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2017年11月13日 (月)

マーク・べノ(2)

 ずいぶん昔の話だけれども、このブログでマーク・べノのアルバム「雑魚」を紹介したことがあった。このアルバムは、知っている人は知っているけれども知らない人は誰も知らないというぐらい有名なアルバムで、個人的に隠れた名盤として載せたのである。51ozvefplrl
 いま調べたら2008年の7月14日付でこのブログに記載されていて、いかにこのアルバムが素晴らしいかを力説していた。思えば9年も前のことになるが、時の経つのは早いものだ。
. そんなことはどうでもいいのだが、当時はあまり深く考えなかったのだけれども、このマーク・べノもスワンプ・ロック関連のミュージシャンのひとりで、この1971年の名盤にも当時の関係者が多数参加していた。

 たとえば、ギター奏者ではザ・バーズに在籍していたクラレンス・ホワイト、ジェシ・エド・デイヴィス、ボビー・ウーマックにジェリー・マッギー、ベーシストにはデレク&ザ・ドミノスのカール・レイドル、ジェリー・シェフ、ドラマーにジム・ケルトナー、バック・コーラスにはリタ・クーリッジなどのミュージシャンである。いずれもデラニー&ボニー関連のミュージシャンか、その関係者だった。

 マーク・べノ自身も若き日のレオン・ラッセルとアサイラム・クワイアというバンドを結成していた。その関係からこれらのミュージシャンが参加したものと思われる。いずれもデラニー&ボニーに、直接的にしろ間接的にしろ関係しているミュージシャンばかりだ。

 マークは、テキサス州のダラスに生まれている。1947年生まれなので、今年で70歳になる。12歳でギターを手にし、15歳頃にはプロのミュージシャンとして活動を開始した。
 様々なバンドを経験した後、1966年にレオン・ラッセルと知り合い、意気投合してハリウッドに居を定め、アサイラム・クワイアというバンドを結成している。

 バンドは、「ルック・インサイド・ジ・アサイラム・クワイア」と「アサイラム・クワイアⅡ」という2枚のアルバムを発表したが、商業的には成功せず、マークは一人で地元テキサスに戻り、カントリー・ブルーズ・シンガーのマンス・リプスカムのバック・バンドで音楽活動に取り組んだ。

 1970年にはリタ・クーリッジの後ろ盾もあって、当時のA&Mレコードと契約を結び、デビュー・アルバム「マーク・べノ」を発表した。このアルバムについては後に述べることにする。

 そして翌年には、スワンプ・ロックの名盤傑作選には必ず入ると言われている「雑魚」を発表した。このアルバムについては、すでに述べているのでそちらを参照してほしい。たぶんほとんど誰も目にしないだろうけれど…

 1972年には3枚目となる「アンブッシュ」を発表して、ナイトクロウラーズという自身のバンドを結成した。このバンドには有名になる前のスティーヴィー・レイ・ヴォーンやドイル・ブラムホールなどが在籍している。

 だからというか当然というべきか、彼らは地元では大変な人気を誇っていて、ハンブル・パイやJ.ガイルズ・バンドの公演ではオープニング・アクトを務めていたが、メイン・アクトよりも観衆を沸かせていたといわれている。

 レコード会社としては、シンガー・ソングライターとしてプッシュしていたのだが、いつの間にかブルーズ・ロックをやるようになっていったマークに難色を示すようになり、1974年の4枚目のアルバムは録音されたものの、結局、発売は見送られてしまった。2005年になってこのアルバムは、「クローリン」というタイトルで発表されている。

 「ロスト・イン・オースティン」というアルバムが1979年に突如発表されたが、A&Mから発表されたアルバムは、これが最後になってしまった。
 これは珍しくロンドンでレコーディングされていて、エリック・クラプトンや彼のバンド・メンバーも参加したブルーズ色の濃いロック・アルバムに仕上げられていた。

 その後は、彼が手掛けた「ビヴァリー・ヒルズ・コップ」の挿入歌入りのサントラが1986年度のグラミー賞を受賞したり、1990年には「テイク・イット・バック・トゥ・テキサス」というアルバムを発表したりするが、無理のないコンスタントな活動を行っているようだ。
 アルバムも定期的に発表しているが、メジャーなレーベルからは出していないので、遠く離れた日本では、彼の具体的な活動は把握しにくい。

 ただ、2005年と2011年には来日しているので、日本でもコアなファンはいるはずだ。もちろん自分もそのうちの1人なのだが、残念ながら生の姿はまだお目にかかっていない。機会があればと願っているが、もう恐らく日本に来ることはないだろう。残念の一言に尽きる。

 それで、久しぶりに彼の1970年のアルバム「マーク・べノ」を聞いたのだが、これがまた「雑魚」に負けず劣らず良いので、このところ毎日聞いている。41mkdwc2zhl
 まず、参加ミュージシャンが素晴らしい。だいたいスワンプ・ロック系のアルバムには、その筋のミュージシャンが大挙して押し寄せて、勢いで制作するという傾向が強いのだが、このアルバムもその例に漏れない。

 キーボードには清志郎とも共演したブッカー・T・ジョーンズ、スライド・ギターには名手ライ・クーダー、ギターにはベンチャーズのジェリー・マギー、ベースはプレスリーやコステロとも経験のあるジェリー・シェフ、レオン・ラッセルの後ろでタイコをたたいていたジミー・カースタイン、そしてジム・ホーンにリタ&プリシラのクーリッジ姉妹と、これはスワンプ・ロックの範疇を超えた西部&南部連合軍だろう。

 アルバムには9曲が収められている。1曲目の"Good Year"はタイヤのコマーシャル・ソングではないものの、軽快なカントリー・ロックで、バックのホーンとワウワウのギターがルイジアナなどのアメリカ南部を想起させる音になっている。エンディングに向けてテンポが徐々に上がっていく。

 "Try It Just Once"はミディアム・ブルーズ風の曲だが、全編を覆うギターがカッコいい。デビュー・アルバムからしてこのレベルの高さは、正直言って素晴らしい。

 3曲目の"I'm Alone I'm Afraid"はさらにスローな曲で、まるでレオン・ラッセルのピアノとスティーヴィー・レイ・ヴォーンのギターが合体したような曲に仕上げられている。このアルバムの中でも1、2を争うほどの出来栄えだと思うし、この曲とラストの曲のためにアルバムを買っても惜しくはないだろう。

 一転して明るい曲調の"Two Day Love Affair"では、リタ・クーリッジらの女性ボーカルが曲を盛り上げていて、ポップな色どりを添えている。こういう曲も書けるところがマーク・べノの才能の大きさだろう。

 "Second Story Window"は涙が出そうなアコースティックな曲で、のちにリタ・クーリッジが自分の持ち歌の一つにするほどの素晴らしい曲。秋の夜長に聞いていると、胸が締め付けられるような感じの曲だ。ブッカー・T・ジョーンズの演奏するハモンド・オルガンもまたいい味を出している。

 アルバムの後半は、ややハードな"Teach It To The Children"で始まる。マーク・べノ流のロックン・ロールだろう。中間部のギター奏法がややサイケデリック風で、この時代の雰囲気をよく表している。

 "Family Full Of Soul"は、やや力を抜いたレイド・バック風の曲で、アメリカの南部の風を感じさせてくれる。バックのホーン・セクションにピッコロも使用されているので、明るく陽気な気持ちにさせてくれた。

 8曲目の"Hard Road"だけは、マーク・べノとグレッグ・デンプシーという人の共作だった。グレッグ・デンプシーという人は、ロサンゼルス時代のマークの友人で、レオン・ラッセルと一緒に3人で曲作りも行っていたという。
 軽快なスワンプ・ロック風のロックン・ロールで、後半のライ・クーダーによるスライド・ギターが文句なくカッコいい。

 最後の"Nice Feelin'"は、スワンプ・ロック流のゴスペル・ソングだろう。ピアノとハモンド・オルガンの共演やそれに絡むギター、クーリッジ姉妹のバック・コーラスなどが聞くものに魂の癒しを与えてくれる。
 この曲ものちにリタ・クーリッジが自分で歌っているが、やはりプロの歌手が自分も歌いたいと思わせるような魅力というか力を秘めているのだろう。
 このアルバムは全体で33分くらいしかないのだが、この曲だけは5分50秒もある大曲だった。

 いずれにしても、このアルバムもまた「雑魚」と並び称されるほどのスワンプ・ロックの名盤ということが、あらためてわかった。ただ、もう1、2曲ほど曲が多ければ、もっと充実したアルバムになったに違いない。
 それでもデビュー・アルバムでこれほどの名盤が作れるのだから、やはりマーク・べノは実力派ミュージシャンだった。Marc_benno
 今ではそんなに語られることはないかもしれないけれど、マーク・べノもまたスワンプ・ロックのみならず、アメリカン・ロックを代表するミュージシャンの1人だった。もっと評価されていいミュージシャンだと思っている。


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