デヴィッド・エセックス
さていよいよB級グラム・ロック・シリーズも今回が最終回になってしまった。ブリティッシュ・ロックの中でグラム・ロックの占める位置はどういうものなのかはわからないが、確実に影響力はあったと思っている。
だから1980年代に入ってもボーイ・ジョージやデュラン・デュランなど、ファッション的にはその流れを汲むバンドやミュージシャンが出てきたのではないだろうか。
それで最後はグラム・ロックの中には入らないと思うけれど、子どもの頃に個人的に印象に残っている人に登場してもらうことにした。その人の名はデヴィッド・エセックスという。
この人がヒット曲を出して日本でも紹介されたのが、ちょうどグラム・ロックの終わりの時期だった。それで自分は、この人も時流に乗り遅れないように一発ヒットを出したのだろうくらいしか思っていなかった。
何しろ見た目がカッコいい。日本でも若い女性がキャーキャー言っていた覚えがあるし、ミュージック・ライフなどでも特集が組まれていたように記憶している。
だからきっとグラマラスな衣装とメーキャップで歌っていたのだろうと思い込んでいた。
自分が最初に聞いたシングルは「魔法のランプ」だったと思う。1973年に発表されたアルバム「ロック・オン」に収められている曲で、聞いただけで、妖艶、グラマラスな雰囲気が漂っているのがわかるし、歌い方などはデヴィッド・ボウイやT・レックスのマーク・ボランに似ていた。だからこれは間違いなくグラム・ロックの傍流だと思ったのである。
このアルバムは後年になって輸入盤で手に入れたのだが、この「魔法のランプ」だけでなく、アルバム全体が70年代前半のロンドンの雰囲気に包まれていて、聞くたびに自分を幼い頃に連れて行ってくれるのである。
それにけっこうよく練られているアルバムである。単なる若者向けのアイドル・アルバムというわけではなく、全11曲中、自作曲が7曲もあるのだ。シングル・ヒットした"魔法のランプ"(Lamplight)だけでなく、アルバム・タイトルにもなった"Rock on"もそうである。
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Rock On アーティスト:David Essex |
この独特のメロディとリズムの“タメ”は、良い悪いを超えて記憶に残るものになっている。とても新人の作った曲とは思えないほど、イマジネーションとオリジナリティに溢れていると思う。
バラード系の"On and On"はバックのストリングスやサックスが効果的で、まるで映画のエンドロールに使われそうな曲である。もしくはラスベガスでのステージでも歌われそうな甘い歌になっている。こうやってみると彼は才能豊かなミュージシャンだったことがわかる。
それに"Ocean Girl"などは、スティール・ドラムが使われて、本当は陽気なカリプソ・ミュージックになるところなのだが、デヴィッドの粘っこい歌い方は、まるでロンドン特有の夜霧の中でダンスしているカリブの女の子のように聞こえてくるのである。
それほど才能豊かなデヴィッドであるが、オリジナルでない曲もある。1959年にビルボードの9位になった"Turn me Loose"は、もとはファビアンというアメリカのアイドルが歌った曲なのだが、デヴィッドが歌うと、粘着性のあるプレスリーが歌っているように聞こえてくる。
またトラヴィス&ボブというアメリカ人のポップ・デュオが、これも1959年にヒットさせた"Tell Him No"という曲もカバーしている。原曲を聞いたことがないので、オリジナルとの違いが分からないのだが、ここではスローなバラードとして歌われていて、なかなか味わい深いものになっている。
さらにはS&Gの"For Emily, Whenever I may find her"も歌っていて、意外とこの人はアメリカ志向が強かったのかもしれない。
デヴィッドは1947年7月に生まれているから、1stアルバムでのカバー曲は、彼の少年時代の曲に当たる。子どもの頃に聞いて口ずさんだ曲を、プロ歌手になって歌いたかったのであろう。
彼は1963年にデッカ・レコードからデビューし、2年ほど自分のバンドと一緒にツアーをしていたようである。
そして1stアルバムを発表した翌年、翌々年、"Gonna Make You a Star"と"Hold Me Close"の2曲で全英No.1を獲得し、遅咲きながらも全英のトップ・アイドルになった。
その後、以前からちょくちょく映画に出ていたデヴィッドは、本格的に映画俳優としても活動を始めた。二束のわらじを履いた彼は、音楽と映画、次は舞台ということでミュージカルでも成功を収めている。
現在でも彼は、しばしばアルバムを出してはツアーを行い、ミュージカルの舞台にも立っている。やはり彼は才能溢れるミュージシャンであり、エンターテイナーだったのである。何度も言うようだが、彼はグラム・ロックの範疇には入らないが、自分の中ではグラマラスに輝いていたミュージシャンだった。
以上でB級グラム・ロックの特集は終わるのだが、今まで紹介してきたバンドやミュージシャン以外にもゲイリー・グリッターやスージー・クアトロなど数多くいる。もしまた機会があれば紹介したいと思う。たぶんそういう機会はないと思うけれど…
とにかく1970年代の始めのイギリスで生まれたグラム・ロックであるが、その実績と影響は、21世紀の今でも人々の記憶の中にしっかりと息づいているのである。
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