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2018年12月10日 (月)

ライヴ・アット・リーズ

 “レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”シリーズの最終回である。前回はアメリカン・ロックを代表して、オールマン・ブラザーズ・バンドのライヴ・アルバムだったが、今回はブリティッシュ・ロックを代表して、ザ・フーのアルバムについて記したい。Thewho
 ザ・フーが初めて発表したライヴ・アルバムが「ライヴ・アット・リーズ」だった。これはザ・フーがイギリス北部にある地方都市の大学で行った公演をレコーディングしたものであり、最初からライヴ音源として発表することを意図して企画されたものだった。

 公演が行われたのは、1970年の2月14日である。ザ・フーは、前年の5月に歴史的名盤であるロック・オペラの2枚組スタジオ・アルバム「トミー」を発表していて、その後アルバムのプロモーションも兼ねてツアーで演奏して回り、アルバム全曲を披露することで彼らの人気はますます高まっていった。また、ツアーにはあのウッドストックでのライヴ演奏も含まれていて、彼らの人気はアメリカでも急上昇していった。

 このアルバムとツアーの成功で、彼らはそれまでのシングル・ヒット中心のロック・バンドから攻撃的で破壊的なステージングのみならず、文学的で哲学的なロック・バンドとして認められるようになったのだが、当時の彼らの最高のパフォーマンスを記録として残すと同時に、世の中に発表したのがこのリーズ大学でのライヴ演奏だったのである。

 この時の様子を、バンド・メンバーのピート・タウンゼントは、次のように語っていた。「このアルバムには、当時の俺たちの音には、並外れた流動性があるってことを証明しているんだ。恐ろしいほどのパワーが漲っていた。
 そして、ザ・フーにとって重要なことは役割が逆転していたってことだ。つまり、リード・ギターがベース兼ドラムスで、ベースとドラムがリード・ギターの役割を果たしていた。それでもベースとドラムは、リード・ギターに支えられてリズムをリードしていたっていうのかな。疑問に思うかもしれないけれど、この素晴らしいやり方がとてもうまく作用していた。8トラックでレコーディングしたわりには良く録れたと思うよ」Maxresdefault
 この「ライヴ・アット・リーズ」のプロデューサーも兼ねていたピートだから言える言葉だろう。このライヴ・アルバムに行きつくまでに、彼らはイギリスやアメリカで行ったライヴの模様をレコーディングしていたのだが、なかなか満足するものがなかったらしい。
 それで、彼らはリーズ大学で移動式のレコーディング・システムを持ってきて録音したのだが、万一、うまく行かなかったことを考慮して翌日もレコーディングを行った。これが世に名高い“ハル公演”である。

 結局、「ライヴ・アット・リーズ」は、1970年の5月に発表されたのだが、当然その時はレコード形式だったので、全6曲、約36分として収録された。
 それでもこのアルバムは、圧倒的な高評価を受けて、全英で3位、全米で4位を記録し、当時最高のライヴ・アルバムといわれていた。ちなみにその6曲とは、次のようなものだった。
サイドA
1.Young Man Blues
2.Substitute
3.Summertime Blues
4.Shakin' All Over
サイドB
1.My Generation
2.Magic Bus61dorxcsjjl__sl1184_
 今の時代からは信じられないのだが、たった6曲で“最高のライヴ・パフォーマンス”と呼ばれるくらいだから、どれだけ彼らのエネルギーというかパワーが凝縮されていたのだろうかと思ってしまう。それだけ彼らのライヴ・アルバムを待望する機運が高まっていたのだろうし、それだけでなく、実際にレコードを通して、凄まじい彼らのライヴ・アクトを経験することができたからだろう。

 そして、1995年に「“ライヴ・アット・リーズ”25周年記念アルバム」が発表され、それにはほぼ当日のセットリストに従って14曲が収められていた。41nlgxragml
1.Heaven And Hell
2.I Can't Explain
3.Fortune Teller
4.Tattoo
5.Young Man Blues
6.Substitute
7.Happy Jack
8.I'm A Boy
9.A Quick One, While He's Away
10.Amazing Journey/Sparks
11.Summertime Blues
12.Shakin' All Over
13.My Generation
14.Magic Bus

 御覧の通りに、オリジナル盤より8曲も増えている。これはやはり“レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”に認定されてもいいんじゃないかと思っている。71mdnkayiol__sl1194_
 ただここには、当時ツアーで演奏されていた「トミー」の楽曲は含まれていなかった。いや、正確に言うと、10曲目の"Amazing Journey/Sparks"は「トミー」に含まれていたので、それ以外の曲は収録されていなかったということになる。71l0lbkof2l__sl1257_
 それでもザ・フーのファンならば、「25周年記念エディション」でも十分満足できただろう。かくいう自分もこのCDは購入してしまった。
 ところが、それを凌駕する「“ライヴ・アット・リーズ”デラックス・エディション」が2001年に発表されたのだ。31周年記念だったのだろうか。51ue6cacudl
 このアルバムは2枚組になっていて、ディスク1が"Amazing Journey/Sparks"を除く全13曲、ディスク2は「トミー」全曲、全20曲が収められていた。
 オリジナルの「トミー」は2枚組、全24曲だったから、このライヴ・ヴァージョンでは4曲が削られていた。削られた4曲は次の曲たちだった。数字はオリジナル盤の曲順を意味している。
サイドB
2.Cousin Kevin
4.Underture
サイドC
8.Sensation
サイドD
4.Welcome

 アルバム「トミー」の楽曲は、実際にはディスク1の9曲目と10曲目に演奏されていた。だから「25周年記念エディション」では、その残滓として"Amazing Journey/Sparks"が残されていたのだろう。
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 また余談だが、このエディションでは、ディスク1における"Happy Jack"と"A Quick One, while He's Away"のボーカル部分をロジャー・ダルトリーが、"Heaven And Hell"のボーカルの一部をジョン・エントウィッスルが録音し直している。つまり25年後の声を入れたわけだが、全く違和感を覚えない。レコーディング技術が進歩したせいだろうか。

 ところが、である。これで終わったと思ったのだが、商魂たくましい、いやファンの心情に寄り添ったレコード会社は(なぜかポリドールが多いような気がするのだが)、2010年に今度は「40周年記念コレクターズ・エディション」を発表したのだ。

 これにはリーズ公演の次の日に行われた「ハル公演」(ハル・シティ・ホールにおける演奏)も含められており、ハル公演でのディスク1では"Magic Bus"が収録されていなかった。(ディスク2は全20曲で同じだった)
 また、「スーパー・デラックス・コレクターズ・エディション」というのも発表されていて、これには「リーズ公演」と「ハル公演」の合計4枚のCD、オリジナルLPに7インチ・シングル、豪華写真集などが備えられていて、お値段的には25000円以上もした。当然ながら、貧乏な自分は手を出していない。41skbdqml
 さらにさらに、2014年には音楽配信、いわゆるダウンロードして聞くことができるようになり、これは当時のセットリスト通りに全33曲を通して耳にすることができる。これも有料なのはいうまでもない。
 そして、2016年にはアナログのレコード盤でも入手することができるようになって全3枚組らしいが、自分はまだお目にかかっていない。

 次は紙ジャケ化とか、「50周年記念」とかになるのかもしれない。一体いつまで続くのかわからないが、“レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”については、「ライヴ・アット・リーズ25周年記念エディション」までで十分なように思うのだが、どうだろうか。

 というわけで、ミュージシャンたちも高齢化すると、なかなか新作を発表できないでいるが、その代わりに今まで表に出なかった曲などを含めた既発アルバムの再編集盤が発表されるのだろう。
 それにはスタジオ・アルバムよりも、当時の“熱狂”や“興奮”が詰まったライヴ・アルバムの方がふさわしいし、ファンもそれを望んでいるはずだ。

 まだまだ探せばこのテーマに相応しいアルバムは見つかるだろうが、きりがないのでこの辺で終わらせたい。みんなで、このアルバムやあのアルバムなどと、話題にしてみるのも面白いと思っている。


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