ヴァン・ヘイレン
8月もいよいよ終わりに近づいてきた。今年の夏は天候不順で、日照時間が少なかったようだが、暑さだけは相変わらずである。残暑厳しき折とはまさに今のような時期にふさわしい言葉である。
それで夏といえば“ハード・ロック”である。それでこの頃は“アメリカン・ハード・ロック”について書いてきた。本当は前回で最後にするつもりだったのだが、“おまけ”としてやはりこのバンドは避けて通れないということで、1978年にデビューしたヴァン・ヘイレンについて述べてみたい。
当時のアメリカは、日本でもそうだが、パンク/ニュー・ウェイヴかディスコ・ミュージックが流行っていて、ハード・ロックなどはさっぱりだった。せいぜいリッチー・ブラックモアが結成したレインボーくらいだろうか日本で流行っていたのは。しかしアメリカ市場ではリッチーの手腕をしても売れなかった。彼らがアメリカで注目され始めるのは1979年「ダウン・トゥ・アース」発表後からであった。
そういうハード・ロック不毛の地で、めざましい評価と圧倒的な注目を集めたバンドがあった。それが4人組のバンド、ヴァン・ヘイレンだったのである。
彼らはヴァン・ヘイレン兄弟を中心にカリフォルニアで結成されたバンドだった。もともとは兄のアレックス・ヴァン・ヘイレンがギターを、弟のエドワードがドラムスを練習していたのであるが、弟がドラムの借金を返すためにアルバイトをしている間に、兄のアレックスがドラムを叩き始めて、その結果兄がドラムス、弟がギターを担当するようになったといわれている。
それはともかく、アメリカ中の若者がディスコ・ミュージックに飽きて、新しい音楽に飢えているときに彗星のように登場してきたのである。そういうタイミングもよかったのかもしれない。もしくは歴史に残るミュージシャンやバンドは、そういう星のもとに生まれてくるのであろうか。
とにかく1stアルバム「炎の導火線」は衝撃的だった。それまでの既存のハード・ロック・バンドとは違って、曲が短くシンプルで、その分逆にインパクトがあった。そして何よりギタリストのエドワード・ヴァン・ヘイレンの演奏するギターの音に痺れ、衝撃を受けたのである。
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Van Halen アーティスト:Van Halen |
今ではライトハンド奏法といえば、その辺のアマチュア・ミュージシャンでも知っている演奏法だが、当時は斬新で革命的な出来事だった。プロのミュージシャンでも1stアルバムの"暗闇の爆撃"には驚かされ、どうやって演奏しているのかわからなかったといわれている。
のちにこの演奏については、ジェネシスのスティーヴ・ハケットの方が早く始めたというのがわかったのだが、その当時はそういう呼び方は無かったし、世の中に認知させた功績ではエドワード・ヴァン・ヘイレンの方に軍配が上がるであろう。問題は誰が始めたかではなく、誰が広めたかではないだろうか。
またボーカル担当のデヴィッド・リー・ロスの“エビ反る姿”(いまでは死語!)やジャンプしてほぼ180度開脚する姿をジャケットや写真で見るにつけ、なんとまあ若々しいのだろうと思ったりもした。
彼らは最初はブルーズを基本とするバンドだと思っていた。デビュー・シングルがキンクスの"You Really Got Me"だったし、同じ1stにはもうひとつのブルーズのカヴァー曲"Ice cream Man"もあったからだ。
しかしMTVの興隆とともに、徐々に彼らは方向転換を行い、よりポップに、より売れることをめざしていった。その象徴となるアルバムが1984年に発表されたアルバム「1984」だった。
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1984 アーティスト:ヴァン・ヘイレン |
しかし、このアルバムを最後にオリジナル・メンバーでグループの顔でもあったボーカリストのデヴィッド・リー・ロスは自己のキャリアを追及するために脱退した。後任には元モントローズのボーカルを担当していたサミー・ヘイガーが加入することになったのである。
彼の加入によって、バンドはさらに上昇し、高度安定期に入った。自分は個人的にはマッチョでおバカなふりをするデヴィッド・リー・ロスより、経験と分別のあるサミー・ヘイガー加入後のヴァン・ヘイレンが好きだった。
事実、初めての全米No.1アルバムは、サミーが加入して初めて発表されたアルバム「5150」だったし、シングルでも"Why Can't This Be Love"、"Dreams"、"Can't Stop Lovin' You"、"Poundcake"などなど数々の大ヒット曲があったからである。
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5150 アーティスト:ヴァン・ヘイレン |
サミー・ヘイガーは1996年に脱退し、エドワードも喉頭癌にかかり、バンドは解散状態に陥った。以後、ボーカリストが代わったり、デヴィッドやサミーが出たり入ったりして、定まらない状態にあるようだ。
またオリジナル・メンバーのベーシスト、マイケル・アンソニーがくびになり、代わりにエドワードの息子のヴォルフガングがベーシストとして加入したりと何かと慌しいようである。
ちなみに息子のヴォルフガングは今年で18歳ということらしい。メンバーが固定してもこの状況では、ニュー・アルバムの発表などは難しいようである。やはり20年以上も一緒にやれば人様にはわからない事情も抱えているのであろう。
とにかく四半世紀にわたって、カリフォルニアのハード・ロック・バンドからアメリカを代表する、いや世界のハード・ロック界を代表するバンドに上り詰めたヴァン・ヘイレンである。ロックの歴史の1ページを築いた偉大なるバンドといっても間違いないと思うのである。
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