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2019年1月28日 (月)

ザ・ジェイホークス

 このバンドの名前を聞いて、てっきり日本のバンドのJ-Walkの兄弟バンドかと思っていた。アメリカのバンド、ザ・ジェイホークスのことだ。
 このバンドの最新アルバムを昨年の秋以降、よく聞いたものだ。自分でもこんなにハマるとは思ってもみなかった。

 このバンドのことは以前から気になっていたのだが、その名前やバンドの姿からカントリー系のバンドだと思っていたから、ちょっと手が出せないでいた。自分はカントリー系の音楽はちょっと苦手なのである。

 ところがある日、ラジオから彼らの最新アルバム「寂れたモーテルとズッと続く道と」の中の曲"Come Cryin' to Me"が聞こえてきて、これがまたグッとくる名曲だった。それで、このアルバムをネットで検索してみたところ、アルバム・ジャケット写真も哀愁をそそるもので、これはもう即買いだと思ったのである。71psql0czel__sl1110__2
 ちなみに、このアルバム・ジャケットの写真は、映画監督のヴィム・ヴェンダーズが撮影したものだという。そういわれれば、何となく彼の映画のワン・シーンのようだ。久しぶりにアルバム・ジャケットに魅せられてしまった。

 この2018年の最新アルバムは、彼らのスタジオ・アルバムとしては10枚目にあたり、もちろん新曲もあるが、そのほとんどは他のバンドやミュージシャンが取り上げた曲や彼らに提供した曲を自分たちで再演したものだった。というわけでもないだろうが、アルバムの充実度というか楽曲のレベルが高くて、だから1曲を聞いただけでもアルバム全体の雰囲気や様子などが伝わってきたのだろう。

 2曲目の"Everybody Knows"や4曲目の"Bitter End"などは、女性3人組のバンド、ディクシー・チックスの2006年のアルバム「テイキング・ザ・ロング・ウェイ」に収められていた。ザ・ジェイホークスのリーダーであるゲイリー・ルーリスと彼女たちで作った曲である。
 また、ディクシー・チックスのメンバーであるナタリー・メインズの2013年のソロ・アルバム「マザー」にも、"Come Cryin' to Me"が提供されていた。ザ・ジェイホークスとディクシー・チックスとは、交流が深いようだ。

 また、3曲目の"Gonna Be A Darkness"は、ボブ・ディランの息子であるジェイコブ・ディランとの共作で、アメリカのTV番組「トゥルー・ブラッド」で使用されたものだったし、7曲目の"Need You Tonight"はロサンゼルスのインディ・ロック・バンドのスコット・トーマスのソロ・アルバムで使用された曲だった。

 さらには8曲目の"El Dorado"はテキサス出身のSSWであるキャリー・ロドリゲスとの共作だし、続く"Bird Never Flies"はニューヨーク、ブロンクス出身のSSWアリ・へストの2007年のソロ・アルバム「ザ・ブレイク・イン」に収められていた曲だった。
 
 また、共作したものの、発表されないまま終わった曲もあって、今回のこのアルバムで初めて陽の目を見た曲も含まれている。5曲目の"Backwards Women"はナッシュビル出身のバンド、ワイルド・フェザーズと、6曲目の"Long Time Ago"はペンシルバニアのバンド、トニックのメンバーであるエマーソン・ハートと一緒に作った曲だった。

 ということで、全くの新曲というのは最後の2曲、10曲目の"Carry You to Safety"と11曲目の"Leaving Detroit"の2曲だけだが、それでもアルバム全体としては統一感があり、スローな曲は心に染み込んでくるし、ミディアム・テンポの曲でもしっかりとロックしているのである。ザ・ジェイホークスのリーダーであるゲイリー・ルーリスの作風が反映されているのだろう。決して歴史的な名盤とは言わないが、それでも一生に一回は耳を傾けるべき必聴盤だと思っている。71bea6jc8hl__sl1122__2
 ザ・ジェイホークスは、1985年にミネソタ州のミネアポリスで結成された。当時のメンバーは4人組だった。
・マーク・オルソン(ボーカル、ギター)
・ゲイリー・ルーリス(ボーカル、ギター)
・マーク・パールマン(ベース・ギター)
・ケン・キャラハン(ドラムス)
 バンドはマークとゲイリーの双頭バンドだった。マークが言うには、エヴァリー・ブラザーズやフライング・ブリトー・ブラザーズなどを聞きながら、ハーモニーの練習を重ねていったらしい。01fband_rehearsal_5
 日本盤でのデビューは7年後の1992年「ハリウッド・タウン・ホール~聖林公会堂」だった。全10曲で約42分、ミディアム・テンポの曲調が多くて、途中でまどろんでしまうこともあったが、確かに90年代のグラム・パーソンズあるいは丸くなったバッファロー・スプリングフィールドというか、初期のポコやイーグルスが持っていたカントリー・ロックのテイストがそのまま息づいているような内容だった。

 また、このアルバムのゲスト陣として、4曲目の"Two Angels"、5曲目の"Take Me With You"、10曲目"Martin's Song"のピアノにはニッキー・ホプキンス、それ以外の曲ではトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズのベンモント・テンチがキーボードを担当している。さらにチャールズ・ドレイトンもドラムスを担当していたが、どの曲かはわからなかった。

 当時の彼らは、ブラック・クロウズのオープニング・アクトとしてツアーに同行していて、その時には、このアルバムの中の曲をもっとブルージィーに演奏していたという。ただ、このアルバムについては、同じような曲調なので、ちょっと単調に感じる人もいるかもしれない。515ae0rkmbl
 このアルバムから3年後の1995年には、彼らの最高傑作と呼ばれている「トゥモロー・ザ・グリーン・グラス」が発表された。通算では4枚目のスタジオ・アルバムになるのだが、日本では2枚目のアルバムになった。

 このアルバムではメンバー・チェンジが行われていて、ドラマーが脱退して、新しくキーボード担当に女性のカレン・グロットバーグが参加している。ドラマーに関しては、この時はまだ決まっていなくて、スタジオ・ミュージシャンなどで代用していた。
 カレンは「寂れたモーテルとズッと続く道と」でも歌とキーボードを担当しているが、最初の加入以降、途中でバンドを抜けていた時期もあったようだ。

 このアルバムは“彼らの最高傑作”と呼ばれているように、確かに前作よりもロック的で、起伏に富んだ内容になっている。たとえば3曲目のファズ・ギターが前面に出ているロック的な"Miss Williams Guitar"、5曲目の"Real Light"という曲もあれば、一転して穏やかなバラード・タイプの"Two Hearts"という曲も収められていた。
 前作に引き続き、ベンモント・テンチもキーボードで参加していて、そういえば作風がトム・ペティ風になってきたなあとも感じた。トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズが好きな人なら、このアルバムはまさに必聴だろう。

 他にも、アコースティックな色合いの強い"Blue"、"Over My Shoulder"、グランド・ファンク・レイルロードの"Bad Time"をアコースティックに改変したものなど、ロック色もあるし、スティール・ギターが目立つカントリー・タッチの曲もあるし、幅広いファン層に訴えかける内容になっていた。61r8cqf5fl
 このアルバムの11曲目"Pray for Me"と13曲目"Ten Little Kids"には、ヴィクトリア・ウィリアムスという女性がバッキング・ボーカルを務めているが、彼女は多発性硬化症という治療法も見つかっていない難病に侵されていて、視力や運動に障害を伴っていた。
 ザ・ジェイホークスを始め、他のミュージシャンも彼女を応援していたが、ザ・ジェイホークスのメンバーで中心人物の一人マーク・オルソンは、1994年に彼女と結婚したのである。

 そしてその結果、マークはザ・ジェイホークスを脱退してしまう。理由は、妻のヴィクトリアの看護をするためだった。
 彼はその後、妻と一緒にジ・オリジナル・ハーモニー・リッジ・クリークディッパーズという3人組のバンドを結成し、アルバムを定期的に発表していった。

 ただし、2005年にマークとヴィクトリアは離婚してしまい、マークはソロ活動に専念するようになった。2010年には、再びザ・ジェイホークスに戻るのだが、アルバム1枚とそれに伴うツアーを行った後、2012年にはまた脱退してしまう。マークはソロ活動の楽しさを覚えたようだった。

 自分は昨年のアルバム「寂れたモーテルとズッと続く道と」から遡って、彼らの経歴やアルバムを知っていったのだが、彼らの最高傑作は「寂れたモーテルとズッと続く道と」だと思っている。確かに「トゥモロー・ザ・グリーン・グラス」も素晴らしいのだが、哀愁感や寂寥感は最新アルバムの方が優れていると思うのだ。

 こういう良質なアメリカン・バンドが活躍できる余地のある今のアメリカのミュージック界も、まだまだ捨てたものではないと感じている。


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