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2017年4月17日 (月)

キングス・オブ・レオン

 キングス・オブ・レオンは、アメリカのテネシー州ナッシュビル出身のバンドである。デビューしてもう17年くらいなるバンドで、ある意味、ベテランの域に近づきつつある中堅バンドだろう。Bb22feakingsofleona592016billboard1
 自分が彼らのことを知ったのは、2008年のアルバム「オンリー・バイ・ザ・ナイト」によってだった。このアルバムからシングル・カットされた"Sex on Fire"が、タイトル通りになかなか刺激的だったからだ。

 それまで彼らの名前だけは知っていたのだが、わざわざアルバムを買ってまで聞こうとは思わなかった。
 21世紀のアメリカン・ロックのバンドは、1970年代のハード・ロックとは違って、グランジ・ロックを経験しているせいか、ギターの露出が減り、歌ものというか、楽曲全体で勝負してくるような気がした。

 いわゆるオルタナティヴ・ロックなのだろうが、リフ主体であっても70年代ではメロディアスな要素が含まれていた。
 これが2000年代になると、ヒップホップの影響だろうか、もう少しリズミックになってきたのだ。だから若者にはその時のトレンドを代表しているように聞こえるのだろうが、私のような老人になってしまうと、ちょっとついていけないのであった。

 ところが、キングス・オブ・レオンは、デビュー当時からアメリカ南部のブルーズやサザン・ロックの影響を受けたような音楽をやっていて、昔を知る者や評論家にとっては、まさに感涙にむせぶような、そんな感情移入しやすいバンドだったのである。

 たぶんナッシュビルという土地柄もあっただろうし、父親が敬虔なペンテコステ派のクリスチャンで、説教師という立場からアメリカ南部を転々として回ったことも影響したようだ。

 このペンテコステ派はプロテスタントに分類されるようだが、讃美歌の多くはペンテコステ派の信者等によって書かれていて、音楽とペンテコステ派は切っても切り離せない関係があると言われている。

 日本のシンガー・ソングライターである小坂 忠も、このペンテコステ派の牧師で、多くの讃美歌等を手掛けている。
 ちなみに、小坂 忠は、細野晴臣、柳田ヒロ等と“エイプリル・フール”というバンドを結成したり、NHKの“おかあさんといっしょ”のテーマソングも担当していた。今ではマイナーな存在かもしれないけれども、70年代はかなり高名なミュージシャンだったのだ。

 話を元に戻すと、父親がそういう立場だったので、子どもたちもその影響を受けて育っていった。そう、キングス・オブ・レオンは、兄弟バンドだったのである。メンバーは以下の通りだ。
ケイレヴ・フォロウィル…ボーカル&ギター
マシュー・フォロウィル…ギター
ジャレッド・フォロウィル…ベース・ギター
ネイサン・フォロウィル…ドラムス

 フォロウィル・ファミリーという家内工業的音楽活動を行っていたのが、キングス・オブ・レオンだった。この内のケレイヴ、ジャレッド、ネイサンの3人が兄弟で、それぞれ次男、三男、長男にあたり、ギター担当のマシューだけが従兄弟にあたる。

 というわけで、このファミリー・バンドは、父親とともに南部を転々としながら音楽体験を重ねていった。
 一口に南部といってもその土地は広大で、雰囲気も場所ごとによってかなり違うようだ。いわゆる土地柄というものだろう。

 父親は讃美歌を歌いながら、その子どもたちはそれを通して音楽に触れ、その土地からブルーズやサザン・ロック、ゴスペルにカントリーと様々な音楽を吸収し、消化していった。

 1997年に父親は説教師を辞め、両親は離婚した。その後、ネイサンとクレイヴがナッシュビルに引っ越した時、シンガー・ソングライターのアンジェロ・ペトラグリアと運命的な出会いを果たすのである。
 アンジェロは、彼ら兄弟に作曲の仕方やストーンズやクラッシュなどのブリティッシュ・ロックの素晴らしさを伝授した。

 1999年にキングス・オブ・レオンが結成された後も、アンジェロは様々な形で彼らにバンドとしての在り方やレコーディング方法などのアドバイスを与えた。結局、彼らのアルバムの共同プロデューサーとしても関わるようになったし、キーボード・プレイヤーとしてもアルバムに参加するようになった。

 自分が聞いた彼らのアルバム「オンリー・バイ・ザ・ナイト」は、初期のインディー的な要素は全くなくなり、スタジアム級のバンドとして成長した姿を見せてくれている。
 これも彼らがデビュー以来、年間200本以上のライヴ活動を地道に行ってきたからだろう。71xmohlbnrl__sl1500_ 矢沢永吉も言っていたけれど、アメリカは本当に広い。今はネットで動画なども簡単に見ることができる時代だが、やはり動画と本物のライヴは違うし、PVなどの動画は如何様にも加工することもできるが、ライヴは一発勝負である。やはり永続した人気を保つにはライヴ活動を重ねていく外はないのだろう。

 とにかく、この「オンリー・バイ・ザ・ナイト」は、イギリス、アイルランド、オーストラリアのアルバム・チャートでは初登場1位を記録したし、アメリカでも初登場5位になり、最終的には250万枚以上のダブル・プラチナ・ディスクに認定された。

 シングル・カットされた上記の曲も、イギリスではシングル・チャート1位に輝いているし、アメリカ以上にイギリスでは彼らを歓迎する空気が満ちているようだった。

 事実、2009年に入っても彼らのアルバムの人気は衰えず、アルバム・チャートの首位に2回も返り咲いているし、発売から40週以上たってもトップ20位内外を上下し続けていた。
 そして、レディング・フェスティバルや、英国最大のグラストンベリーでも2008年にはトリを務めていた。

 70年代のような印象的なギター・ソロなどはないのだが、メロディーがしっかりしているし、それをサザン・ロック風の豪快さが包んでいるのだ。だから、昔を知る人には郷愁みたいなものを感じるだろうし、若い人にとっては、ヒップホップでもないし、ダンス系でもないし、それが新鮮に感じるのだろう。

 ただ、自分にとっては、そんなにフェイヴァレットなバンドにはならなかった。理由は、新鮮なんだけれども、サザン・ロックやスワンプ・ロックを聞くのならオールマン・ブラザーズ・バンドやレーナード・スキナード、38スペシャル、個人ならレオン・ラッセルなど優れたバンドやミュージシャンの音楽を聞けばいいわけだし、歴史に残るような名盤とは思えなかったからだ。

 そんなこんなで、約8年がたった。その間に、彼らは3枚のアルバムを発表している。その3枚目のアルバムが、昨年発表された「ウォールズ」だった。61kpq3emml__sl1500_ このアルバムは、英米のアルバム・チャートで1位を獲得した。もともと彼らはイギリスでは人気が高かったので、前作や前々作もチャートではNo.1を獲得している。
 ところが、何故か母国のアメリカでは、それまで1位を取ったことがなくて、あの「オンリー・バイ・ザ・ナイト」でも4位どまりだった。だから、これは彼らにとっての初めてのNo.1アルバムになったのである。

 なぜ首位を取ったのかというと、一言でいえば、“ポップ化”である。ポップ化といってもいきなりミーハー化したり、大衆に迎合したりしたわけではない。非常に聞きやすくなっただけである。

 ただ、それでも“21世紀のサザン・ロック”とまでいわれ、その“骨太さ”が評論家たちからも好意的に受け入れられていた彼らだったのに、ここまで売れ線を狙ってもいいのだろうかと思ったりもしたのだが、これは彼らがデビュー当時に立ち返ってアルバム制作を進めたからだと言われている。

 要するに、原点に戻って自分たちを見つめ、志向する音楽を定めたということだろう。それがいい意味での“大衆化路線”につながったに違いない。

 それにアルバムの中の楽曲もロック系とバラード系とバランスよく収められていて、バラード系の曲の"Muchacho"や"Walls"などは、まるでブルース・スプリングスティーンの楽曲に似ていて、感動的だった。

 逆に、シングル・カットされた"Waste A Moment"などはノリノリのロックだし、"Find Me"はヒリヒリさせる焦燥感が漂っている。
 一方では、"Over"のように大陸的な広大さを感じさせてくれる曲もあれば、"Eyes On You"のようにチープ・トリックのようなポップ・ロック調の曲も収められている。

 もちろん、デビュー時のオルタナティヴの匂いがプンプンする"Conversation Piece"やダンサンブルな香りのする"Around the World"などもあって、一筋縄ではいかないのだ。

 こういうバラエティさに富んでいるところが、ファン層やアルバム購買層の拡大につながったのだろう。Rskingsofleoncf3d315315c544dc8f86d8
 面白いことに、彼らはアルバムのタイトルや曲名に5文字以上は使用しないという暗黙のルールがあるようで、今までのどのアルバム・タイトルや、その中の曲名で5文字以上のものはない。

 このアルバムも元のタイトルは“We Are Like Love Songs”というものだったが、これでは5文字になってしまうので、それらの語の最初の文字をつなげて“Walls”と名付けている。彼らなりのこだわりというものだろう。

 ともかく、これで本国アメリカでもボン・ジョヴィのようなメジャー級になったようだ。さらに上を目指して、U2やレッチリのようになるかどうかは、今後の彼らの活躍次第である。今のように多くのライヴ活動を行っていけば、決して夢物語ではないだろう。


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コメント

Kings of Leonは、まだまだ新人バンドとのイメージがあったので、もう17年にもなるのかと、まずそこで驚いてしまいました。笑
00年代のThe Strokesを筆頭とするガレージロック・リヴァイヴァルで、登場したのでそれくらいになるのですね。
当時は本国より、UKで先に人気が出たと記憶しています。個人的にも、US勢の中ではUKっぽい音を出していると感じ、好みでした。
しかし、4作目のOnly By The Nightを最後に、パッタリと琴線に触れなくなってしまいました。
彼らの出身や音楽的ルーツを考えると、それ以降が本来の姿なのかなとも思い、少し複雑な気持ちです。笑

投稿: ふぁぶ | 2017年4月17日 (月) 09時57分

 ふぁぶ様、コメントありがとうございました。仰るように、イギリスで人気が出て、その後アメリカでも売れるようになりました。
 
 70年代風の雰囲気を持っていたのは事実ですが、新作の「ウォールズ」では、かなりポップ化していますね。だからチャートでは1位になったものの、次の週では20位以上落ちてしまって、おそらくは古くからのファンにはソッポを向かれたのではないでしょうか。

 この事実はどう彼らは受け止めたのか。次作が原点回帰になるのか、それともこの売れ線ポップ路線を行くのか、岐路に立っていると思うのです。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2017年4月17日 (月) 17時36分

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