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2017年10月 3日 (火)

デイヴ・メイソン(2)

 70年代は、デイヴ・メイソンにとっては黄金期だった。特にレコード会社を移っての1973年から1980年までは、どのアルバムも話題性に富み、セールス的にもよかった。

 また、70年代の後半にイーグルスやドゥービー・ブラザーズのようなバンドや、J.D.サウザーやジャクソン・ブラウンのようなシンガー・ソングライターの影響で、ウエスト・コースト・サウンドというものが台頭してきた。

 また、A.O.R.(アダルト・オリエンティッド・ロック)と呼ばれる心地よい、あるいは毒にも薬にもならないような“ニュー・ウェイヴ・オブ・ソフト・ロック”みたいな音楽も人気を博していた。
 “ニュー・ウェイヴ・オブ・ソフト・ロック”とはもちろん私個人の造語であって、そんな言葉はどこにもない(はずだ)。新しい時代のソフト・ロックという意味で、要するに、耳に心地よい楽曲のことである。

 この“ウエスト・コースト・サウンド”と“A.O.R.”の両方を目指していたのが、70年代のデイヴ・メイソンだったような気がする。
 もちろん、これは本人に聞いたわけではないので個人的な憶測なのだが、意図的かどうかはわからないけれども、結果的にはそういう音楽になってしまったので、これはやはり本人が、その結果を了承したと考えても間違ってはいないと思う。

 しかも時代に沿った音楽だったから、商業的にも成功した。こういう結果も、彼にとっては自信につながったに違いない。

 そして、この時代のデイヴ・メイソンを代表するアルバムを2枚だけ紹介しようと思う。なんで2枚なのかというと、だって2枚しか持っていないからである。

 これは個人のブログなので、恣意的な意見になるのだけれども、できればデイヴ・メイソンには「アローン・トゥギャザー」のようなアメリカ南部の影響の濃い音楽を追及してほしかった。

 時代に敏感なのは現役ミュージシャンとして必要な感覚だし、売れることは決して悪くはないのだけれども、元トラフィックとしての経歴や、ジミ・ヘンドリックスやジョージ・ハリソンとのレコーディング等の実績を考えれば、もっと玄人肌のギタリストとして活躍してほしかったというのが、正直な気持ちなのだ。

 まあしかし、それはあくまでも周囲の声の一つだし、あくまでも決めるのは本人である。結果的には、この当時の彼の活躍が正当に評価されて今に至っている。当時のアルバムが今でもCDで入手できるのも、70年代の彼の活躍があったからこそだろう。

 それで最初の1枚は、1975年の「スプリット・ココナッツ」である。これはもうアルバム・ジャケットを見ただけで、どんな音楽かが想像できるようなものだった。619s78ynr3l
 実は前年のアルバム「デイヴ・メイソン」はかなり評判が良くて、アルバムのチャートでも25位まで上昇していた。
 メイソン自身の曲もよかったし、それ以上に以前からライヴでも演奏されていたボブ・ディランの"All Along the Watchtower"やサム・クックの"Bring it on Home to Me"などのカバー曲も秀逸だったからだ。

 それで「スプリッツ・ココナッツ」を発表したのだが、結果的には、そんなに良い評価を得られたわけではなかった。
 音楽的には前作よりももっとファンキーでソウルフルになっているが、全体的には性急な音作りになっているようだった。

 まず最初の"Split Coconut"はファンキーなリズムが強調されていたし、次の"Crying, Waiting&Hoping"はバディ・ホリーの曲だが、ここではレゲエ調にアレンジされていた。
 このアルバムではベーシストがジェラルド・ジョンスンというアフリカ系アメリカ人に代わっていたが、メイソンの意図を汲んでの交代劇だったのだろう。

 3曲以降は、まさにウエスト・コースト・サウンドかつA.O.R.路線の曲が並んでいる。耳には心地よいのだが、ロック的なインパクトには欠けている。決して非難しているわけではないし、車でのドライブのお供には最適な音楽だと思うのだが、もっとギタリスト、デイヴ・メイソンというものを前面に出してほしかった。

 ただ、"She's A Friend"にはデヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュが参加していて美しい歌声を聞かせてくれるし、"Save Your Love"ではディープでブラックなギター・ソロを聞くことができる。昔流行った“チョッパー・ベース”も耳にすることができる。ただ、エンディングのギター・ソロはカットしないで、もう少し長く流してほしかった。

 続く"Give Me A Reason Why"は哀愁のあるメロディラインで、このアルバムの中でも注目に値する。ここでのリード・ギターはバンドメイトのジム・クリューガーが演奏している。

 ジム・クリューガーは以前からデイヴ・メイソンのバンドで活動していて、メイソンと袂を分かった後も、西海岸でセッション・ミュージシャンとして活躍した。 
 1978年にはソロ・アルバムも発表したが、1993年に心筋梗塞で亡くなった。43歳だった。約18年間にわたってデイヴ・メイソンと一緒に活動してきて、このアルバムや次のアルバム「流れるままに」では彼の演奏や作った曲を聞くことができる。

 7曲目の"Two Guitar Lovers"とは、もちろんメイソンとジム・クリューガーのことを指している。そして曲の中でも2人のギター・ソロというか、爽やかなギターの絡みを聞くことができる。右チャンネルがジムで、左チャンネルがメイソンのようだ。

 次の"Sweet Music"はタイトル通りのポップでスウィートな曲だ。しかし、デイヴ・メイソンは、よくこんなポップな曲をかけるなあと感心してしまった。ただ、ギターよりもジェイ・ウィンディングのキーボード・ソロが目立っていると思う。

 そして最後の曲が"Long Lost Friend"である。最後の曲に相応しくギター・ソロが強調されていて、ギタリスト好きにはたまらないだろう。もちろん時代は“ソフト&メロウ”だったから、パープルやゼッペリンのように弾きまくっているわけではないけれども…

 「流れるままに」は1977年に発表された。「スピリット・ココナッツ」との間には2枚組ライヴ・アルバム「ライヴ~情念」が発表されていたので、スタジオ盤としては2年ぶりの作品になった。61aygvnynyl
 アルバムはいきなり"So High(Rock Me Baby And Roll Me Away)"というタイトルの曲から始まるのだが、これがまた明るくてトロピカルな雰囲気になっている。
 この曲は、のちにシングル・カットされていて、チャートの89位になった。どうせならほかの曲の方がよかったと思うのだが、どうだろうか。

 そして2曲目に名曲"We Just Disagree"が流れてくるのだが、これがバンドのギタリストであったジム・クリューガーの書いた曲なのである。これだけの曲がかけるのだから、やはり才能のあるミュージシャンだったのだろう。彼の早すぎた死が悔やまれてならない。
 ちなみに、この曲もまたシングル・カットされて、12位まで上昇した。デイヴ・メイソンの曲の中では最大のヒット曲になったわけである。

 このアルバムには捨て曲が見当たらない。それほどどの曲もレベルが高い。そしてアレンジも素晴らしくて、それぞれの曲に相応しい味付けがされている。

 3曲目の"Mystic Traveler"もそんな曲で、ストリングス・シンセサイザーを始め、ハープやホーンの音までが絶妙なブレンドで合わせられている。ムーディーでありゴージャスなのだが、逆に、基本のメロディラインを目立たせているところが素晴らしい。

 "Spend Your Life With Me"はまるでエンターテイナーの世界だろう。フランク・シナトラが歌ってもおかしくないだろう。途中のサックスがアダルトな雰囲気を高めてくれる。

 逆に、おしゃれでファンキーなのが"Takin' the Time to End"で、少しアレンジを変えればジャミロクワイが歌ってもおかしくない曲だ。やはりこういう曲が書けるデイヴ・メイソンは、才能豊かなのだ。

 6曲目が一部アルバム・タイトル曲にもなっている"Let it Go, Let it Flow"で、これも売れそうなポップ・ソングだ。シングル・チャートでは45位まで上昇した。
 続く、"Then It's Alright"もまたホーン・アレンジが施されていて、曲調を高めていた。オーヴァー・プロデュースになりそうな微妙なところなのだが、結果的にはよかったみたいだ。

 昔はこのアルバムは華麗すぎて好きになれなかったのだが、今聞けばそれなりの工夫が曲ごとに施されているのが分かってきて、なるほどなあと納得してしまった。デイヴ・メイソンもそれなりに考えたのだろう。

 8曲目の"Seasons"も爽やかなハーモニーが美しい曲だ。クレジットを見ると、スティーヴン・スティルスと当時はエリック・クラプトン・バンドに所属していたイヴォンヌ・エリマンが参加していた。どうりで美しいわけだ。

 また、このアルバムの特徴だけれども、デイヴ・メイソンの弾くギターの音は、軽くて輝いていて、変な言い方だけれど、まるでハワイアン・ソングのように聞こえてくる。
 一音一音がきれいにピッキングされていて、粒が際立っているように聞こえてくる。変なエフェクターを使っていなくて、ナチュラルなトーンを大切にしているのだろう。

 逆に、"You Just Have to Wait Now"でのギター・ソロでは、少しだけオーヴァードライヴかディストーションをかけているようだが、そんなに嫌味にならないのがよい。アルバムに統一感を持たせているのだろう。3分6秒と短い曲だった。

 そしてアルバムの最後を飾るのは、"What Do We Got Here?"という、これまた後期ドゥービー・ブラザーズのような曲だった。ストリングスやサックスが部分的に被さってくるのだが、それがブラックな感触を与えてくれる。マイケル・マクドナルド的音楽を導入したのだろうかと邪推してしまった。

 このアルバムが売れないわけがないだろうということで、チャート的には最高位37位だったものの、アルバム・チャートには49週間留まっている。ほぼ1年間チャートに顔を出していたというわけだ。

 メイソンはその後、マイケル・ジャクソンやフィービー・スノウなどとアルバムで共演を果たすものの、話題性はあったがヒットには結びつかなかった。Davemason
 フリートウッド・マック脱退後は、ソロで活動していて、DVDや過去の作品のセルフ・カバー・アルバムなどを発表している。また、以前よりは回数は少なくなったものの、今でもデイヴ・メイソン・バンドとともにライヴ活動を行っているようだ。

 実力や才能はあるものの、過小評価されているギタリストだと思っているが、本人にはあまり物欲や名誉欲はないのかもしれない。もう十分満たされていると思っているのだろう。今後も「流れるままに」活動していくに違いない。


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