« キャスト | トップページ | ジェイムス・モリソン »

2018年7月23日 (月)

ザ・グリム・ノーザン・ソーシャル

 さて、90年代から2000年代にかけて活躍した?というよりも話題になった、もしくは存在していたブリティッシュ・ロック(ポップ)・バンドの第6回は、スコットランドのグラスゴー出身のザ・グリム・ノーザン・ソーシャルが登場する。

 とにかくこのバンドについては、資料が極めて少ないので何とも言えない。どこまで書けるかわからないが何とか努力してみることにした。Maxresdefault
 はっきり言って、このバンドを知っている人は、少ないような気がするのだがどうだろうか。彼らの唯一のアルバムと思われる「グリム・ノーザン・ソーシャル」は2003年に発表された。当時のレコード会社であるテイチク・エンタテインメントによるキャッチ・コピーによると、“コステロもその才能を認めた、グラスゴー発、グリム・ノーザン・ソーシャル、デビュー‼ ソウルフルで華やかなボーカル、そしてプレイフルな旋律は伝説的な60年代を彷彿させる。”とあった。

 確かにこのバンドは、エルヴィス・コステロや同郷のコズミック・ラフ・ライダーズなどのミュージシャンやバンドのオープニング・アクトを務めていたから、その才能は周りの誰もが認めていたのだろう。

 それにこのザ・グリム・ノーザン・ソーシャルというバンドは、はっきりいってボーカル&ギターのユアン・マクファーレンのソロ・ユニットといってもいいだろう、そんな気がする。
 たとえば、すべての楽曲はユアンが手掛けているし、バンド・メンバーもユアンの募集によって集まったからだ。Thegrimnorthernsocialglastobandfina
 ユアンは若い頃からミュージシャンを志していて、ロンドンでは“ストーンホース”というバンドを結成して活動していたらしい。
 結局、そのバンドの活動に見切りをつけてグラスゴーに戻ったユアンは、友人のキーボード奏者であるアンディ・コーワンと連絡を取りながら曲を書きためていった。

 そして、残りのベース奏者やドラマー、リード・ギタリストを新聞広告で募集してバンドを結成した。2000年頃のようだ。
 彼らは地元のパブなどでライヴ活動を続けながら、様々なフェスにも参加していた。そしてスコットランドの音楽フェスティバル“In the City 2001”では「最優秀未契約バンド」に選出されている。

 そして翌年には、ワン・リトル・インディアンとアルバム契約を結ぶことができ、プロのバンドとして活動を開始した。
 ユアンはこう述べている。「僕たちはポップ・バンドだけど、いわゆる60年代のポップ・バンドに近いんだ。決して商業主義的なポップ・バンドじゃないっていう。例えばビートルズやビーチボーイズ、U2といったバンドに近いんだ。U2はロック・バンドだけど、それと同時にポップ・バンドでもあるよね。だから、僕たちのアルバムが当てはまるのは、そういうジャンルだと思う」

 ユアンが尊敬するミュージシャンは、ジョン・レノンとデヴィッド・ボウイだそうで、そういえばこのアルバムにも、どことなくそんな雰囲気が漂っているような気がする。
 彼の歌声は、どことなくジョン・ライドンにも似ているし、曲によってはデヴィッド・ボウイにも似ている。また、そう思わせるような曲調も備えているのだ。

 2003年にデビュー・アルバム「グリム・ノーザン・ソーシャル」を発表したのだが、11曲と2曲のヒドゥン・トラックが含まれていた。51e6wqe7mdl
 冒頭の"Urban Pressure"は、80年代のようなチープなシンセとテンポのよいリズムをバックにジョン・ライドンがクィーン&デヴィッド・ボウイの"Under Pressure"を歌っている感じだ。曲自体もかの曲を意識して作られたような気がしてならない。

 曲間もなく次の曲"The Changes"が始まるのだが、この曲名も何となくデヴィッド・ボウイの曲名をパクったのではないかと勘繰ってしまう。
 曲調も焦燥感を湛えているし、歌い方もデヴィッド・ボウイを意識していることは間違いないようだ。ここまで来ると、グラスゴー出身のパロディ・バンドかという気もしないではない。

 3曲目の"Maybe Its Time"も曲間がないので、いきなりやってくる感じだ。ただ、この疾走感というか切迫感というか、こういうフィーリングを持ったバンドも珍しいのは事実で、若返ったジョン・ライドンが久しぶりに暴れまくっている感じがした。遅れてきたグラスゴー発のパンク・バンドなのかもしれない。

 とにかく冒頭の3曲のインパクトが強すぎるのだが、こうなると残りの曲も期待が高まってくる。"Star"という曲ではトミー・リーガンという人の演奏するエレクトリック・ギターがスパイダーズ・フロム・マーズのミック・ロンソンのそれに似ていて、思わず頬が緩んでしまった。

 続く"Snap the Imposters"には“ペテン師どもに噛みつけ!”という邦題が付けられていて、6分44秒もある長いスローな曲に仕上げられている。インストゥルメンタル部分では、ちょっとしたプログレッシヴ・ロック風味が備わっていて、やっとオリジナリティが出せたのかと思ってしまった。

 でもよく聞くと、センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンドのような感じがしてきて、そういえばアレックス・ハーヴェイ自体もグラスゴー出身だったということに気づいてしまった。グラスゴーという場所は、そういうドラマティックでシアトリカルな音楽性を有している土地柄なのだろうか。

 それに歌詞の中に、"que sera sera"と出てくるのだけれど、これはアレックス・ハーヴェイも歌っていたような記憶がある。ユアンはアレックス・ハーヴェイの精神性もまた受け継ごうとしているのだろう。

 5曲目と6曲目の"New Rage Hope Song"の曲間もなくて、大掛かりで時代的な曲が始まる。なるほど、やっぱりアレックス・ハーヴェイだ。彼は1982年に亡くなっているから、ひょっとしたら彼の生まれ変わりなのかもしれない、ユアン・マクファーレンという人は。
 あるいは、幼い頃に体験したアレックス・ハーヴェイの音楽を記憶していたとか、ユアンの両親がアレックス・ハーヴェイのファンだったとか、何となく関連性があるような気がした。

 7曲目の"Honey"という曲は最初にシングル・カットされた曲で、確かにシングル向きの曲だと思う。U2のボノが売れ線ポップを歌うとこうなりますよ、とでも言いそうな感じで、疾走感もあるし、声質もわざと似せているかのようだ。

 一転して"Clash of The Social Titans"はバラード曲で、名曲とは言えないけれど、けっこうイケてる曲。印象度も深い。何しろ曲の4分あたりからストリングスが使われていて、何となく映画かドラマのテーマ曲にもなりそうな雰囲気なのだ。

 "Gasoline Queen"という曲もややスローな曲で、アルバム前半の疾走感が後半に来て急に穏やかになってしまった。突然、バラード歌手にでもなったようだ。
 この曲は、前の曲"Clash of The Social Titans"よりもさらにメロディラインが美しく磨かれていて、そう考えるとユアンという人は、コステロも推薦するように優秀なメロディメイカーなのかもしれない。

 10曲目の"Money"という曲に来て、やっとアルバム前半のパワーとポップネスを発揮してくれた。この曲も単なるポップ・ソングではなくて、よく練られたメロディとSEも交えてのアレンジメントが曲の価値をさらに高めている。
 "Money"という曲は急に終わり、続いてブロンディの"Sunday Girl"のワン・フレーズが歌われて最後の曲"Favourite Girl"が始まる。

 ただこの曲は12分40秒もあって、本編の曲とヒドゥン・トラック2曲が含まれているから聞きごたえがある。"Favourite Girl"自体はジョン・ライドンが歌いまくっているような4分40秒くらいの曲で、続いて"The Grim Northern Social"と"Elevator Rage"という曲が始まる。

 どこからどこまでが"The Grim Northern Social"で"Elevator Rage"なのかよくわからないのだが、オルタナ系のようなざらついた感じの曲が5分10秒くらい続くので、このボーカル入りのややゆっくりとした曲が"The Grim Northern Social"なのだろう。
 もう一方の"Elevator Rage"の方は1分くらいの、曲というよりはサウンド・コラージュのような感じだった。71pdbqupail__sl1223_
 ユアンは、このアルバムの主なストーリーはどんなものなのかという質問に対して、次のように答えている。“基本的には、人生は短いってこと、でも明日は今日よりもいい日である可能性があるってことかな”

 この言葉通りに、このアルバム1枚で表舞台から消えてしまったバンドだったが(たぶん)、ユアン自身はその後も音楽活動を続けているようだ。
 おそらく地元では熱狂的に受け入れられたバンドだったのではないだろうか、ただ、オリジナリティーという面では、ワールドワイドで注目を集めることはできなかった。

 いい意味でも悪い意味でも、彼らは、スコットランドのグラスゴーという土地柄を反映していたバンドだったようだ。


« キャスト | トップページ | ジェイムス・モリソン »

ポップ・ミュージック」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/257206/73859223

この記事へのトラックバック一覧です: ザ・グリム・ノーザン・ソーシャル:

« キャスト | トップページ | ジェイムス・モリソン »