ビー・バップ・デラックス
B級グラム・ロック・バンド・シリーズの第6弾は、ブームの終わりにデビューしてきたバンド、ビー・バップ・デラックスの登場である。
以前にも述べたように、イギリスのグラム・ロックは1971年から1974年までの短い期間であったが、この短期間に数多くのバンドが登場し、消えていった。
こういう短期間での新陳代謝の激しさが、イギリスの音楽シーンを活性化し、日本とほぼおなじ国土面積なのに世界をリードしていくバンドが登場する理由だと思っている。
そこでビル・ネルソン率いるビー・バップ・デラックスの登場である。
このビル・ネルソンという人は、幼少の頃からギターに慣れ親しみ、デュアン・エディやハンク・マーヴィンからジミ・ヘンドリックス、ジェフ・ベックまでひたすらコピーし、マスターしていったという。だからギターに関しては、かなりのテクニシャンなのであった。後年、YMOの高橋幸宏の日本国内ツアーにギタリストとして参加しているほどだ。
彼らは「美しき生贄」でデビューしたのだが、グラム・ロック的な雰囲気を含んでいたのは、このアルバムだけで、セカンドからは、というかアルバムごとに様相を変化させる点がまさにデヴィッド・ボウイ的であった。
| 美しき生贄 販売元:セブンアンドワイ セブンアンドワイで詳細を確認する |
1stアルバムに収められている"Jet Silver & the Dolls of Venus"や"Adventures in a Yorkshire Landscape"などを聞くと、ビル・ネルソンのマイルドなトーンのギターワークが目立つ。言葉で説明するのは難しいのだが、グラム・ロックといっても、金属音的でもブギー的でもなく、田舎ののどかな風景とともに描き出されるビル・ネルソンの世界という感じである。
2ndアルバム「フュチュラマ」になると、プロデューサーがあのクイーンを有名にしたロイ・トーマス・ベイカーになったせいか、少々ハードな音作りになった。もちろんそのハードネスを牽引するのはビル・ネルソンのギターなのである。
| フュチラマ 販売元:セブンアンドワイ セブンアンドワイで詳細を確認する |
3作目以降はどんどんポップ化して行き、1976年9月に発表された4作目「モダン・ミュージック」は彼らの最高傑作と評価された。
| EMIミュージック・ジャパン ビー・バップ・デラックス/モダン・ミュージック(紙ジャケット仕様) |
このアルバムは、そのタイトル通りに21世紀のいま聞いても全く古臭さを感じさせない。楽曲自体がポップで、それまでのビルのギターを控えめにして、全体のバランスが重視されて制作されている。
とにかく曲数が多く(ということは1曲あたりの時間数が短い)、トータル・アルバム的な内容になっている。もともとビル・ネルソンにはSF趣味があり、コンサートの途中でバックに20年代等の古いSF映画の映像を流したり、歌詞の中にも登場させたりしている。
レコードではBサイドにあたる部分に"モダン・ミュージック組曲"みたいなものを挿入し、英国の有名なDJであるジョン・ピールのSEなどを利用して構成に一工夫を見せている。また"月影の舞踏会"や"ハネムーンは火星で"、"ヒューマノイド・サム"などタイトルを見てもわかるように、極めてSF的でイマジネーションを喚起させるものになっている。
曲的にもポップで印象的なメロディに満ちている。表題曲の"Modern Music"はもとより、"Kiss of Light"(妖しき月の女神)や"Forbidden Lovers"(恋人たちの密会)などシングル・ヒットしそうな曲が多いのも特長である。
しかしこのアルバムが発表された1976年にはすでにグラム・ロックは終焉しており、時代はパンク/ニュー・ウェイヴ・ブームを迎えつつあった。
ところが逆にこのアルバムの成功のおかげで、ビー・バップ・デラックスはのちに登場するマガジンやXTC、シンプル・マインズなどのニュー・ウェイブ・バンドに多大なる影響を与えることになったのである。
だから今では彼らは、グラム・ロックとニュー・ウェイヴ・ムーヴメントをつなぐ架け橋という評価が与えられている。実際、ビル・ネルソンは日本のイエロー・マジック・オーケストラ、サンディ&ザ・サンセッツ、土屋昌巳、高橋幸宏などと活動をともにしたこともあった。
ちなみにビル・ネルソンの奥さんは日本人という話があるが、定かではない。
ビルは1978年にビー・バップ・デラックスを解散させて、自らのバンドのレッド・ノイズを結成した。音的にはシンセサイザーを使用したピコピコのテクノ・ポップなものである。その後もビルはソロで活動を続けているようである。
グラム・ロックは音的には基本的にノリのよいロック・サウンドなのだが、それに装飾的なファッションが乗っかかっていたから、目新しく見えたと思うのである。
しかしブームとはあっけないもので、飽きられてしまうと、音的には目新しいものもなかったグラム・ロックは終わりを迎えてしまった。
ただし、このビー・バップ・デラックスは、次の世代にしっかりと遺伝子を残してくれたのである。これもビル・ネルソンのおかげである。まさに“奇才”ビル・ネルソンという異名がピッタリのミュージシャンであった。
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