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2019年1月14日 (月)

グレタ・ヴァン・フリート

 新年を迎えての実質的な第一弾に当たる今回は、昨年末にヘヴィ・ローテーションしていたこのアルバムを紹介することにした。アメリカの新人バンド、グレタ・ヴァン・フリートのデビュー・アルバム「アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー」である。

 知っている人は知ってると思うけど、あのエルトン・ジョンが大絶賛をし、ガンズ・アンド・ローゼズが自分たちのツアーのオープニング・アクトに起用し、そしてあの伝説のバンドのボーカリストであるロバート・プラントまでもが、“彼らはかつての俺たちだ”と称えたと言われているバンドだ。B020
 メンバー構成は、基本的なロックン・ロール・バンドと同じボーカル、ギター、ベース、ドラムスだが、普通のバンドと違う点は、ボーカルとギターが双子の兄弟で、ベースはその弟という点だろうか。要するに、3兄弟とその幼馴染で構成されているのだ。
 しかも、メンバーの平均年齢が20歳というのだから驚きである。現時点では、ベース&キーボード担当のサムはまだ19歳ということで、ますますこれからが期待されるだろう。

・ジョシュ・キスカ(ボーカル)
・ジェイク・キスカ(ギター)
・サム・キスカ(ベース・ギター&キーボード)
・ダニー・ワグナー(ドラムス)

 彼らはアメリカのミシガン州サギノー郡のフランケンムースという場所で結成された。2010年の国勢調査によれば、人口約4944人という小さな町で、アメリカ人の間では世界で一番大きいクリスマス専用ショップがあることで知られているという。

 とにかく田舎町で、メンバーが子どもの頃は広大な草原で走り回ったり、ザリガニを釣りながら川下りをしたりと、自由な環境の中で育っていった。また、そういう自然環境のみならず、両親もR&B やロックン・ロールのクラシック・レコードを集めて聞いていたせいか、家庭環境でも音楽的下地を形成するために役立ったようだ。

 2013年にドラマーが交代したが、その前から"Cloud Train"、"Standing On"などの曲を録音していて、中高生の時から活動を始めていたことがわかる。
 2014年に"Standing On"がデトロイト地区の車のTVコマーシャルに使われたことから徐々に口コミでうわさが広がり、2016年にはiTunesで"Highway Tune"がシングル曲として発表され、翌年にはその曲を含む4曲入りEPが発表された。

 その後は、雪玉が転がることでだんだん大きくなるように、彼らの人気はうなぎのぼり、ライヴ会場もスタンディングの小さなクラブから1200人規模のイス席のホールにまで発展していった。

 そして、待望のフル・アルバム「アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー」が2018年の10月に発表されたのだ。輸入盤では10曲、国内盤は4曲のミニアルバム「ブラック・スモーク・ライジング」を含む14曲入りだった。51wkcuemlbl
 音楽性は多様で、ロックン・ロールからブルーズ・ミュージック、フォーク・ミュージックまで幅広いものだったが、一番驚いたのは、誰がどう聞いてもイギリスの伝説的なバンドの音楽性に似ている点だった。

 似ているというか、ギターのリフや入り方、ボーカルのジョシュの高音圧の金切りシャウト、アコースティック・ギターの柔らかな響きなど、完全にパクっているのではないかと思われるほどだ。
 だから人によっては、コピー・バンドとかキングダム・カムの再来などと少し軽蔑じみた言葉を投げていた。確かに聞く人によっては、それはその通りなのだろう。

 彼ら自身は、自分たちを“第二の〇〇”などとは思っていなくて、そういう似た音が出てくるのは、子どもの頃から過去のロック・ミュージックの洗礼を浴びていたからだという。例えば、ギタリストのジェイクは、ザ・フーやザ・ビートルズなどの60年代のブリティッシュ・ロックが好きのようだし、ボーカルのジョシュは、ボブ・ディランやジョン・デンヴァー、ジャニス・ジョプリンにウィルソン・ピケット、ジョー・コッカーなど幅広いジャンルに渡って影響を受けているとインタビューに答えていた。

  そんな彼らが発表したデビュー・アルバムが「アンセム・オブ・ザ・ピースフル・アーミー」である。このアルバムのテーマは、“人類の進化の旅や歴史上の教訓、平和、愛、調和”だそうである。それが全体を繋いでいて、しかも無意識的にそれらが生まれ、自分たちが創造したかったアルバムになったそうだ。Great
 とても新人バンドとは思えないほどの上質なアルバムである。1曲目の"Age of Man"はゆったりとしたブルージーな曲だが、やはり一番耳に飛び込んで来るのは、甲高いジョシュのボーカルである。“ロバート・プラントそっくりとか、意識しすぎ”と呼ばれても仕方ないだろう。

 それがよくわかるのが"The Cold Wind"だ。“Hey”、“Mama、Mama”というかけ声だけでなく、バックのドラミングもジョン・ヘンリー・ボーナムに似せているし、ベースもうねっている。スライド・ギターの入り方もジミー・ペイジに合わせているかのように聞こえてくる。
 3曲目のシングル・カットされた"When The Curtain Falls"も伝説のバンドが甦ったようだし、間奏のギター・ソロも弾きまくっている。できればもう少し長いソロを披露してほしかった。

 次の"Watching Over"はややスローなバラードっぽい曲で、このバンド、意外にバラエティに富んだ楽曲を用意したなと感心してしまった。この曲は“グレタ・ヴァン・フリート版 Since I've Been Loving You”だろう。

 このアルバムでポップな要素を持っているのは、"Lover, Leaver(Taker, Believer)"だろう。ポップというと誤解を招きそうなので、耳に残りやすいと言った方が適切かもしれない。あの偉大な伝説のバンドの曲で例えると、"Communication Breakdown"だろうか。"Living Loving Maid"までのポップ性はないと思う。

 後半の"You're The One"はアコースティック・ギターで導かれた爽やかな雰囲気を醸し出す曲で、この曲だけ聞けば、確かにアメリカン・バンドのような感じがした。間奏にジョン・ポール・ジョーンズのようなオルガンが聞こえてくるところがやはり伝説のバンドに似ていると言われる所以だろう。

 次の曲"The New Day"にもアコースティックな曲で、こちらはややテンポが速い。しかもバックコーラスも少しは聞こえてくるので、この辺は伝説のバンドとの相違点になるのではないだろうか。
 ジミー・ペイジ的スライド・ギターが聞こえてくるのが"Mountain of The Sun"だ。これもまたメロディラインがはっきりしていて、なかなか印象的な曲に仕上げられている。それに曲のアレンジもまた例の伝説のバンドの曲に似ている。途中の演奏が止んでボーカルだけの部分や、長いシャウトなどは本当によく似ていると思う。

 "Brave New World"は、またブルージーな楽曲に戻る。アメリカのロック・バンドでここまで湿った感じの雰囲気を出せるバンドはそう滅多にいないと思う。初期のエアロスミスやマウンテン、初期のグランドファンク・レイルロードなど、70年代のロック・バンドをどうしても思い出してしまう。

 10曲目の"Anthem"は、ほとんどアコースティック・ギターとスライド・ギターがメインの曲で、ジョシュのボーカルが際立っている。歌詞の内容も、世界とは世界を成り立たせているものを指していて、それは私たち一人一人なのだというメッセージ・ソングにもなっている。20歳そこそこの若者にしては、なかなか深遠な世界観を提示していると思った。

 ここまでの10曲は全体で約46分くらいで、こういうところも70年代のクラシック・ロックの世界観にこだわっているようだ。71buoeixol__sl1170_
 国内盤ではこのあと4曲のボーナス・トラックが付属していて、上にもあるようにEP「ブラック・スモーク・ライジング」の曲なのだが、これがまた伝説のバンドそっくりなのだ。ここではあえて省略するが、確かにこのEPだけ聞けば、誰もがあの伝説のバンドの再来だと思うだろう。"Flower Power"などはまさに"Your Time Is Gonna Come"と言われても仕方ないだろう。

 逆に言えば、本編CDの1曲目から10曲目までを聞けば、このバンドがこのEP以降どれほど成長したかが分かるだろう、わずか1年の間に。ちなみにこのアルバムは、ビルボードのアルバム・チャートでは、最高位3位を記録している。英国では12位だった。

 もちろんこのまま素直に売れていく保証はない。むしろこの路線を続けて行けばいくほど、バッシングも高まるかもしれない。だから、この次のアルバムが彼らの試金石になるだろう。伝統を継承しながらも、彼らなりのオリジナリティを出して行けば、まさに2020年代を代表するバンドになっていくだろう。そんな期待を込めながら、セカンド・アルバムを待つことにしようと思っている。


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