« ホワイト・ウィロー(2) | トップページ | テンプルズ »

2018年2月26日 (月)

ウォブラー(2)

 前回のホワイト・ウィローに続いて、今回もノルウェーのプログレッシヴ・ロック・バンドを紹介しようと思う。
 と言っても、このバンドも以前このブログで紹介したことがあった(2013年の12月14日付)ので、今回が2回目となる。

 そのバンドの名前は、ウォブラー。1999年にノルウェーのヘネフォスで結成されている。現在のメンバーは5人で、今までのメンバー交代は2回、2009年にリード・ボーカリストが、2011年にはリード・ギタリストが交代している。
 また、このバンドのキーボーディストのラース・フレドリク・フロイスリーは、同じノルウェーのプログレッシヴ・ロック・バンド、ホワイト・ウィローのキーボードも担当しており、両バンドにまたがって活躍している。A111159115039574358048_jpeg
 自分は、2009年のセカンド・アルバム「アフターグロウ」と2011年のサード・アルバム「夜明けの儀式」の2枚を聞いたが、両アルバムとも世界的な水準レベルのプログレッシヴ・ロック・アルバムだった。

 ただ、セカンド・アルバムはキング・クリムゾン風で、サード・アルバムはイエス風の楽曲が収められていたから、バンドの音楽的な方向性が揺れているのではないかと心配していたのだ。その答えが今回の4枚目のアルバム「フロム・サイレンス・トゥ・サムホエア」にありそうなので、期待しながら聞いてみたのである。

 内容に行く前に、このバンドの特徴をもう一度確認してみると、
①1975年以降に製造された楽器類は使用しない
②楽器はコンピューター類には接続せずに使用する
③楽器の補修・改修はすべてメンバーで行う

 要するに、アナログの楽器を使用した70年代風プログレッシヴ・ロックを、21世紀の現在でも続けて行おうとする稀有なバンドなのだ。

 今回の6年ぶり4枚目のスタジオ・アルバムである「フロム・サイレンス・トゥ・サムホエア」も彼らの意向が反映されていて、全4曲、約46分40秒の内容であり、形式的には確かに70年代のプログレッシヴ・ロックのアルバムによく似ている。61pciotg3xl__sl1000_
 1曲目の"From Silence to Somewhere"のイントロのキーボードから続いて19秒過ぎに始まった曲調を聞けば、このバンドの方向性はイエスを基調とした構築感のある音作りということがわかるだろう。
 走り出すリズムにそれに負けないと食らいつくフルートとキーボード、ギター、静的情景を表現するアコースティック・ギターとメロトロン、3分過ぎのボーカルの声質などは、全体的に判断すると、確かにイエスの音楽観に似ている。

 徐々に音数が増え、キレのあるリズムが前面に出されて、それをハモンド・オルガンとフルートが引き継いでいくのだが、20分59秒という時間の長さを感じさせない展開である。
 全体は3部構成で、“パート1”、“パート2”、“エピローグ”となっている。5分過ぎから長めのフルート・ソロが演奏されるのだが、歌詞カードではそこが“パート1”と“パート2”の分岐点になっていた。

 唯一の問題はギターがあまり目立たないという点だろうか。確かにこの曲でも8分26秒あたりに短いギター・ソロがあるのだが、曲に添えるような感じで全体をリードしていこうとする野心が見られない。
 10分過ぎからキーボード・ソロ、フルート・ソロときて、やっとギター・ソロに繋がっていくが印象的なフレーズに乏しい気がしてならない。ただし、ドラマティックに盛り上げていくにはギタリストの存在は重要で、この曲でもフルートやキーボードとともに十分にその存在感を示している。

 14分過ぎに一旦ブレイクして静寂な時間が訪れ、再びアコースティック・ギターとメロトロンが流れてボーカルが歌い始める。“パート2”の後半にあたる部分だろう。また、歌い出しは、ジョン・アンダーソンに似ていると思う。

 "Epilogue"は18分過ぎにやってきて、19分から歌が始まって行く。残りの1分30秒余りを穏やかなボーカルと静かなキーボードで占めているのだが、印象としてはイエスのアルバム「リレイヤー」の中の"The Gate of Delirium"に似ていると思った。

 あの曲では最後に"Soon"が流れるのだが、このウォブラーの曲でも形式としては似ていた。ただ、あそこまでメロディアスではないのが残念である。

 2曲目の"Rendered in Shades of Green"は、インストゥルメンタルで、2分5秒しかない。グランド・ピアノの調べからチェロやメロトロンへと繋がるチェンバー・ロックのような感じの曲。あるいは3曲目の"Fermented Hours"のプロローグなのかもしれない。

 10分10秒の"Fermented Hours"は不協和音的なキーボードとアグレッシヴなギター・ソロ、キレのあるリズムから始まり、1分40秒あたりにデス・ボイスみたいな声が挿入される。ドリーム・シアターの曲をもっと転調させて構成したような感じだ。

 この曲ではラースの演奏するミニ・ムーグが目立っていて、曲の端々に登場している。また、メロトロンのみならず、ソリーナ・ストリング・アンサンブルなどのキーボード群が曲に深遠さを与えているし、8分過ぎからのギター・ソロはジャズっぽくて、素早いフレージングが耳に残る。一致団結してエンディングに向かおうとする潔さと力強さを感じさせてくれた。

 1曲目をイエスの"The Gate of Delirium"に譬えたけれど、この"Fermented Hours"は、さぞかし"Sound Chaser"だろうか。何となく雰囲気的に想起させてくれたのだが、とすると、最後の曲"Foxlight"は"To Be Over"になるのだろうか。51caxzqldvl
 そんなことを思いながら最後の曲"Foxlight"を聞いたのだが、確かに最初の3分過ぎまでのうっすらと霧がかかったようなキーボードとアコースティック・ギターのアルペジオにフルートの部分は、少しテンポの速い"To Be Over"といってもいいような気がした。

 しかし、それではおさまらないのがウォブラーである。3分50秒過ぎからは力強いリズムが前面に出され、キーボードとフルートが全体をリードしていく。7分前からはメロトロンも全体を包み込むように表に出てくる。
 その後、アコースティック・ギターのソロが始まり、一旦落ち着きを見せ、9分過ぎから再びボーカルが入りエンディングに向かっていくのである。

 エンディングのアコースティカルでダンサンブルな曲調は、ノルウェーの舞踏的なフォークロアなのかもしれない。彼らが、現代のエレクトリックな部分と北欧の民族的な伝統部分とを融合させている点も見逃せない。こういうところにも北欧の“プログレッシヴ”な部分が見え隠れしているようだ。

 ウォブラーもイギリスで生まれたプログレッシヴ・ロックを上手に咀嚼消化し、さらに自分たちの中に脈々と流れている民族的な要素も取り入れて昇華させているところが素晴らしい。単なる時代錯誤のバンドではないのである。

 とにかく、この21世紀の現在で、こういうこだわりを見せるプログレッシヴ・ロック・バンドも珍しく、貴重ではないだろうか。Maxresdefault
 ここまで70年代の機材に固執し使い続け、さらに曲のイメージ、雰囲気をも当時に似せようとするところは、70年代のプログレ愛好家にとっては、まさに頭の下がる思いがする。
 しかもそれだけでは終わらせずに、自分たちの愛する郷土や歴史に基づいた曲調も反映させようとする意欲もまた忘れてはならないだろう。

 ウォブラーは2作目のキング・クリムゾン的作風から転換して、イエス的な構築美を誇る音楽を目指そうとしているようだ。
 もともと彼らは、イタリアのP.F.M.やバンコ、ムゼオ・ローゼンバッハ、イル・バレット・ディ・ブロンゾなどから強い影響を受けているという。だから単なる70年代のプログレッシヴ・ロック・バンドの二番煎じに終わらずに、自分たちのオリジナリティーを創出しながら楽曲を生み出しているのだろう。

 北欧のプログレッシヴ・ロックは、マーケット的にはそんなに大きくはないかもしれないが、まさに今を生きるプログレッシヴ・ロック・バンドとして、さらに活躍の場を広げていこうとしている。個人的には、もっとワールド・ワイド的に評価されてほしいと願っている。


« ホワイト・ウィロー(2) | トップページ | テンプルズ »

プログレッシヴ・ロック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/257206/72788147

この記事へのトラックバック一覧です: ウォブラー(2):

« ホワイト・ウィロー(2) | トップページ | テンプルズ »