« 21世紀のZZトップ | トップページ | エンブレイス »

2018年5月 7日 (月)

キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン

 滅多にないことなのだけど、CDの再生ができないということがあった。これは車の運転中に起きたことで、古くて汚れたCDならともかく、新品のCDでは珍しいと思った。でも、今までの経験でも何回かはあったので、これは相性の問題なのだろう。

 車のCDデッキも購入して10年以上にもなるので、ひょっとしたらCDデッキの不具合かもと思ったのだが、ほかのCDが再生できたのでデッキのせいではないようだ。

 ということは、どう考えてもCD自身の問題なのだろう。車のデッキとの相性が悪いせいで再生できないだろうと思って、家にあるCDプレイヤーでかけたら無事に音が鳴った。やはり車のCDとのマッチングがよくなかったに違いない。

 ところで、その問題のCDが、イギリスのバンド、キャットフィッシュ&ザ・ボトルメンの「ザ・ライド」だった。2016年の春5月に発売されているから、もう2年前になる。しかし、とりあえずは彼らの最新アルバムだし、今のイギリスのギター・バンドを代表するアルバムだと思っている。

 全11曲でトータル・タイムが39分49秒という短さが、いかにも若々しさを感じさせるし、若者らしい潔さが漂っている感じがしてならない。51ln3wvdal
 バンドは4人で構成されていて、しかもシンプルに、ボーカル、ギター、ベース、ドラムスという古典的なものである。一応、メンバー名を下に記すことにする。

ヴァン・マッキャン(ボーカル)
ジョニー・ボンド(ギター)
ベンジー・ブレイクウエイ(ベース・ギター)
ボブ・ホール(ドラムス)

 彼らは、イギリスの北ウェールズのランディドノという街出身で、2007年に結成された。中心メンバーはボーカル担当のヴァンで、彼と元ギタリストの2人で活動がスタートした。
 当初はアマチュア・バンドのような活動が主で、地元のクラブやパブを中心に演奏活動を続けていたが、ドラマーが交代してから彼らを取り巻く環境が変わったようだった。

 2013年には、マイナー系列のレコード会社から"Homesick"を含む3枚のシングルが発表されて話題となり、翌年には天下のアイランド・レコードと契約をしてそこからデビュー・アルバム「ザ・バルコニー」が発表された。

 ところが、やっとこれからメジャーで活動できるという時に、ギタリストのビリーが脱退してしまった。彼はヴァンにもギターの手ほどきをしてくれたのだが、このバンドでの活動の意義を見失ってしまったようだった。
 結局、新ギタリストのジョニー・ボンドが加入して、再び活動を始めた。イギリスを含むヨーロッパ・ツアーを始め、最大の売り込み先であるアメリカへも足を延ばしてライヴ活動に取り組んでいった。

 自分はデビュー・アルバムの「ザ・バルコニー」は未聴なので何とも言えないのだが、チャート・アクションで見ると、全英アルバム・チャートでは10位、アメリカのビルボードでは121位だった。ただ、アメリカのロック・アルバム・チャートでは13位になっていたので、それなりには売れたようだ。

 このチャートの結果に気をよくした彼らは、新メンバーでさらに気合を入れて新作を作っていったようだ。916kvjqoe1l__sl1500__2
 当初はメディアもそんなに彼らをプッシュしていなかった。イギリスのメディアは新しいバンドに対しては冷たくて、例えばクィーンがデビューしたときのニュー・ミュージカル・エクスプレス誌は、彼らを“しょんべん桶”と称し、『このバンドのアルバムが売れたら帽子でもなんでも食ってやる』とまでレビューしていた。

 そういう伝統を背負っているイギリスのメディアは、当初の無視から徐々に注目を寄せ始め、ついに“ベスト・ニューカマー2014”に認定した。また、2016年のブリット・アワードでは、“ブリティッシュ・ブレイクスルー・アクト賞”が授与されている。

 今さら“ブレイクスルー”(新人賞)と言われても彼らは戸惑ったと思うのだが、それもこれもこまめにイギリス中をツアーした結果だろうし、イギリス国内だけでなく、アメリカ国内でも殺人的なライヴ・スケジュールを組んでいったからだろう。

 だからセカンド・アルバム「ザ・ライド」もイギリスではなく、アメリカのロサンジェルスで録音されている。
 この時のプロデューサーは、デイヴ・サーディという人で、彼はフォール・アウト・ボーイからZZトップのようなアメリカン・ロック・バンドからスノウ・パトロールやゴリラズのようなブリティッシュ・バンドまで幅広く手掛けるアメリカ人だった。

 彼はギター・ロック・バンドを手掛けて世界的に売り出すことを得意にしており、キャットフィッシュ&ザ・ボトルメンのメンバーの目指す方向性と一致したから起用されたのであろう。

 実際、このセカンド・アルバムには、若者が求めるような切迫感、焦燥感などがギューギューに詰め込まれていて、何度聞いても聞く側にもその雰囲気が伝わってきて、思わず気持ちが入ってしまう。
 それに、グッド・メロディーもまた良い。こちらも聞いていて思わずハミングしてしまうようなそんな感じなのである。51rby0ow6l
 “ザ・ビートルズの再来”とまでは言えないけれど、初期のビートルズの持っている疾走感やメロディ・センスを兼ね備えているのは確かで、イギリスのギター・バンドとしてのDNAを所持していることは間違いないだろう。

 ただ残念なことは、印象的なギター・ソロがないことだ。これはこのバンドだけの問題ではなくて、90年代以降のバンドに共通している点だ。
 60年代や70年代は、ある意味、“ギタリストの時代”と言ってもいいほどで、有名なバンドには必ず偉大なギタリストが存在していた。そして、その人の奏でるギター・サウンドには甘美なメロディのみならず、印象的なギター・リフやフレーズが含まれていたものだ。

 ところが、そういう時代は過ぎ去ってしまったのか、90年代のオアシスでさえもメロディアスな佳曲は多いが、印象的なギター・フレーズを挙げろと言われると、ちょっと躊躇してしまうのである。

 だからこのアルバム「ザ・ライド」でもその傾向は同じで、ギターは搔き鳴らされてはいるものの、ギター・フレーズには乏しい。
 しかし、それをグッド・メロディと特徴的なソング・ライティングで補っている点は、とても新人バンドとしては(そんなに新人ではないけれど)優れていると思っている。

 特に、4曲目の"Postpone"の転調の仕方や5曲目の"Anything"の哀愁味のあるメロディラインや緩急つけたリズム、エンディングのファズをかけたギター・ソロなどは、シングル・カットに相応しいと思ったのだが、なぜか違う曲がシングルになっていた。

 ちなみに、アコースティック・ギター1本で歌われる"Glasgow"もある。なぜかこの曲はこのアルバムからの3枚目のシングルに選ばれていて、イギリスのチャートでは128位と低迷した。なぜこの曲を選んだのか、ちょっとそのセンスが分からない。

 "Red"というと、あの有名なプログレ・バンドの名曲を思い出してしまうのだが、このアルバムの中の"Red"も規模は異なるものの、ドラマティックで性急な曲構成や畳み掛けるドラミング、空間を生かしたエコー・サウンドで盛り上げるギターなどは、このバンドがただものではないことを教えてくれている。

 このアルバムにはもう1曲アコースティックの曲があって、こちらの方がオアシスっぽくてヒットしやすいと思った。
 "Heathrow"という曲なのだが、中間部にエレクトリック・ギターが鳴っているだけで、全体としてはアコースティックなのである。"Glasgow"も"Heathrow"も地名なのだが、個人的には"Heathrow"の方がシングル・ヒットしそうな気がした。

 ともかく、このアルバムは全英で1位、全米でもビルボードのアルバム・チャートで28位を記録した。これはイギリスの新人バンドとしては(新人ではないと思うけれど)、異例のヒットである。A1f6ktkne8l__sl1500_
 その後彼らは、イギリス国内ではオープニング・アクトからヘッドライナーに昇格して、ツアーを続けているようだ。

 自分の車のCDデッキでは聞けなかったけれども、このアルバムは傑作アルバムだったと思っている。キャットフィッシュ&ザ・ボトルメンは、今後も目の離せないバンドのひとつなのである。


« 21世紀のZZトップ | トップページ | エンブレイス »

ブリティッシュ・ロック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/257206/73168590

この記事へのトラックバック一覧です: キャットフィッシュ&ザ・ボトルメン:

« 21世紀のZZトップ | トップページ | エンブレイス »