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2018年12月31日 (月)

師匠と弟子が語るジェスロ・タル

師匠:いよいよ今年も終わりじゃな。平成の大晦日も今日が最後じゃ。やはり最後に相応しく今年はこのアルバムで締めようかのう。一年の終わりに一番ふさわしいアルバムじゃ。

弟子:それがジェスロ・タルですか。なんで一年の締めくくりがタルのアルバムなんですか。

師匠:お前は知らんのか。今年はジェスロ・タルのデビュー50周年なんじゃ。奴らがデビュー・アルバムを出したのが1968年。ちょうど今から50年前じゃな。それで50周年を記念して3枚組のアルバム「50 for 50」を出したんじゃよ。71ailoklp8l__sl1145_
弟子:そうですか、もう50年ですか。最近はさっぱり音沙汰がありませんが、まだ活動していたんですね。それにしても3枚組のアルバムを出すなんて、今どき時代遅れではないですか。

師匠:何を言うとるんじゃ。タルは今でも現役じゃ。何も知らんとは、だから若造は困るわい。いいかい、今年は結成50周年という特別な年じゃったんじゃ。当然のことながら世界ツアーを行うじゃろ。しかも昨年は昨年で、“The Rock Opera”というタイトルで、ジェスロ・タルのレパートリーや新しい曲などを披露して回っておるのじゃ。ヨーロッパだけでなく、オーストラリアやアメリカまでも行っとるんじゃぞ。まだまだ現役バンドじゃわ。Jethrotull20181123sa1200x600
弟子:そうですかね。ジェスロ・タルは2011年に解散したんじゃなかったですかね。何かそういう話をネットで見たような気がするのですが。

師匠:よく知っておるのう、若いのに感心、感心。その通りじゃな。あの頃のジェスロ・タルはリーダーのイアン・アンダーソンと長年連れ添ったギタリストのマーティン・バレの関係が悪化していたんじゃ。マーティンも42年間もバンド活動に専念してきて、そろそろ自分のやりたいことを自由にやろうとしたんじゃろ。だから最後は、イアンとマーティンの双頭バンドになってしまったんじゃな。しかもバンドとしては、ブルーズからハード・ロック、フォークにクラシックまで幅広く手掛けてしまって、やりつくした感があったんじゃろ。

弟子:確か、イアンもマーティンもソロ・アルバムを発表していたという話ですが、それが何で、イアンはマーティン抜きで再結成したんですかね。

師匠:それはやはりジェスロ・タルというネーム・バリューじゃな。いくらイアン・アンダーソンの人気が高くともジェスロ・タルという名前には勝てんな。ニュー・アルバムを発表しても、ファンはタルの曲を聞きたがっていたし、イアンもタルの曲を歌った方がライヴ自体も盛り上がるということが分かったんじゃよ。ジェスロ・タルといっても、元々はイアン中心のバンドだったし、イアンとマーティン以外は、めまぐるしくメンバー・チェンジも行われてきたわけじゃから、それならジェスロ・タルと名乗った方がいいじゃろうというふうになったんじゃ。イアンもファンの要望に応えたわけじゃよ。

弟子:40年も一緒にやってきて、今さらという気もしないではないですが、もっと早くからわからなかったんですかね、自分たちの置かれている状況が。D1anqn5gkvs__sl1000__2
師匠:2003年にはイアンもマーティンもソロ・アルバムを出していたわけじゃから、バンド活動を続けながらソロ・アルバムを出すことについては、誰も何も言わんじゃろ。問題は、イアンがバンド活動以外でのソロでの活動が目立っていったことじゃろうなあ。

弟子:具体的にはどういうことですか。

師匠:例えば、元メンバーのデヴィッド・パーマーが指揮するオーケストラと南アフリカで一緒にライヴを行ったことがあるんじゃ、2000年ぐらいの時じゃな。2002年にはドイツでも似たようなライヴを行っておる。また、その年からは“Rubbing Elbows”というソロ・ステージを繰り返し行うようになって行ったんじゃよ。これはイアンとファンとの集いみたいなもので、アコースティックなタルの曲や自分のソロ・アルバムからの曲を披露していたんじゃな。だからこの頃のイアンは二足の草鞋を履いていたことになる。これは2005年頃まで続いたぞ。その後もバンドに女性バイオリニストを加えたり、2009年からはジェスロ・タルとイアン・アンダーソンの両方の公演を行ったりと、イアンも二重に活動することに疲れて行ったんじゃないかな。

弟子:だいたいジェスロ・タルは、スタジオ・アルバムは出してないでしょ。最後にいつ出したかは忘れましたけど、普通はスタジオ・アルバムを発表してからツアーに出て、新作からの曲をいくつか披露するというのが一般的でしょ。それなのにニュー・アルバムも出さずにツアーだけやるというのは、単なる“懐メロショー”にしかすぎませんよ。いくら自分がソロ・アルバムを出したとしても売れていませんからね、ライヴも盛り上がりませんよ。

師匠:それも一理あるな。そういう思いもあったんじゃろう。結局は、“一元化”したというわけじゃな。それで2011年の終わりから2017年まではソロ活動に専念して、結成50周年と今年のデビュー・アルバム発表50年を記念して再結成したというわけじゃ。それに、タルのスタジオ・アルバムは、2003年のクリスマス・アルバム「ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム」が今のところ最後じゃな。このアルバムは企画アルバムじゃから、オリジナルは1999年の「ジェスロ・タル・ドット・コム」まで遡るかもしれんな。因みに2017年に「ザ・ストリング・クァルテット」というストリングスを交えたタル名義のスタジオ・アルバムを出しとるが、内容的にはイアンのソロ・プロジェクトといった方がいいじゃろうなあ。

弟子:「ザ・ジェスロ・タル・クリスマス・アルバム」には過去のタルの曲が7曲ほど含まれていましたよね。それ以外も定番のクリスマス・ソングとかあって、ほんとに企画盤という感じがしました。イアンの創作能力は底をついたんじゃないですか、もう71歳ですからね。61hwt7cdyfl
師匠:何を言っとるんじゃい。まだまだ現役じゃよ。来年は自身のソロ・アルバムの発表とそれに伴ってのツアーも計画されているんじゃ。一歳年上のマーティン・バレの方も2013年から2015年まで毎年1枚ずつスタジオ・アルバムを出しとるし、今年も「ローズ・レス・トラベルド」というバラエティ豊かなアルバムを出しとるしな。女性ボーカリストを加えたり、ザ・ビートルズの曲を演奏したりしとる。まだまだ若いもんには負けんじゃろ。613wbswv27l__sl1200__2
弟子:それにしても50周年で3枚組アルバムってどういうことなんですか。ひょっとしてベスト盤じゃないでしょうね。いまさらそんなものを出しても売れないでしょう。ファンなら今までのアルバムは持っているでしょうし。何か新曲とかライヴ曲とか目玉となるような企画はあるんですか。

師匠:そうじゃな、"Teacher"はUSアルバム・ヴァージョンだし、"Minstrel in the Gallery"はシングル・エディットになっておったな。他にも"Critique Oblique"はスティーヴン・ウィルソンの手でリミックスされておったぞ。これは聞き物じゃろ。それにディスク1はブルーズや初期の楽曲がおもじゃし、ディスク2は70年代のトラッド中心の聞かせる内容になっておるな。さらには最後のディスク3では、エレクトリックでハードな曲が中心になっておる。さすが1988年にグラミー賞ハード・ロック/ヘヴィメタル・アワードを獲得したバンドは違うわな。

弟子:それだけで買う人なんかいますかね。よほど熱心なファンじゃないと手に入れようと思わないでしょう。やはり年を取ってしまうと、考え方もワンパターンになってしまうんですよね。「〇〇周年=ベスト盤」とか、ストーンズも似たようなアルバムを何枚も出しているし、やはり昔気質の人は似たような傾向に陥るんでしょうね。それに、1988年のグラミー受賞はメタリカと間違えたという説もありますし、誰がどう見ても聞いても、ミスマッチですよね。会場からはブーイングは出るし、イアン・アンダーソン自身も困惑していましたよ。だから、翌年からこの賞は廃止されてしまったじゃないですか。ハード・ロック部門とヘヴィ・メタル部門に分かれちゃいましたし。

師匠:いやいや、そうじゃなくて、このアルバムの選曲はイアン・アンダーソン自身がセレクトしとるのじゃ。50周年だから50曲じゃな。さらには国内盤が出ているということは、それだけ需要があると認められたわけじゃろ。ジェスロ・タルもまだまだ根強い人気を誇っておるのじゃ。だから国内盤には、日本のファンに向けてイアンの直筆メッセージが載せられているんじゃよ。81zn0bds8tl__sl1144_
弟子:直筆といっても印刷ですからね。それじゃなくて音楽で勝負してほしいですよね。イアンのソロもいいですけど、ジェスロ・タル名義で出してほしいですね。

師匠:ジェスロ・タルは昔からベスト・アルバムを出すのが恒例になっているんじゃ。70年代でも編集盤も入れて3枚の公式ベスト・アルバムを出しているぞ。イアンは定期的に過去を振り返ることで自分たちの音楽性を確認するとともに、これからの方向性を定めていく必要があるからと理由を述べていたな。その後も20周年、25周年、30周年と定期的に出しておるしな。もう習慣化しとるな。

弟子:要するに、ファン泣かせのバンドですよね。ベスト盤なら70年代から80年代、90年代から2000年代と、時系列で区切って出せば新たなファン獲得にもつながると思うんですよ。どのベスト・アルバムも同じような曲が収められているんじゃ、1枚あれば十分だと思うんですけど。

師匠:いろいろ言う前に、とりあえずはこの50曲を聞いて、その音楽性の豊潤さや多様性を味わってほしいな。一筋縄でいかんのがジェスロ・タルの凄さじゃよ。“半端ないって、ジェスロ・タルは”が合言葉じゃ。

弟子:何を言ってるんですか。私に“そだねー”を言わせたいんですか、今年の流行語じゃないんですからね。


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コメント

ジェスロ・タルとなると・・・私にとっては懐かしい過去の歴史の中にいるのですが、そうですか、まだまだ現役なんですね。ちょっとアプローチしてみたくなりました。
 さて、もう2019年を迎えてしまいました。
 今年もプロフェッサー・ケイ様の我が道を行くロックへの深掘りアプローチがじっくり継続され楽しませて頂けますようお願いします。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2019年1月 2日 (水) 12時10分

 ジェスロ・タルについては、1978年頃から聞き始め、以来、今日まで至っております。最近はライヴ活動中心のようですが、まだまだ頑張っています。私もイアン・アンダーソンに負けないように、現役で頑張りたいです。

 コメントありがとうございました。本年も風呂井戸氏にとって良い年になりますように願っております。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2019年1月 2日 (水) 12時25分

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします🎵昨年はジェスロ・タルで締めだったんですね。まだ現役だったとは😲私は年末にザッパのドキュメンタリーを見て、極めたいとCD を大人買い。機会が有れば教えて下さい。

投稿: 川崎の晴れ豚 | 2019年1月 3日 (木) 05時26分

 明けましておめでとうございます、川崎の晴れ豚さま。本年もよろしくお願い致します。
 さて、フランク・ザッパですか。ザッパは難しいです。一筋縄ではいきません。ロック・ミュージックの範疇を越えていて、むしろ現代アメリカン・ミュージックの中で考えた方が適切だと思っています。むしろ私の方が教えていただきたいくらいです。

 ロックやジャズや現代音楽などが混然一体となって洪水のように押し寄せてくる音楽です。それでも人気があるのですから、まさにモンスター級です。でも、まだここでは扱っていないので、ひょっとしたら近い将来に出てくるかもしれません。

投稿: プロフェッサー・ケイ | 2019年1月 3日 (木) 23時41分

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