。

 このサーカの弱点は3つあって、一つはボーカルの弱さだろう。せっかくの申し分のない曲が印象薄になっているのも、ボーカルが弱いからだ。そういう意味では、専任のボーカリストを入れたYosoもアイデアとしては悪くなかったと思う。

 ただ、ボビー・キンボールではポップネスさが表に出てしまって、プログレ色が薄くなってしまうと思うのだがどうだろうか。それを確かめるためにも、Yosoのアルバムは手に入れた方がいいと思っている。

 2つ目は、トニー・ケイのソロ・プレイだ。基本的にこの人はオルガニストなので、ハモンド・オルガンのソロ・プレイは素晴らしいが、それ以外のソロはほとんど稀である。このアルバムの最後の曲"Life's Offering"は10分以上もあるのだが、それでもオルガンを弾いていた。イエスでなぜリック・ウェイクマンが重宝されているかがよくわかると思う。3334
 ところで、このアルバムには「オーヴァーフロウ」というミニ・アルバム、といっても7曲40分以上もあるものが付属していて、2枚組になっていた。
 これは彼らの1stと2ndアルバムのアウトテイク集のようだ。それにしてもよくできていて、オリジナル・アルバムに収録されなかったのが不思議なくらいだった。

 このアルバムの曲は4分、5分台の曲が多いことから、どちらかというとポップな傾向が強かった。おそらくは曲の傾向と時間的な問題から、オリジナル・アルバムには収録されなかったのだろう。

 アルバムを発表するごとに、徐々にイエス色が薄れていき、ポップで耳に残りやすいメロディーを含む曲が増えていった。だからこの3枚目のアルバム「アンド・ソウ・オン」はなかなかの良盤だと思っている。

 3枚目のアルバムから約5年後、彼らは「ヴァレー・オブ・ザ・ウィンドミル~風車の谷の物語」というアルバムを発表した。
 このアルバムでは、前回までのポップな要素をやや削ぎ落として、プログレッシヴ・ロックの王道的なサウンドに回帰していた。

 全4曲(国内盤ではボーナス・トラック付きの5曲)で、最も短い曲で7分32秒、最も長い曲で18分43秒だった。4曲合計で50分20秒である。本家のイエスを凌ぐ容量だ。さすがビリー&トニーである。
 しかもこのアルバムでは、バンド編成になっていて、ベーシストとドラマーが新たにクレジットされていた。

 このアルバムでも、さすがにトニーは他のキーボードも演奏しているようだが、基本はオルガンを弾いている。また、如何せんボーカルの線が弱いのもネックのままだった。クリス・レインボウのような専任ボーカリストを入れればいいのに、といつも思ってしまう。

 それから彼らの弱点の3つ目を言い忘れていたけれども、それはギター・ソロが目立たない点である。長厚重大な曲の中に埋もれてしまっていて、せっかくのギター・ソロが目立たないのである。

 せめてソロ・プレイの時にはもう少しバックにおとなしくしてもらうとか、ギターにエフェクトを効かせるとか、あるいは際立って速いパッセージを弾くとか、何か工夫がほしいのだ。51emnfwijml

 このアルバムではボーカリストではなく、リック・ティアーニーという専任ベーシストを加入させていて、ビリーはギターにまわっている。だからギター・ソロはそこかしこに用意されているのだが、アルバムを通して聞くと印象に残らないのである。

 ある意味、器用貧乏なのかもしれない。ギターもベースもキーボードやドラムまで、何でも一通りこなすことができて、しかもレベルも高いのだが、なぜか記憶に残るようなフレーズが少ないのである。自分の感性が鈍ってきたせいだろうか。

 ちなみに、このアルバムのドラムはスコット・コナーが担当していた。彼は現在56歳で、歌も歌えるという。Yosoからの付き合いのようだ。

 確かに良いアルバムには違いないと思うのだが、繰り返し聞きたくなるかというと、ちょっとどうかなあと思ってしまう。
 自分にとってはトランスアトランティックやムーン・サファリ、スティーヴン・ウィルソンのアルバムの方に手が出てしまうのである。

 だから、もっとメジャーを目指すのであれば、
①専任ボーカリストを加入させる
②トニー・ケイにピアノやメロトロンも使用させる
③印象的なギターのフレーズを考える
 等を工夫すればいいと思っている。

 あとは曲もコンパクトにまとめればもっといいかもしれない。90125イエスで学んだことをビリーにはもっと発揮してもらいたいと願っている。そうすれば、このバンドは単なるコピー風なバンドから、オリジナリティ溢れるバンドへと変身していくだろう。

 本家のイエスは、クリスが亡くなり、アランも病気で以前のようには叩けない状況だ。まさに“スティーヴ・ハウズ・イエス”になってしまった。これをイエスと呼んでいいのかどうなのか、わからない。むしろサーカの方がよりイエスらしいだろう。

 ファンは、イエスの遺伝子を正統に受け継いでくれるバンドを欲している。ビリーはまだ51歳だ。イエスのみならず、願わくば次世代のプログレ界の牽引をしてほしいものである。


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