ジョー・ボナマッサ
今年の印象に残ったマイ・ベスト・アルバム・シリーズ第6弾は、ブルーズ・ギタリストのジョー・ボナマッサのアルバムである。
ジョー・ボナマッサといってもあまり多くの人は知らないと思う。彼は日本では配給元がないというか、契約しているレコード会社が存在しなかったのである。だから今まで彼のアルバムの国内盤は発売されていない。
しかし今年の秋に「ベスト・オブ・ジョー・ボナマッサ」というアルバムがエイベックスより発売されて、やっと日本でも陽の目を見ることができた。これをきっかけに彼の人気は高まっていくものと思われる。
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The Best Of Joe Bonamassa アーティスト:ジョー・ボナマッサ |
彼は今まで7枚のスタジオ・アルバムと2枚のライヴ・アルバムを発表している実力派ブルーズ・ギタリストなのだが、今年でデビュー20周年を迎え、5月には20周年の総決算ということでロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでクラプトンと共演している。
デビュー20周年とはいえ、驚くなかれまだ32歳である。7歳にしてスティーヴィー・レイ・ヴォーンのフレーズを弾きこなし、10歳の時にはB.B.キングをして“稀な逸材”と言わしめたジョーは、12歳でそのB.B.キングの前座を務めデビューしたのだった。
ただアメリカでは天才ギタリストと騒がれ15,6歳ぐらいでデビューしても、やがて音楽的に行き詰まりを感じてしまい、人気も大きく下降線を下って尻すぼみになってゆくということは、よくあるパターンである。
1985年に17歳でデビューしたチャーリー・セクストンや1997年に16歳でデビューしたジョニー・ラングなどはその良い例である。確かに彼らは今でもコンスタントに活動中ではあるが、以前のようなネーム・ヴァリューはもう見られない。やはりこの業界で人気を保つのは並大抵の努力だけでは難しいのだろう。(チャーリーの2007年の「明日への轍」は渋い名盤である!)
ところでジョーの音楽性なのだが、これがまたブルーズという枠に収め切れないほどの才能を秘めていると思われる。
自分が聞いたのはベスト盤だから、良い曲が厳選されて収められているはずで、どの曲もいい曲だとはわかるのだが、ブルーズ臭はほとんどなく、むしろ良質のブリティッシュ・ロックの優秀なギタリストのアルバムを聞いている錯覚に陥ってしまった。
誤解を恐れずにいうと、“ブリティッシュ・ロックを演奏するスティーヴィー・レイ・ヴォーン”という感じなのである。9曲目の"Sloe Gin"なんかは、もろブリティッシュ・ロックの湿った質音と泣きのギターが堪能できる名曲なのである。これはもう完全に21世紀のブルーズ・ロック・ギター・アルバムなのだ。
また3曲目の"Woke up Dreaming"ではアコースティック・ギター1本で表現していて、これがまた緩急見事な演奏だし、7曲目の"The Ballad of John Henry"はストリングスも入っていて、まるでゼッペリンの"Kashmir"なのである。こういう表現の幅広さもまた彼の魅力なのだろう。
本人は子どもの頃からレッド・ゼッペリンやクリーム、ロリー・ギャラガー、フリー、ゲイリー・ムーアなどを聞いていたらしい。だからニューヨーク州生まれのアメリカン人なのだが、その音楽性はブリティッシュ・ブルーズ・ロックに影響されているのであろう。このアルバムでもロリー・ギャラガーの"Cradle Rock"を演奏している。
ちなみに2000年には「ニュー・デイ・イエスタディ」というソロ・アルバムを発表したが、このアルバム・タイトル曲はあの超有名なイギリスのバンド、ジェスロ・タルの曲から取ったもので、この辺の感覚が今までのブルーズ・ギタリストとは違うようだ。
だから良質なブリティッシュ・ロックと豪快なアメリカン・ロックがうまい具合に折衷されていて、新鮮に聞こえるのである。自分のような年寄りにも新鮮に聞こえるのだから、若いリスナーにとってはもっとエキサイティングでフレッシュに聞こえるのだろう。
とにかくスティーヴィー・レイ・ヴォーン以来の逸材であることは間違いない。9月には来日公演も行ったようだし、日本でもますます人気が出てくるであろう。今後の彼の活躍が大いに期待できるし、次のオリジナル・アルバムが待ち遠しいが、日本では果たして発売されるのだろうか。それだけが心配である。
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