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2018年4月16日 (月)

80年代のZZトップ

 さて、ZZトップはまだまだ続く。今回は80年代の彼らのアルバムについて調べてみた。80年代に入って最初に発表されたアルバムは、1981年の「エル・ロコ」だった。71stbfw9t0l__sl1102_

 これは彼らにとって7枚目のスタジオ・アルバムにあたり、80年代に隆盛を迎える彼らの人気のプロローグを飾ったアルバムだった。
 このアルバムを聞いたときに思ったのは、今までのブルーズ臭のする楽曲が目立たなくなったということだった。

 冒頭の"Tube Snake Boogie"は相変わらずのブギー調の曲で、安心して聞くことができる。こういう曲を聞きながら、春の花が咲いているドライブコースを運転すれば、ご機嫌というものだろう。ディストーションのあまりかかっていないシンプルなギター・ソロが余計にかっこよく聞こえてくるから不思議なものだ。

 続く、"I Wanna Drive You Home"はミディアム調のブルーズ・ロックで、これもまた予定調和的な音楽だ。次の"Ten Foot Pole"ではエフェクターのかかったギターが印象的だった。後半のギター・ソロをもっと聞きたいと思うのだが、ビリーのギター演奏は上図なのに、いつもフェイド・アウトしてしまうような気がする。

 意外だったのは、4曲目の"Leila"だった。曲名からして、クラプトンの名曲を思い出させてくれるのだが、これがなんとまあ、超ポップな曲なのである。
 何しろスティールギターがフィーチャーされていて、70年代後半のウエストコースト風に仕上げられている。ビリーの声までソフト&メロウな感じで、シャウトすらしていない。今までのZZトップの曲から見れば、ちょっと異質な感じがしてならない。81kur02kz2l__sl1272_
 5曲目の"Don't Tease Me"では再びZZトップの音楽観を耳にできるのだが、次の"It's So Hard"では、70年代後半のイーグルスやポコのようなミディアムスローの曲になっていて、またまたビックリした。
 曲自体は悪くないのだが、何というか最初からヒットを狙っているような、あるいは、ナイトクラブで演奏されるような、そんな感じの曲なのである。

 そして"Pearl Necklace"もまたちょっと違う感じがしていて、これはチープ・トリックやカーズのようなポップ・ロックのバンドが演奏する曲だと今でも思っている。
 ちなみにビルボードのシングル・チャートでは、"Leila"が77位、メインストリームロック・チャートでは、"Pearl Necklace"は28位だった。

 一番の問題作は、2分44秒の"Groovy Little Hippie Pad"だろう。この曲に初めてシンセサイザーが使用されたからだ。正確に言えば、前作の「皆殺しの挽歌」でも少しだけ使用されていたので、初めてとは言えないのだが、でも曲全体に目立つように使用されたのはこの曲が初めてだろう。
 これはこの時のプロダクション・エンジニアだったリンデン・ハドソンのアドバイスによるもので、当時の流行りを取り入れたことと、それによって曲やアルバムが目立つことを狙ったものであった。

 そのせいか、このアルバムは、チャートで17位まで上昇して、ゴールド・ディスクを獲得した。イギリスでも88位に顔を出して、これは1975年の「ファンダンゴ!」以来のチャート・インになった。ちなみに、「エル・ロコ」とは“気のふれた人”という意味のスペイン語らしい。

 ただ、個人的にはどうしても受け入れ難かった。今までのブルーズ・ロックやブギー調の曲は、悪くいえば、どこを切っても金太郎飴っぽいワン・パターンに陥りやすかったが、それでもZZトップならではの個性的で、ノリのよい雰囲気の曲が多く、個人的に大好きだった。

 それが、急にシンセサイザーで色づけたり、ウエストコースト風のAOR軟弱路線に走ったような気がしたのだ。バラエティに富んでいると言えば聞こえはいいが、昔からのファンには方向転換したと思ったのではないだろうか。

 そんな考えを見事に吹き飛ばしたのが、1983年の「イリミネイター」だった。このアルバムは売れに売れた。どのくらい売れたかというと、当時のアメリカだけで650万枚以上、今では1000万枚以上の売上げを記録しているし、アルバム・チャートでは全英3位、全米9位、アルバム・チャート内に135週以上にわたって留まっていた。約3年近くチャート・インしていたことになる。91hxfcfciol__sl1500_

 この大ヒットのおかげで、彼らはアメリカのバンドから世界的に有名なバンドへと成長していった。
 皮肉にもヒットの要因は、ZZ風シンセサイザーやドラム・マシーンの活用、もしくはテクノ風ZZトップの曲が新鮮に響き、それまでのファンのみならず、新しいファン層の開拓にも成果があがったからだ。

 このアルバムからは5曲がシングル・カットされ、特に、1984年に発売された"Legs"には、一聴してわかるようにシンセサイザーやシーケンサーが使用されていて、大人も子どもも受け入れていき、これが全米8位にまで上昇してしまった。

 “ブルータス、お前もか”という心境だったのだけれど、でも聞けば聞くほど気持ちよくなってくるのである。ZZトップらしい疾走感というかノリの良さは備わっているし、ギター・ソロも含まれているし、オールド・ファンにも受け入れやすい要素は確かにあった。

 まあ、ZZトップがディスコ・ミュージックにだけは走らなくてよかったと胸を撫で下ろしたのだが、"Legs"や"Thug"、"TV Dinners"などのアルバム後半の曲には、正直、違和感だけは残ったのである。71d3tuzzbl__sl1262_

 そんな彼らが、さらに柳の下の二匹目のドジョウを狙ったのが1985年の「アフターバーナー」だった。
 最初の3曲を聞いただけで、これは売れると思った。実際に、"Sleeping Bag"は全米シングル・チャートで8位、"Stages"は全米21位、"Woke Up With Wood"はメインストリーム・ロック・チャートで18位まで上昇していた。

 それ以外にも、お涙頂戴のバラード"Rough Boy"、タイトル通りのロックン・ロール"Can't Stop Rockin'"、ギターよりもシンセが目立つ"Velcro Fly"、アルバムの最後を飾っている"Delirious"などもシングル・カットされていて、全曲シングル・カットされてもおかしくないと思われるほどのアルバムだった。71w5lxskh0l__sl1400_
 だから目をつぶってZZトップと思わないで聞けば、確かにすごいアルバムだと納得できたし、売れても当然と思ったのだが、これがZZトップだと思うと、何となくもの哀しくなったのである。

 例えて言えば、初めて90125イエスを聞いた時の反応に近いと思う。「危機」や「海洋地形学の物語」を聞いた後で「ロンリー・ハート」を聞くと、どういう反応をするだろうか。往年のファンと新しいファンは、当然そのリアクションは違ってくるだろう。そんな感じなのだ。

 そして、このアルバムもまた売れた。アルバム・チャートでは全英2位、全米4位、ニュージーランドでは3週にわたって1位を記録している。
 確かに当時はこういうシーケンサーを使っての打ち込みやドラム・マシーン系の音楽が全盛期だった。シカゴ、スターシップやハート、a-haなど、当時のチャートの上位を占めていたバンドの楽曲は、たいていこういう傾向を示していた。そういう時代だったのだ。71cwuafsyql__sl1256_
 そして80年代最後のアルバムが「リサイクラー」だった。これは前作から約5年たった1990年に発表された。“シンセ三部作”の最後を飾るアルバムだったものの、前作の「アフターバーナー」よりはシンセサイザー等の使用度が下がっていたため、個人的にはまあまあ気に入っている。

 ただ、このアルバムも売れた。全英アルバム・チャートでは最高8位、全米では6位を記録したし、アメリカではプラチナ・ディスクに認定されている。
 シングルもアルバム10曲中6曲もカットされていて、そのうちメインストリーム・ロックのチャートでは、"Concrete and Steel"、"Doubleback"、"My Head's in Mississippi"が1位を、"Burger Man"が2位を獲得した。91rjnz1pevl__sl1500_
 また、"Doubleback"は映画「バック・トゥ・ザ・フューチャーpart3」の主題歌にも使用され、映画のヒットとともに、シングル、アルバムともに売れるという相乗効果を発揮した。80年代はロック・ミュージックが映画音楽に使用されて映画も音楽も売れるという、わかりやすい傾向があった。ある意味、幸せな時代だったのだ。

 また、このアルバムでは、"Give It Up"のような前作のアウトテイクのような曲はあるものの、以前のような露骨なシンセサイザー等の使用は控えられていたので、オールド・ファンにも受け入れやすかったのだろう。

 同時に、"2000 Blues"のような現代的なスロー・ブルーズも収められていたことから、俺たちのZZトップが戻ってきたぞという感覚があったのだろう。ターニング・ポイントのような少しだけ原点回帰し始めたような雰囲気があった。A14j5zmuxjl__sl1500_
 とにかく、この80年代に、時流に乗ったZZトップ一行は、アメリカのバンドから世界を代表するバンドへと成長していった。それは自分のようなZZトップのファンからすれば、好き嫌いは別として、確かに喜ぶべきことには間違いないのであった。


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