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2019年2月11日 (月)

カンサスのライヴ・アルバム

 “レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”のプログレッシヴ・ロック編の第2弾、そして最終回でもある。

 プログレッシヴ・ロックの分野でも、他の分野のロック・バンドと同じように、いわゆるA級からB級、C級とグレイドを分けて語られる場合がある。具体的にどのバンドがどの地位を占めるかは、その人の感性によって違うから固定化はできないが、それでもイエスやピンク・フロイド、ジェネシス、キング・クリムゾンなどは、誰がどう見てもA級プログレッシヴ・ロック・バンドと認定するだろう。

 問題はそれ以外のバンドで、例えばフォーカスなどはどうだろうか。自分としてはA級と認めてもいいと思うのだが、人によっては知名度がイマイチ劣るなどの理由でB級と思うかもしれない。またそれ以外にも、キャラヴァンやキャメル、ジェスロ・タル、ネオ・プログレッシヴ・ロック・シーンから生まれたマリリオンやペンドラゴン等々、数え上げたらきりがない。

 今回取り上げられるアメリカのプログレッシヴ・ロック・バンドのカンサスは、どうだろうか。一時期は、アメリカを代表するプログレッシヴ・ロック・バンドだったのだが、今ではほとんど話を聞かない。現在でも活動は続けているのだが、若い人にとってはほとんど無名に近いのではないだろうか。6016cf12b0938dd378a5f592aa5eb8c3pro
 彼らの全盛期も前回のスーパートランプと同じように、1970年代の後半から80年代の前半だった。自分としては、1980年の「オーディオ・ヴィジョン」までだと思っているのだが、チャート・アクションで判断すると、1986年のアルバム「パワー」までだろう。このアルバムは、全米アルバム・チャートの35位まで上がっていたからだ。

 カンサスについては以前のブログで述べたので、詳細は省略させてもらうが、このライヴ・アルバムが発表された1978年あたりが人気、実力ともに最盛期だったように思える。このライブも1977年から78年にかけて3回の全米ツアーから録音されていて、だからこのライブ・アルバムには彼らの一番脂の乗った時期の演奏が収められているといっても過言ではないだろう。

 彼らは1974年に「カンサス」でデビューしたのだが、これが鳴かず飛ばずでセールス的にはうまくいかなかった。1stアルバムから7分、9分といった長い曲や、ギターやキーボードだけでなくヴァイオリンも効果的に使用していて、アメリカ人のバンドながらもヨーロッパ風のプログレッシヴ・ロックのテイストも持ち合わせていたのだが、なかなか受け入れられなかったようだ。

 もともと彼らはホワイト・クローバーという名前で、フランク・ザッパに影響を受けてバンド活動を始めている。一時はドアーズの前座としてステージに上がったこともあったという。ただバンドは途中で解散したのだが、そのあとドラマーのフィル・イハートが渡英して、そこでイエスやキング・クリムゾンの音楽に啓発されて帰国し、彼らは新しいメンバーを入れて6人組として再出発した。だからアメリカのバンドでありながら、当初からそこはかとなくヨーロピアン・テイストを持ち合わせていたのである。

 彼らがブレイクしたのは、1975年に発表された2枚目のアルバム「ソング・フォー・アメリカ」のヒットからである。このアルバムは全米57位まであがり、彼らは一気に注目を集めるようになった。
 ただ日本では3枚目のアルバム「仮面劇」が最初のアルバムにあたり、4枚目の「永遠の序曲」のヒットによって1st、2ndと遡って紹介されている。

 当時は“アメリカン・プログレ・ハード”という名称で、カンサスやジャーニー、スティックスにボストンなどが幅を利かせていて、日米ともに人気が高かったが、そういう時流にうまく乗ることができたのも成功の一因だっただろう。

 特に、1976年の4枚目のスタジオ・アルバム「永遠の序曲」、翌年の5枚目「暗黒への曳航」でキャリア・ハイのセールスを記録した。前者はチャートで5位、後者は4位まで上昇し、両方とも400万枚以上売り上げている。

 その全盛期に発表されたのが、彼らの初めてのライヴ・アルバム「偉大なる聴衆へ」だった。1978年のお話だ。
 ただ、この1978年のLPレコードは2枚組全14曲で、約80分間にわたって彼らの全盛期のライヴを堪能することができた。ところが80年代後半に出たこのライヴ盤のCDでは終わりから2曲目の"Closet Chronicles"(6分55秒)が時間の関係でカットされていた。だから、CDになって損をした感じで、むしろLPレコードの方がお得感がしたものだ。そのレコードのトラック・リストを以下に記しておく。
サイド1
01.Song for America
02.Point of Know Return
03.Paradox
04.Icarus-Borne on Wings of Steel
サイド2
05.Portrait
06.Carry on Wayward Son
07.Journey from Mariabronn
サイド3
08.Dust in the Wind
09.Lonely Wind
10.Mysteries And Mayhem
11.Excerpt from Lamplight Symphony
12.The Wall
サイド4
13.Closet Chronicles
14.Magnum OpusKansastwofortheshow4ab
 LPレコードでは全14曲だったのが、それが最初にCD化されたときには13曲になっていたのだ。81dmwksokcl__sl1272_ それが2008年のアルバム発表30周年記念盤では、2枚組の全24曲、時間にして約148分にまで拡大されていたのである。 

 このライヴ・アルバムではそれまでの彼らのキャリアを総括するかのように、1stアルバムから5枚目のアルバム「暗黒への曳航」までの中からほぼ均等に選出され、演奏されている。
①「ファースト」…"Bringin' It Back","Lonely Wind","Belexes","Journey from Mariabronn"
②「ソング・フォー・アメリカ」…"Down the Road","Song for America","Lamplight Symphony","Lonely Street"
③「仮面劇」…"Icarus","Child of Innocence","Mysteries and Mayhem"
④「永遠の序曲」…"Carry on Wayward Son","Miracles out of Nowhere","Cheyenne Anthem","Magnum Opus","The Wall"
⑤「暗黒の曳航」…"Point of Know Return","Paradox","The Spider","Portrait","Closet Chronicles","Dust in the Wind","Sparks of the Tempest","Hopelessly Human"

 上記のように1枚目から5枚目までそれぞれ4曲、4曲、3曲、5曲、8曲収録されているが、さすがに77年当時のニュー・アルバムだった「暗黒の曳航」からは10曲中8曲も収められていた。81evg5kxmtl__sl1500_
 それで2008年版の「偉大なる聴衆へ」のトラック・リストは以下のようなものだった。見ればわかると思うが、ディスク1は、既発の1枚組CDと全く同じ曲と曲順である。
ディスク1
01.Song for America
02.Point of Know Return
03.Paradox
04.Icarus-Borne on Wings of Steel
05.Portrait
06.Carry on Wayward Son
07.Journey from Mariabronn
08.Dust in the Wind
09.Lonely Wind
10.Mysteries And Mayhem
11.Excerpt from Lamplight Symphony
12.The Wall
13.Magnum Opus

ディスク2
01.Hopelessly Human
02.Child of Innocence
03.Belexes
04.Cheyenne Anthem
05.Lonely Street
06.Miracles Out of Nowhere
07.The Spider

08.Closet Chronicles
09.Down the Road
10.Sparks of the Tempest
11.Bringin' It Back
(※赤文字の曲は未発表曲)

 ディスク2の8曲目"Closet Chronicles"はLPレコードに収録されていたが、それ以外の10曲はすべて未発表曲だった。ワインじゃないから別に30年も寝かせなくて、もう少し早く発表してもよかったと思うのだが、ファンにとってはまさに涙もののライヴ・アルバムだと思う。まさに、“レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”だと思うのだが、どうだろうか。

 しかも最後の曲の"Bringin' It Back"は、南部のシンガー・ソングライターのJ.J.ケイルの曲だった。カンサスは、自分たちのデビュー・アルバムで取り上げていたもので、7分を超えるロング・ヴァージョンに仕上げられている。

 ひとつだけ注文をつけるとするならば、できれば当時のコンサート順になるように曲の配列をしてほしいと思った。そうするとまさに当時のコンサート会場にいるような気分に浸れたに違いない。記録に残すということと記憶に残ることは違うことなので、もう少しその辺の配慮があれば、このアルバムはもっと多くの人に受け入れられたに違いないと思う。

 現在のカンサスは7人体制で音楽をやっていて、オリジナル・メンバーは、ギタリストのリチャード・ウィリアムスとドラマーのフィル・イハートの2人だけになってしまった。
 そしてこのライブ盤は、タイトル通りのライヴ・アルバムなのだが、偉大なのは聴衆だけでなく、当時の彼らもまたこのタイトルに値するバンドであり、これはその偉大な記録なのである。


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