« 90年代のZZトップ | トップページ | キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン »

2018年4月30日 (月)

21世紀のZZトップ

 さて、今月はZZトップについて記してきた。こんなに長く続けるつもりはなかったのだけれど、つい勢いに任せて書き綴ってしまった。
 熱狂的なZZトップ・ファンから見れば、物足りないだろうし、もっとよく知りたい人にとっては、中途半端な情報にしかならなかっただろうが、今回でとりあえず区切りをつけることにしたので、お許し願いたい。Zz
 さて、2000年代に入ってからのZZトップは、結成30周年記念のツアーを行っていて、アメリカ国内はもとより、オーストラリアやニュージーランドの英語圏を始め、ヨーロッパ各国において活動を続けていた。

 2002年に入ると、バンドはヒューストンにある自分たち所有のアルバムに集まり、新しいスタジオ・アルバムの制作に取り掛かった。そして翌年発表されたのが14枚目のスタジオ・アルバムである「メスカレロ」だった。61slnlaj0l
 アルバムのタイトルは、かつてテキサス州近辺に住んでいたネイティヴ・アメリカンのことを指していて、彼らは11月の1日と2日の2日間に、死者に弔意を示すと同時に、生前の姿を偲ぶという風習を持っていた。日本でいうところの“お盆”みたいなものだろう。だから、アルバムジャケットにも、ドクロ姿の人が手に飲み物を持って立っている。

 ひょっとしたら、バンド結成30年を過ぎて50歳代半ばを迎えた彼らもまた、過去の有名無名のミュージシャンやバンドに敬意を表すとともに、自分たちもやがては伝説化していくに違いないという自覚や自負もあったのではないだろうか。

 このアルバムには、通常の楽器だけではなく、アコーディオンやマリンバ、ペダル・スティール・ギターやハーモニカなども使用されていた。
 だからアルバム・タイトルからも想像できると思うのだが、このアルバムには地元テキサスやメキシコの音楽“テックス・メックス”、それにカントリー・ミュージックの影響が強く出ていて、通常のロック・アルバムとは少し違った印象を受けた。

 それだけ彼らの地元愛というか、自分たちを育んでくれた郷土テキサスやその風土、環境への愛情や憧憬などが込められているのだろう。まさにZZトップが地元のファンのために、ファンの皆さんと一緒に作り上げましたよとでもいいそうな、そんな感触が伝わってくるのだ。

 アルバムの冒頭は、"Mescalero"で始まる。この曲には全編にわたってマリンバが使用されていて、曲のエンディングにはソロまで用意されていた。
 このマリンバを演奏しているのは、無名の親子のメキシコ人ミュージシャン?で、たまたま彼らが昼食をとっていたレストランで演奏をしていたのを気に入って、レコーディングに招いたらしい。この親子は、他の曲("Que Lastima")でも演奏している。

 アコーディオンは3曲目の"Alley-Gator"で使用されている。この曲はワニの“アリゲーター”ではなくて、それを“アレイ・ゲイター”と譬えているようで、通りに立っている門番みたいな恐ろしい彼女のことを歌っている。

 それからペダル・スティール・ギターは、ブギー調の"Back Nekkid"やスロー・バラードの"Going So Good"で使用されている。
 特に、"Going So Good"はお涙頂戴の典型的な泣きのバラードで、久しぶりにバラードで泣ける曲を聞いた感じがした。この曲を聞くためにアルバムを購入してもおかしくないだろう、もちろん中古盤なら即買いだ。

 ギタリストのビリーがエンジニアのジョー・ハーディとゲイリー・ムーンの2人で書いた曲が6曲目の"Me So Stupid"というミディアム・ロック調の曲で、バックの“うぅっ、うぅっ”というコーラスというか囁きが面白い。

 また、スペイン語で歌われる"Que Lastima"は日本語で“残念だ”、“お気の毒に”という意味らしい。この曲には先にも述べたようにマリンバやハーモニカなどが使用されていて完全にスペイン歌謡になっている。

 さらに13曲目の"Tramp"というどこかの誰かと同じ名前のような曲は、1967年の古いブルーズ曲を録り直したもので、アルバム唯一のブルーズになっている。70年代はこういう曲が何曲もアルバムに収録されていたのだが、今は逆に珍しいといえるだろう。

 他にも爆音ハード・ロックの"Piece"、"Two Ways To Play"、80年代のコンピューターを導入した曲の感触に近い"Stackin' Paper"、"Crunchy"、ZZトップ風ポップ・ソングの"What Would You Do"等々、かなりバラエティに富んだ作りになっていて飽きさせない。5144tvx5gll
 しかもこのアルバムは曲数が多くて16曲(国内盤は17曲)も収められており、結構なボリュームなのである。時間にして1時間以上もあるし、とにかく自分たちがやりたい音楽をやりましたよという感じだった。

 ちなみに、隠しトラックとして、映画「カサブランカ」の中でも歌われた“時の過ぎゆくままに”("As Time Goes By")が収められていたが、これは国内盤だけでなく輸入盤でも歌われているのだろうか。

 そのせいか、久しぶりにこのアルバムは、ビルボードのアルバム・チャートで57位まで上昇した。それでも全盛期の成績から見れば、満足できるものではなかっただろう。
 それに、国内盤の配給については、このアルバムが最後になってしまった。アメリカでもRCAレーベルからユニヴァーサル傘下のアメリカン・レコーディングスというマイナーなレーベルに移っていた。心機一転というつもりだったのだろうか。

 さて、「メスカレロ」から約9年たって、彼らは15枚目のスタジオ・アルバム「ラ・ヒュートゥラ」を発表した。この間彼らは、2004年にはロックの殿堂入りを果たしているし、その後はベスト盤やライヴ盤を定期的に発表していた。
 このアルバム「ラ・ヒュートゥラ」はスペイン語で「未来」という意味である。ビリーは、“過去と現在を混ぜ合わしてできた結果、「未来」になった”と言っている。

 これは、昔のシンプルでブルージーなロックン・ロールと現代テクノロジーの影響を受けた音楽とを融合して、これからも新しいロックン・ロールを目指していこうという趣旨だと思われる。81hlmlmsp3l__sl1400_
 実際に、このアルバムのプロデューサーは、ビリーとともにあのリック・ルービンがあたっている。リック・ルービンといえば、アデルやジョニー・キャッシュからレッチリまで、洋の東西を問わず、数多くのミュージシャンやバンドから支持されている超有名プロデューサーである。そんな彼がZZトップとタッグを組んだのだ。これが悪かろうはずがない。

 1曲目の"I Gotsta Get Paid"は"25 Lighters"という曲のカバーで、ヒップホップの曲だと思われる。オリジナルはDJ.DMDという人の手によるもので、アルバート・ジョセフ・ブラウンⅢというミュージシャンも曲作りに参加していた。

 続く、"Chartreuse"はフランス産のシャンパンのことで、フランスでのライヴの時に楽屋に置かれていたものだ。メンバーたちが大変気に入っていたという逸話がある。
 この曲のリフは、レインボーの名曲"Long Live Rock'n'roll"とそっくりで、ひょっとしたらパクったのではないかと思ったほどだった。ただ、メロディー自体は全く違うので、訴えられることはないだろう。

 このアルバムの特徴は、10曲しか収録されていないこと。つまり昔の、70年代のフォーマットに戻ったということだ。しかも最初の3曲は、曲間がほとんどないから次々と曲が流れてきて、疾走感がみなぎっている。冒頭の3曲は本当に素晴らしい。
 さすがリック・ルービン、こういうところでも彼らの魅力を上手に引き出しているのだろう。やはりグラミー賞受賞プロデューサーは違うのだ。

 そして疾走感のある3曲の次には、渋いスロー・バラードの"Over You"が続く。この辺の押しと引きのバランスの良さなども、リックの手腕だろう。ただ何となくこの曲は、ブラック・サバスの"Solitude"に似ていた感じがした。

 続く"Heartache in Blue"はブルージーでミディアム・テンポの曲。ハーモニカも使用されていて、昔の曲を焼き直したような感じがした。こういう“古くて新しい”感触が、このアルバムの決め手なのだろう。だから、ビリーが述べたように過去と現在を融合して新しいものを生み出そうとしていたと言っていたのは、このことだったのかもしれない。

 とにかく音がクリアでシンプル、無駄のないプロデュースだと思う。"I Don't Wanna Lose, Lose, You"はシンプルだからこそカッコいいし、"Flyin' High"などは、AC/DCのようでスリム化して耳に残りやすい。

 同じスロー・バラードでもこちらの"It's Too Easy Manana"は力強く美しい。このアルバムの成功した原因は、リック・ルービンのおかげもあるが、外部ライターのサポートもあったからだろう。
 このバラードは、元はデヴィッド・ローリングスとギリアン・ウェルチという人の曲で、歌詞の一部をビリーが書き換えている。

 "Over You"と"I Don't Wanna Lose, Lose, You"はビリーとトム・ハムブリッジというミュージシャンとの共作だし、"Heartache in Blue"もトレイ・ブルースというカントリー・ミュージシャンとのものだった。

 全10曲中、ビリーひとりで作った曲は、3曲目の"Consumption"と最後の"Have a Little Mercy"の2曲だけで、あとは外部のミュージシャンや、以前も共演したエンジニアのゲイリー・ムーンなどとの制作だった。611gezbsvil
 そういう変化というか、外部からの力を借りつつも、自ら本来の音楽性に立脚した楽曲を提供することに成功して、見事このアルバムは、全米ビルボードのアルバム・チャートで6位まで上昇した。
 全米チャートで10位以内に入ったのは、1990年の「リサイクラー」以来、22年振りの出来事だった。また、イギリスでも久しぶりにアルバム・チャートに登場し、29位を記録している。復活の手ごたえ十分なアルバムになった。

 国内盤の配給は打ち切りになったものの、アメリカでは久しぶりに大成功したアルバムである。結成40周年を過ぎてもなお彼らには、このアルバムのタイトル通りに、「未来」はまだ大きく横たわっているに違いない。

 というわけで、アメリカの“至宝”ともいうべきZZトップの歴史をたどってきた。外部ライターの手を借りるなど、様々な方法を駆使して彼らはまだまだ生き延びていくだろう。結成50周年の来年には、記念のアルバムか何かが発表されるに違いない。彼らは、もはやアメリカの国民的ロック・バンドのひとつなのである。


« 90年代のZZトップ | トップページ | キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン »

アメリカン・ロック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/257206/73345079

この記事へのトラックバック一覧です: 21世紀のZZトップ:

« 90年代のZZトップ | トップページ | キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン »