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2017年2月20日 (月)

サーカ(1)

 昨年の話であるが、何かいいアルバムはないかと探していたら、サーカというバンドに出会った。ちょうどジョン・アンダーソンとロイネ・ストルトとのアルバムが発表された後の頃だった。

 このサーカというバンドに驚いたのには、理由がある。何しろオリジナル・メンバーの4人のうち3人が元イエスに所属していたし、残りの一人もイエスのアルバムで演奏していたのである。正確に言うと、次のようなメンバーで構成されていた。

 ベース   …ビリー・シャーウッド
 ドラムス  …アラン・ホワイト
 キーボード…トニー・ケイ
 ギター    …ジミー・ハーン

 見てわかるように、トニー・ケイはイエスのオリジナル・メンバーだったし、アラン・ホワイトも2代目ドラマーとして70年代から活躍している。
 ビリーは1996年から2000年までイエスに在籍して、「オープン・ユア・アイズ」や「ザ・ラダー」制作に携わっていた。

 ギタリストのジミーもイエスの1991年のアルバム「結晶」にサポート・ミュージシャンとして参加していたし、クリス・スクワイアとビリー・シャーウッドのアルバムにもクレジットされていた。要するに、みんな“イエス・ファミリー”の一員なのである。Circa_portrait
 トニー・ケイは1994年のアルバム「トーク」に参加はしたものの、ミュージック・ビジネスに興味を失ったようで、その後は、一時、引退生活を送っていた。
 ところがピンク・フロイドのトリビュート・アルバムを制作するときにトニー・ケイにもお声がかかり、ビリー・シャーウッドと再会して、彼らはバンド結成に至ったのである。

 彼らは2006年末に正式にバンドとして活動を始め、デビュー・アルバムは翌年の1月からビリーの自宅で録音が始まり、その年の9月には発表された。
 全9曲で、一聴してわかるように、イエスのコピー・バンドといっていいようなサウンドで固められている。61oqkidr9fl
 ビリーのベース・プレイは、クリス・スクワイアのそれといっていいほど酷似しているし、アランのドラミングもまだまだ現役でも十分通じるような(今となっては考えられない程)溌溂とした切れ味のよい演奏を披露している。当時57歳だったから、まだまだ叩けたのだろう。

 イエスといってもその活動歴は50年近くなるので、彼らのサウンドといっても、その時期によって多少ニュアンスが違ってくる。
 このサーカの場合は、90125イエスにやや近い。ちょっとモダンでコンパクトな雰囲気を携えていて、それぞれのソロ・テクニックもやや控えめである。

 1曲目の"Cut the Ties"などを聞くと、1971年の3枚目のアルバムである「イエス・アルバム」の"Yours is No Disgrace"によく似たギター・フレーズやメロディが飛び出してきて、思わずニンマリしてしまった。

 また、2曲目の"Don't Let Go"と8曲目の"Look Inside"の曲のクレジットには、トレヴァー・ラビンの名前も見られる。おそらくは、90125イエスの時に作った曲群のアウトテイクではないだろうか。

 両曲ともゆったりとした曲調で、そんなに耳に残るようなメロディや、印象に残る構築美を誇るものではない。やはり当時の90125イエスの公式アルバムには収録されなかった理由がありそうな気がした。

 個人的に気になったのは、最後の曲"Brotherhood of Man"だ。この曲だけは、このアルバムの中で11分以上もあり、組曲のような形式になっていた。ただ、これも残念なことには、全体的には穏やかな曲に仕上げられていることで、最初の2分程度はアップテンポになっていて、これでグイグイ押していくと思ったら、やがてまたスローダウンしていってしまった。

 往年のイエスなら、ここでギター・ソロやピアノ、キーボード・ソロを織り交えて展開していくのであるが、ここではそうなっていない。イエス・ファンとしてはちょっと物足らないのである。

 その後、イエス本体が活動を再開したため、アラン・ホワイトはそちらの方に戻ってしまった。
 ドラマーが不在になったために、ビリーは80年代末にロサンジェルスで結成したバンド、ワールド・トレイドで一緒に活動していたジェイ・シェリンに声をかけてバンドに誘った。彼はまた、ギター担当のジミー・ハーンともロジックというバンドで活動していたので、サーカにとっては気心が知れたミュージシャンだったようだ。

 彼らは2008年から曲作りを始め、翌年にはセカンド・アルバム「HQ」を発表した。デビュー・アルバムはイエスというバンドのコピー程度のものだったが、このアルバムから徐々に彼らのオリジナリティーが芽生えてくる。61sufxiyqbl

 何しろ1曲目の"If It's Not Too Late"から10分50秒もある大作が用意されている。複雑な構成を持つこの曲は、4人のチームワークの結果から生み出されたというべきものだろう。

 2曲目はギタリスト、ジミー・ハーンによるアコースティック・ギターのインストゥルメンタル曲で、1分18秒と短い。ただ、この曲においてはテクニック的には見るべきものはなく、トレヴァー・ラビンの方が100倍は上手に聞こえてきそうだ。

 ただ、本人の名誉のために言っておくが、ジミー自体は非常に優秀なギタリストであり、テクニック的にも決して劣っているわけではない。ヴァンゲリスや日本人の喜多郎とも交流があり、最近では映画のスコアも手掛けているほどだ。
 あくまでもこの"Haun Solo"という曲においては、彼のテクニックが十分発揮されたわけではないと思っているだけである。

 また、5曲目のインストゥルメンタル曲"Set to Play"は1分49秒と短いものの、白熱したインタープレイになっていた。個人的にはこの曲をもう少し膨らませて、完全な独立した曲として扱ってほしかったと思っているのだが、でも、次の曲"Ever Changing World"とつながっていて、そういう意味では、よく考えられていると思った。

 その"Ever Changing World"はアップテンポで、ロック的なダイナミズムに溢れている。こういう曲をもっとやると、若者にも受けるのではないかと思ったりもした。

 3曲目の"False Start"の3分過ぎでは、1974年のアルバム「リレイヤー」の3曲目"To Be Over"の中に出てくるフレーズによく似たメロディ・ラインを聞くことができて、この辺はご愛嬌というか、昔のファンなら泣いて喜びそうなところだと思う。

 個人的に好きなのは8曲目の"Twist of Fate"で、このスリリングな曲展開や途中の爆発するギター・ソロなどは、とても魅力的なのである。こういう傾向の曲がもう1,2曲あれば、もっと話題になって売れたのではないだろうか。

 最後の曲"Remember Along The Way"もドラマティックな曲で、12分36秒もあった。さすがにこういう長い曲になると、ギター・ソロあり、キーボード・ソロあり、果てはアコースティックな部分やハードな部分も盛り込まれて、興味深く聞くことができた。途中のフルート・ソロはクレジットがないところを見ると、キーボードで出しているのかもしれない。

 8分過ぎにはギターとキーボードのソロを聞くことができるのだが、相互に掛け合うかと思ったら、すぐに終わってしまった。
 
 21世紀の時代には、昔のような重厚長大な楽曲は似合わないのかもしれないが、ファンとしてはもう少し引っ張ってほしかったと思っている。そうはいってもエンディングは非常に盛り上げられていて、なかなかのものであった。 

 セカンド・アルバムは、全体的にはデビュー・アルバムよりは各曲の構成が複雑になり、時間が長くなっている。そういう点では努力の跡がうかがえるだろう。

 彼らはアルバム発表後、ツアーを行ってプロモーションを行ったが、話題にはなったものの、商業的には成功しなかった。
 ただ、面白いことに、元TOTOのボーカリストであるボビー・キンボールと合体してYOSOというプロジェクトを始め、2010年にはアルバムを発表している。

 YOSOとは“Yes”と“TOTO”が合体してできたネーミングだった。彼らはアルバム発表後もツアーを行ったのだが、ボビー・キンボールはアルコール中毒だったために、途中でドロップアウトしてしまい、結局、バンドは2011年に解散してしまった。

 それでビリー・シャーウッドとトニー・ケイは、サーカに戻って活動を再開したのだが、ジミー・ハーンとジェイ・シェリンは自身の活動が忙しくなってしまい、サーカには加わらなかったのである。(To Be Continued...)


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