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2019年2月 4日 (月)

スーパートランプのライヴ・アルバム

 昨年末に“レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”の特集を行ったが、そのまま続けようとは思わなかった。理由は、きりがないからである。
 しかし、ひとつだけ心残りだったのは、アメリカン・ロックとブリティッシュ・ロックだけだったということだ。できれば、プログレッシヴ・ロックのアルバムも入れようとずっと思っていた。

 プログレッシヴ・ロックといっても、イギリスやアメリカ、その他の地域のバンドなど様々だ。その中で探すのも大変だと思って、結局、わかりやすいB級プログレッシヴ・ロック・バンドのアルバムから選ぶようにした。B級といってもイエスやピンク・フロイドまでの知名度はないものの、それなりに名前の売れているバンドである。今回はイギリス代表ということで、70年代後半から80年代初めにかけて活躍したイギリスのバンド、スーパートランプについてである。A1eiwzevirl__sl1500_
 スーパートランプについては、以前にもこのブログで紹介したので重複は避けたいが、彼ら5人は1974年のアルバム「クライム・オブ・ザ・センチュリー」が全英4位、全米38位になったことから注目を集めるようになり、その後、「危機への招待」、「蒼い序曲」とヒット・アルバムを連発し、1979年のアルバム「ブレックファストイン・アメリカ」ではついに、全英3位、全米1位という快挙を達成した。

 もともとは比較的長い曲を得意とするプログレッシヴ・ロック・バンドだったのだが、売れるにつれて徐々にポップ・テイストを強くしていった。例えていうなら、イエスが徐々に10cc化していったといえばわかりやすいだろう。

 「ブレックファスト・イン・アメリカ」が売れた最大の理由は、初期からのプログレッシヴな要素と徐々に芽生えたポップなテイストが、微妙なバランスでうまく成立していたからである。

 その後も1982年には「フェイマス・ラスト・ワーズ」が全英6位、全米5位を記録したが、彼らの全盛期はここまでで、主要メンバーだったロジャー・ホジソンの脱退で、坂道を転げ落ちるように人気を失っていった。

 それで今回のアルバムは、この全盛期の時に発表されたライヴ・アルバム「ライヴ・イン・パリ」(原題:"Paris")である。51zqnj2wsfl
 このコンサートは、1979年の“ブレックファスト・イン・アメリカ”ワールド・ツアーでフランスのパリを訪れた時のもので、まさに脂の乗った全盛期の彼らのライヴを堪能することができる内容だった。1980年の9月に発表されたレコードでは、次のような曲順だった。
サイドA
1.School
2.Ain't Nobody But Me
3.The Logical Song
4.Bloody Well Right
サイドB
5.Breakfast in America
6.You Started Laughing
7.Hide in Your Shell
8.From Now On
サイドC
9.Dreamer
10.Rudy
11.A Soapbox Opera
12.Asylum
サイドD
13.Take The Long Way Home
14.Fool's Overture
15.Two of Us
16.Crime of The Century71ixmfz8lpl__sl1379_
 御覧のように全16曲、時間にして約94分だった。レコードの各面に4曲ずつ配置されていることから、時間的にほぼ同じになるように計画的に曲が並べられたことが分かる。
 しかも、「クライム・オブ・ザ・センチュリー」から「ブレックファスト・イン・アメリカ」までのアルバムからほぼ万遍なく収録されていることから、それまでの彼らの集大成的なライヴ・アルバムになっていた。
 商業的には、全英で7位、全米でも8位と成功している。この時期の彼らは何を出しても売れたのではないかと思わせるような人気を博していたのではないだろうか。

 ところが、2006年にこの時のライヴの模様を記録したビデオが見つかったことから、この時のライヴ・アルバムを編集し直す機会に恵まれたのである。
 時は既にCDの時代。それなら実際のライヴに近いアルバムを出そうということで、2011年に2枚組CD+DVDが発表された。その時のタイトルは「ライヴ・イン・パリ'79」(原題:"Live in Paris'79")に変更され、アルバム・ジャケットも差し替えられたのである。71ehdkfyvpl__sl1200_
CD1
01.School
02.Ain't Nobody But Me
03.The Logical Song
04.Goodbye Stranger
05.Breakfast in America
06.Bloody Well Right
07.Hide in Your Shell
08.From Now On
09.Child of Vision
10.Even in The Quietest Moments
11.You Started Laughing
CD2
01.A Soapbox Opera
02.Asylum
03.Downstream
04.Give A Little Bit

05.Dreamer
06.Rudy
07.Take The Long Way Home
08.Another Man's Woman
09.Fool's Overture
10.Two of Us
11.Crime of The Century

 全22曲、2時間を超える内容になっていて、これはもうマスト・バイ・アイテムだと思っている。それで上記の赤い文字の曲が追加された曲だが、こうやって全22曲を眺めてみても、70年代後半のアルバムからほぼ均等に収録されていた。61a3wwx0bpl
 ちなみに、DVDの方はというと、全18曲で、CDから除外された曲は次の4曲だった。"Ain't Nobody But Me"、"You Started Laughing"、"A Soapbox Opera"、"Downstream"である。リック・デイヴィスの歌う"Downstream"は見てみたかった。ピアノ一台で切々と歌っているからだ。

 DVDを見ると、リック・デイヴィスとロジャー・ホジソンだけではなくて、実はサックス奏者のジョン・ヘリウェルの役割も意外に大きいということが分かる。ステージ上ではMCも担当していて、サックスやクラリネットだけでなく、キーボードやボーカルも担当していた。

 また、リック・デイヴィスのピアノ演奏はリリカルで、かつテクニカルでもある。ピアノでリードする場面ではリックがほとんど担当していた。意外とロジャーは目立っていなくて、確かにハイトーンのボーカルは目立つものの、ギターとキーボードの演奏に関しては、そんなに特筆すべきものはないように見えた。もちろん、上手なのは当然なのだが、際立ってスリリングな演奏をするというわけではなかった。819qqn4we2l__sl1500_
 スーパートランプが解散した理由は、もちろんリックとロジャーの仲たがいが原因なのだが、リックはよりプログレッシヴで長い曲を要求し、一方のロジャーは、よりポップで短い曲を求めるようになったからだそうだが、バンド脱退後のロジャーのアルバムは、決してポップで短いものではなく、むしろ彼流のプログレッシヴ・ロックを追及しているようにも見えた。要するにロジャーは、単純に自分のやりたい音楽を追及したかったのだろう。

 その後のバンドは、解散と再結成を繰り返しながら今に至っている。現在ではリックとジョンとドラマーのボブ・シーベンバーグを中心に活動を続けているようだが、残念ながらかつての栄光は望むすべもない。リックの白血病のせいもあるが、新作アルバムも2002年以来発表されていないので、ほぼ解散状態だろう。

 元相棒のロジャー・ホジソンの方は、2000年以降ニュー・アルバムを発表していないものの、ツアーは続けていて、昨年も“ブレックファスト・イン・アメリカ40周年ツアー”を行っている。彼はまだ68歳だから、もう少し続けることができるのではないだろうか。

 いずれにしても、このライヴ・アルバム「ライヴ・イン・パリ'79」は、“レコードの時はショボかったけど、CD化されてお買い得になったアルバム”に相応しいと思っているし、イギリスのB級プログレッシヴ・ロック・バンドを代表するアルバムの1枚だとも言えるだろう。


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