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2017年10月16日 (月)

オール・シングス・マスト・パス

 今回と次回は、前回のデラニー&ボニーとの関連で、彼らと関係のあった人たちの活動やアルバムなどを紹介したいと思う。

 とにかく、1970年という年のデラニー&ボニーや彼らの友人たちの活躍は、今から考えればとんでもなく影響が強かったということがやっと理解できた。
 デラニー&ボニー自身のみならず、彼らを支えるミュージシャンたちは、デイヴ・メイソンやエリック・クラプトンなどの著名ギタリスト、クラプトンが結成したデレク&ザ・ドミノス、ジョー・コッカーなど、アメリカ南部のサウンドに興味を持ったイギリス人ミュージシャンに多大な影響力を与えている。

 今回紹介するのは、やはり1970年に発表された元ザ・ビートルズのジョージ・ハリソンのアルバム「オール・シングス・マスト・パス」である。

 このアルバムは、以前、2007年にもこのブログで一度紹介しているのだけれども、今回はデラニー&ボニーの影響力という観点で見てみたいと思う。81iccilbogl__sl1500__2
 このアルバムの素晴らしさについては、あえて繰り返す必要はないだろう。当時は、“静かなビートル”とか“ザ・ビートルズの第3の男”とか言われていたジョージ・ハリソンが、ザ・ビートルズ解散後、今までジョンとポールの陰に隠れて目立たなかった分を一気に吐き出すかのように発表した3枚組アルバムだった。(CDでは2枚組)

 全23曲、特に当時のレコードの1枚目と2枚目の楽曲群のメロディーの豊かさや曲の持つ印象度など、一聴しただけでこのアルバムの素晴らしさとジョージ・ハリソンの才能の豊かさを実感させられたものである。
 今更こんなことを言うと自体、彼のファンには失礼かもしれないが、今聞いても全く違和感のないエヴァーグリーンなアルバムなのである。

 このアルバムには"My Sweet Lord"、"What is Life"、"All Things Must Pass"などの有名な曲や、地味だけどメロディが美しい"Isn't It A Pity"、"If Not For You"、"Behind That Locked Door"などもあり、どの曲も個性があり、水準が高い。

 このアルバムを曲ごとに説明を加えていくと、2日や3日では終わらないので、今回はというか、未来永劫にわたって割愛したい。
 それで、デラニー&ボニー関係のミュージシャンは誰かというと、だいたい次のようだ。

ギター…エリック・クラプトン、デイヴ・メイソン
ベース…カール・レイドル
ドラムス…ジム・ゴードン
キーボード…ボビー・ホワイトロック
サックス・・・ボビー・キーズ
トランペット…ジム・プライス

 もちろん彼ら以外にも、ビリー・プレストンやバッド・フィンガーのメンバーなどの有名ミュージシャンは参加しているのだが、誰が見ても分かるように、ベーシストやドラマー、キーボーディストなどを集めると、デレク&ザ・ドミノスになってしまう。

 デレク&ザ・ドミノスは、同じ年の11月に、ということはこの「オール・シングス・マスト・パス」とほぼ同じ時期に歴史的名盤「いとしのレイラ」を発表しているので、自分たちの録音の合間を縫って、ジョージのアルバムに参加したことになる。

 ちなみに、ホーン関係のボビー・キーズとジム・プライスは、1971年のローリング・ストーンズのアルバム「スティッキー・フィンガーズ」にも参加しているので、彼ら両名にとってもこの時期は引っ張りだこの状態だったようだ。

 当時は、クレジットには記載されていないが、実際にはレコーディングやライヴに参加するということはよくあったようで、この「オール・シングス・マスト・パス」でも、エリック・クラプトンの名前はクレジットされていないが、実際には参加している。

 逆に、ジョージ・ハリソンの方も、自分のアルバムに参加してくれたお礼をするかのように、デレク&ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」に参加していた。ジョージ・ハリソンは、"Tell the Truth"と"Roll It Over"(アルバム未収録)において、バックでギターを弾いていた。

 エリックの方は、アルバムの最初の曲"I'd Have You Anytime"を始め、"Wah-Wah"、"If Not For You"、"Art of Dying"、"Isn't It A Pity(Version2)"などでギターを担当していた。特に、"If Not For You"ではドブロ・ギターを演奏している。

 でも、やはり一番の聞きどころは、当時のレコードの3枚目にあたる通称"Apple Jam"だろう。71auugna1al__sl1267_
 最初の"Out Of The Blue"は11分14秒の大作で、演奏しているのはデレク&ザ・ドミノスのメンバーに、サックスにはボビー・キーズ、オルガンはゲイリー・ライト、そしてもちろんジョージ・ハリソンもギターを弾いている。

 混沌とした演奏ながらも、全体をリードするジョージのギターと、時折挿入されるエリックのギターがいい味を出している。その間を縫うように、ボビーのピアノとゲイリーのオルガンが目立っている。

 ジャム・セッションとはいいながら、後半はスリリングに盛り上がっていくところは、さすがプロ集団である。できれば、フェイド・アウトをせずに、最後まできっちり収録してほしかった。

 次の"It's Johnny's Birthday"は、わずか49秒の短い曲。曲というよりは、お遊びで歌っている感じだった。ザ・ビートルズの元ロード・マネージャーのマル・エヴァンスがクリフ・リチャードの曲"Congratulation"を替え歌にしている。

 3曲目はすぐに始まる。この"Plug Me In"というタイトルの曲では、ジョージとエリック・クラプトン、それにデイヴ・メイソンの3人のギター・バトルが3分18秒間繰り広げられている。
 最初はジョージが、次にデイヴ・メイソン、最後がエリックという順番だろう。ただ、これも3分余りでは非常にもったいない気がした。できれば、もう少し拡張してほしかったと思ったのは自分一人ではないだろう。

 次の"I Remember Jeep"の“Jeep”とは、当時のエリックの飼っていた愛犬の名前のようだ。
 曲はジョージが操作するムーグ・シンセサイザーで始まり、続いてシャッフル調の曲に移る。8分余りの曲だが、リード・ギターはエリック・クラプトン、ベースはクラウス・ヴアマン、そしてドラムはあのジンジャー・ベイカーだった。

 エリックのギターがフィーチャーされていて、ジョージのアルバムというよりは、エリック・クラプトンのソロ・アルバムに入れてもおかしくない。ピアノはビリー・プレストンが担当していて、当然のことながら、ノリのよい演奏を聞かしてくれる。

 ただ曲の途中から後半に向けて、ジョージの操作するムーグ・シンセサイザーのピコピコ音やサウンド・エフェクトが目立ってきて、調和を乱している。
 あくまでもジャム・セッションだったからいいものの、曲として完成させるためには、もう少しアレンジが必要だろう。

 3曲目の"Plug Me In"の続編にあたるのが、最後の曲"Thanks For The Pepperoni"だろうか。時間も5分31秒とやや長めだった。
 セッション・メンバーは"Plug Me In"と同じで、ギター・ソロもジョージ、デイヴ・メイソン、エリック・クラプトンになっていて、この曲ではデイヴ・メイソンのギター・ソロが目立っている。

 残念なのは、この曲もエンディングがブチッと切られていて、最後まで完奏されていない点だろう。ちょっとでもいいからもう少し長く演奏してほしかったし、あるいは曲として完成させてほしかった。

 確かにジャム・セッションだからといえば、その通りなので、多少は我慢するしかないのだが、レコードの1枚目や2枚目には珠玉の名曲ぞろいなので、セッションについても頑張ってほしかった。

 今となっては想像するしかないが、このセッション風景を見たかったと思う。映像で残っていれば、まさにプレミアものだろう。いや、プレミア以上のものに違いない。歴史的な映像記録になるだろう。

 それはともかく、ジョージ・ハリソンとエリック・クラプトンとは、ザ・ビートルズの"While My Guitar Gently Weeps"でも共演しているから、親交も厚い。たとえクレジットはなくても、お互いのアルバムでは演奏しているし、ミュージシャン同士の情報交換もあったに違いない。

 だからデラニー&ボニーのことや、彼らをバックアップしているミュージシャンのこともイギリス人ミュージシャンに知れ渡ったのだろう。
 前回も書いたけれど、エリック・クラプトンがデラニー&ボニーのことを知ったのもジョージ・ハリソンもしくはデイヴ・メイソン経由だと思われる。

 ジョージの「オール・シングス・マスト・パス」の場合は、特にアメリカ南部のサウンドを意識して制作したわけではない。ドミノスのメンバーを連れてきたのは、間違いなくエリック・クラプトンだろう。

 ただ、ジョージの心の中にはザ・ビートルズの束縛から逃れて自由に表現活動ができるという喜びがあり、その歓喜からボブ・ディランを始め、様々な英米のミュージシャンとの交流を図ったのだろう。その成果がこのアルバムの中の"Apple Jam"の中に収められているのだ。George_harrison_all_things_
 そして、エリック・クラプトンがレコーディング中のメンバーを連れてきたにしても、結果的にジョージは彼らの参加を認め、レコード1枚を使って自分たちの演奏を記録として残そうとした。
 結局、元の話に戻るのだが、それほど当時のデラニー&ボニーを始めとするアメリカ人ミュージシャンの影響力は高かったということだろう。

 次回は、同じような活動をしたもう一人のイギリス人を紹介したいと考えている。


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