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2018年8月 6日 (月)

ザ・セイルズ

 このバンドも非常に気になるんだけれども、実態がよくわからない。いろいろと調べたにもかかわらず、よくわからい。このネット全盛時代にヒットしないのだから、もはや過去の遺物と言っていいのかもしれない。

 このバンドというのは正確に言うと、イギリスのザ・セイルズというデュオ・グループのことだ。それに、過去の遺物といっても、結成されたのは2003年の終わりごろだし、活動を始めたのは翌年だった。そしてアルバムを発表したのは2006年だ。そんなに昔の話ではない。

 ザ・セイルズは、クーラ・シャイカーやトラヴィス、オーシャン・カラー・シーンなどと同時期に活動をしていた。彼らのツアーに同行してオープニング・アクトを務めたりしていた。それでも記録に残っていないというのは、要するに、売れなかったからだろう。

 アルバム「ドラム・ロール・プリーズ」の国内盤の解説によると、中心人物はマイケル・ガリアーノという人で、アルバムの楽曲すべてとプロデュースを行っている。曲もほぼ一人で歌っているのだが、なぜかサラ・キーリーという女性と知り合って、このバンドを結成したようだ。49181172215350450_600x600r
 サラ・キーリーという人とどういう関係かはわからないが、一般的には夫婦デュオと言われている。解説書にはそこまでは書かれていなくて、単なる音楽的なパートナーと書かれているだけだった。
 自分には関係ないのでどうでもいいのだが、国内盤のボーナス・トラックにはサラが歌う曲"Best Day"が収録されていて、バックのストリングスの方が目立っていた。そんなに上手という感じはしなかった。

 マイケルは、エピックというバンドのリーダーで2枚のスタジオ・アルバムを発表している。その後バンド活動の限界を感じたマイケルは、バンドを解散させ、ソロ活動を始めたのである。
 そのエピックというバンドの音楽性は、ポップ・ソングのようなロック・ミュージックのようなあまりはっきりしなかったようで、だから日本でも知名度がなかった。この時に、少しでも売れていたなら、もっと彼の経歴が分かったのだろうが、今となっては是非もないことである。

 ただ元々、彼の音楽観の基本は、ザ・ビートルズやザ・バーズのような60'sのポップス性を備えていたようで、ザ・ビートルズのカバー・バンドだった"The Battles"ではジョン・レノン役を演じて歌っていた。このカバー・バンドの"The Battles"は、2003年のフジ・ロック・フェスティバルにも出演していて、その時集ってきたファンを魅了したようである。

 これは定かではないのだが、マイケル・ガリアーノで検索してみると、“Let It Be”というタイトルで、世界中を演奏している様子が出てくる。今年はアメリカからアジアを公演して回っているようで、6月には日本にも公演に訪れていた。
 ひょっとしたら、この人がマイケル・ガリアーノなのだろうか。決定的な証拠がないので、よくわからないのである。Michaelgalianoletpremieremunichhwqn
 とにかく、マイケルとサラはイギリス・デビューする前に、アメリカで「ザ・セイルズ」というアルバムを発表している。これは、エピック時代のことを知っていたアメリカのニューヨークにあるレインボウ・クォーツ・レコーズのスタッフがマイケルの音楽性を気に入っていて、アメリカでのアルバム発表を手伝ってくれたからである。

 ただ、彼らはアメリカ国内のフェスティバル出演や東海岸ツアーを行ったものの、急いでアルバムを発表したせいか、楽曲の内容には満足していなかったようで、マイケルとサラは、イギリスに戻って納得のいくアルバム作りを行った。それが2006年に発表された「ドラム・ロール・プリーズ」だった。

 このアルバムは、まさに初期のザ・ビートルズや12弦のアコースティック・ギターの響きが美しいザ・バーズのサウンドが再現されたような感じのアルバムで、幾重にも重ねられた音の厚みは、まさに“ウォール・オブ・サウンド”のような印象を与えてくれた。

 それにアルバム全体の時間も37分少々しかない。21世紀の今の時代に、1枚のCDの時間が40分を切るというのは、あまり考えられない。このCDを購入した消費者は、費用対効果を考えた場合には、元を取れないと思ったのではないだろうか。

 しかし、実際に音を聞けば、購入者は納得すると思うのである。特に、フィル・スペクターの音楽やザ・ビートルズ、ザ・バーズ、ティーンエイジ・ファンクラブなどが好きな人にとっては、もうこれは感涙もののアルバムになるだろう。買って外れなし、いや、マストバイ・アイテムになるのは間違いないだろう。

 実際、自分もこのアルバムを買って聞いてみて、ビックリした思い出がある。まさか21世紀のこの時代に、ザ・バーズやザ・ビートルズが復活するとは思っていなかったからだ。
 とにかく、どこを切っても60年代風の“金太郎飴状態”なのである。だから、この音楽を聞いた自分よりは上の世代もまた、きっと随喜の涙を流したに違いない。O0471047714050267346
 まさにポップ・ソングの典型的な曲が"Best Day"で、ザ・バーズのアコースティック・ギターmeetsフィル・スペクターで、フィルがザ・バーズの楽曲をプロデュースしたらこうなりましたよという感じだ。2~3回聞いただけで、出だしやさびの部分は覚えてしまう素晴らしいメロディラインも備えている。
 "See Myself"もまた、キラキラとしたギターのアルペジオがはじけているし、64年のジョン・レノンだったらこういう曲を作るかもしれないという"Chocolate"も一聴の価値がある曲だ。

 個人的には、草原を駆け抜ける爽やかな風のような"Let's Get Started"は何度聞いても飽きないし、フィル・スペクター風の"Yesterday And Today Part1"、永遠のフォーレヴァー・グリーンといってもいいような"Peter Shilton"などが大好きで、とにかく何度でも何回でも聞き続けていたい曲で満ち満ちている。

 アルバムの後半には"Pleasure Bus"や"Liar"、"Dogs"などのギターが中心となった曲が続く。決してハードにはならず、だからといってポップ過ぎてもなくて、ほどよいエッジとマイルド感の調和が素晴らしい。60年代のマージービートから続くイギリスの伝統的なポップ感覚が息づいている。

 11曲目には"Yesterday And Today Part2"が置かれている。この曲は5曲目にあった同名曲"Part1"の続編なのだが、"Part1"と違ってテンポが速く、曲自体も1分26秒と極めて短い。アルバム構成としてもよく考えられているようだ。

 これら以外にも、バックのキーボードがE.L.O.風にアレンジされた"Sorry"や、抑えられた最初のヴァースから一気に盛り上がる曲がユニークな"Beautiful Day"など、まだまだ聞くべきところは多い。"Beautiful Day"などは、何となく70年代初期のジョージ・ハリソン風で興味深い。

 とにかく、マイケル・ガリアーノのこのユニットは、この1枚のアルバムで終わらせるにはもったいない。しかし、結果的には続編が作られなかったということは、マイケル自身がこのユニットをあきらめたということだろう。
 商業的な期待に応えられなかったのか、自分たちの音楽に満足できなかったのか、はたまたサラとの関係が悪化してパートナーシップを解消したのか、その理由はわからない。

 個人的には大好きなバンドというかデュオだったし、アルバム自体も優れていると思っている。現時点でのマイケル・ガリアーノの消息がはっきりしないように、このアルバムもまたひっそりとポピュラー・ミュージックの歴史の流れの中に消えていくのだろう。

 とりあえず、今回のザ・セイルズをもって、90年代から2000年代に登場したマイナーなブリティッシュ・バンドの特集を終わりたいと思う。


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